内容説明
妾として囲われていたタミエは、ある日主人に日本刀で切り付けられ左目と美しい容貌を失った。
代償に彼女が手にしたのは、この世ならざる魑魅魍魎と死霊の影を捉える霊能力であった。
「霊感女性現る」と評判を呼び、霊媒師として生計を立て始めるタミエ。
やがて彼女の許へは、おぞましい事情を抱えた奇妙な依頼者たちが集まってくるようになり――。
明治の岡山を舞台に、隻眼の女霊媒師の怪異との邂逅を描いた幻妖怪奇小説。
解説・池澤春菜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Shoji
39
妾として寄り添っていた男に切り付けられ、片目と美貌を失った女の話。女は失った片目を通して、見える筈のない物や姿が見えるという内容です。最後まで読み通しはしましたが、なんだか今一つお話に乗れなかったです。面白いお話だとは思うんですけどね。2022/08/19
chiro
7
岩下志麻子さん初読み 面白かった。文章も艶っぽくて心地よく読める。話の中心は妖だが、そこに描かれている人間模様が味わい深い。人の業も淡々と描かれ、全てを受け入れているような穏やかさを感じた。他の作品も読みたくなった。2022/12/06
銀華
6
妾として囲われていた女は旦那から日本刀で左眼と美貌を失う、代わりに得てしまった霊視で霊媒師になるが訪れる依頼客は亡霊ではない影を伴っていてーーハイカラや電車、西洋が取り入れられた始めた時代の移ろいと共に、変わらぬ人間の薄気味悪さと男女の情念が横行する。視えるようになったが故に浮き彫りする陰湿さ。岡山の方言が更にそれを生々しくする。相談されたからといって解決しない話が多く、生きる為に仕事をしている気怠さが出ていて人間味がある。亡霊の方が艶やかで、生者が陰鬱さを醸し出している印象が強い。勧商場の怪異譚が好み。2022/07/08
りゅりゅ
5
きょうてえ、きょうてえ、に独特のリズムがあって忘れられない。この話もそう。エンタメ性の強い恐怖があるわけではないんだけれども、言葉と共に心に居座る。2023/11/27
灰猫
5
日本刀で左目を失い、代わりに霊視という話。ドロドロした感じが岩井志麻子さんぽくていい。当時の時代背景の雰囲気がよく出ていると思った。ハレー彗星の話が印象的かな。2022/07/29