内容説明
筑豊の炭鉱町出身の私(ひの子)は東京に住み、もうすぐ40歳になる。非正規で新聞社の校閲の仕事をしているが、3年限定の仕事なので、いずれ新たな職を探さねばならない。両親は他界していて、年下の恋人だった春生とは1年以上前に別れていた。新型コロナウイルスが広がるなか、前に弟との結婚騒動で出会った女性・沙穂から連絡があり、東京で食事をすることになる。彼女は看護師で、独りで子育てをしていた。ひの子は沙穂の影響で、逡巡しながらも春生にメールを送ってしまう。すると思いがけず返信があり、再び付き合うことになって……。出会いと別れ、他者とのつながり。現代女性が対峙する実相を、かつて炭鉱で労働を担った女性たちに心を寄せつつ描く、鮮烈な中編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
170
苦手な感じかな?と思いながら・・あらあらどうして最後まで読まされた。流産の辺りはリアルでこの感覚が良かった。40前後の非正規雇用の女性が皆さんこうだとは思わないが、ストレートに伝わる言葉の数々に意思を感じて、人としてどうなの?と思う男たちとの対比が鮮明で面白い。生々しい熱と色を感じた初読み作家さんだったが、コークスに例えるひの子のそれからを読んでみたい気もする。2023/02/06
モルク
111
かつて炭鉱で栄えた北九州の町出身なひの子39才、若い恋人春生とは別れたがその影を引きずっている。小説で1度賞をもらってはいるがそれで生活が成り立たず非正規として働いている。春生との再会、そしてすぐに妊娠。まわりに頼れる人もおらず春生は身勝手で優柔不断。子供を一人で育てると決意してもなぜこんな男にいつまでもしがみつくのかな。流産をしたことでこことばかりに春生は離れていく。やっぱりそういう男だよ。それに比べ女たちの連携はとても素敵!強い女であれ!2023/08/09
アキ
110
40歳のひの子は独身、東京で暮らす非正規雇用者で小説を書いている。そこへ弟の医師立央と以前子供の認知でいざこざを起こした沙穂とバー・コークスで食事をした。元彼と久々に会い妊娠した。子供を産むべきか、彼は結婚を決断するのか、出産はどこでするのか、仕事はどうするのか、途中から次々に起こる問題にどうにか対処するも、その時が来てしまう。エチオピアのシングルマザーが「日本はすごく安全、でもライフがない」という言葉がその状況を言い当てている。題の意味は赤ん坊と炭坑のおんなたちをかけたもの。「うつくしい繭」以来2作目。2023/01/03
えんちゃん
77
おおお。予想のはるか上をいく面白さ。未婚・非正規・コロナ禍・妊娠。絶妙な齢の女性・ひの子が生きる社会と現実について。冒頭いきなりシンママ紗穂にクギ付け。次々と変化する展開に目が離せない。一度も本を閉じずに一気読みしてしまった。作中の女性たちの強さ逞しさはまるでコークス。気持ち悪りぃコドモ男との対比が見事だった。櫻木さんのこの先も楽しみ。いつか大きな賞をとって欲しい。2022/12/21
ネギっ子gen
73
【生きていたら、なにがあるかわからない】『カサンドラのティータイム』が良かったのと、題名に惹かれて――。非正規で働くひの子は、年下の元カレと再び付き合い始めるが……。現代女性の揺らぐ心情を、かつて炭鉱で労働を担った女性たちに心を寄せつつ描かれた、佳品。<夜中にふと目が覚めると、これからのことを考えて眠れなくなった。39歳、婚活、39歳、出産。39歳、非正規。40歳、孤独。気がついたら窓の外が白むまで、スマホを握って検索し続けている。ブルーライトを凝視する眼球の奥が痛んで、自分はいま、鬼の形相だと思う>。⇒2023/04/12
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