内容説明
皇極四年(六四五)、中大兄皇子と中臣鎌足は蘇我蝦夷・入鹿父子を武力で排除した。この乙巳の変が国政改革「大化改新」の序幕だったという筋書きはあまりにも有名である。だが、これに関して残された史料は中大兄・鎌足中心に事件を描く極めて偏ったものだった。クーデターの真の目的は何か。その首謀者は誰だったのか。本書は、王位継承をめぐる路線対立に着目して旧版を大幅改稿し、熾烈な権力闘争の内実に迫るものである。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Koichiro Minematsu
55
乙巳の変が皇極天皇によるクーデターとは。それによって孝徳天皇へ、日本で初めての生前攘夷が画策され、王権の集中によって結果的に大化の改新と言われる改新が進むことになったと。至極理解できる研究本と思う。2023/08/08
Shoji
33
大化の改新の意義である「豪族による支配が終わり、律令国家としての歩みが始まった」について、深く解説された本かなと思っていました。少々違っていました。なかなか斬新な切り口です。蘇我氏の横暴を廃するために「中大兄皇子と中臣鎌足は談合した」と思っていましたが、この本では、中大兄と鎌足は乙巳の変の当日まで知らぬ同士だったとか。あと、気になったのは「史実に基づいて」を多用しながら「思われる」も多用していました。それでも、まあ最後まで読ませる筆力はさすがです。小説ではありませんが面白かったですよ。2022/06/05
Tomoichi
29
今更「大化改新」って、と期待せずに読み始めるが、これがミステリーを読むような面白さ。他の研究者の文章と比較するとまだ定説にはなっていないようだが、「古事記」や「日本書紀」などの記述をそのまま史実とする意見もどうかなと思うので、その記紀の裏に隠された史実にこれからも研究者のみなさん、迫ってください!2024/01/28
みこ
29
蘇我入鹿暗殺事件の真相に一石を投じる。如何せん資料の乏しい時代でその資料も当事者の一人である中臣鎌足と中大兄皇子を祖に持つ後の権力者によって書かれたものだから推測に推測を重ねたものになるのは致し方ないか。それでも主犯と思われ人物がそれほど重要な立場でなく、お飾りと思われた地味な印象の意外な人物が黒幕だった可能性を示唆するなどある種のミステリーとしては十分堪能できる。2022/07/01
ぽんすけ
24
十年くらい前「大化の改新」が「乙巳の変」になったと聞いた時、何それ!「聖徳太子」が「 厩戸王」で何で!となったことを思い出す本作。私が学生の頃は大化の改新=中大兄皇子と中臣鎌足が入鹿を宮殿で殺して政権を手中に収めた政変という風に習ったが、今回この本を読んでみて思いもしなかった人物がクローズアップされていて驚いた。その人物とは影がうす~い印象だった軽皇子こと孝徳天皇。そもそもあの軍事クーデター自体が軽皇子を中心とした事件であり、中大兄皇子は実行犯リーダーだったというもので、確かに読んでいくとなるほどな。2025/07/14
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