内容説明
昭和7年1月、芝公園内で窮死した私小説作家・藤澤清造。その35年後に生まれた西村賢太はみずから「没後の弟子」を名乗り、作品の文学的価値を説き、顕彰に努めた。師の人生をなぞるかのように急逝する直前まで、手ずから諸雑誌を収集し、なめるように編集配列に意を用いつづけた随筆の数々。本書は時空を超えた「魂の感応」の産物というにふさわしい。
目次
莫迦の世迷い言
根津権現前より
城山のほとり
大待宵草の花
貧故の冤罪
頭の中の時計
感想断片
重忠役者と岩永役者
俳優種々相
動物影絵
不愉快な思いで
ぐうたら漫談
自分自身に与うる詞
平賀元義を憶う
錦絵物語
病院から帰って
わが家の冨士
法界坊礼賛
気に入らない
雪へする落書
謎のおんな
「玉の井」と「亀戸」
啜泣く風景
「金」と「恋」と
無産者の結婚の悲哀
新婚か悔恨か
塩の正月
独身者は寂し
演劇無駄談義
歌舞伎保存に就いて
火と風とに捧ぐ
築地小劇場のこと
猿之助を憫む
画竜点睛を欠く
是れ何んの故ぞ
近代劇と金
犬の遠吠え
文明的復讐
喧嘩の前触
外は是蝉の声
斎藤緑雨の一面
雑記帳抜萃
渠に云いたいこと
苦吟力行の人
いまの創作家のこと
神経質過ぎる者は誰ぞや
小蟹の愚痴
「元日や」の原句
フロックコートと龍之介
昼寝から覚めて
作家の態度
友に贈る
冷笑の前へ
「一夜」について
「恥」と「嘘」
嘘のつきッぱなし
屠蘇危言
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
フリウリ
5
浅見淵が言及していた「根津権現前より」が読みたくて。「随筆集」とあるが、後半の劇評以外の、身辺雑記のようなものは、小説(私小説)と区別できなさそう。劇評については、資料的な価値があるのかどうかもわからない。著者は梅毒から精神に異常をきたして失踪後、芝公園内のアズマ屋で凍死、したそうである。享年44歳。62023/04/05
Shinya Fukuda
2
これは小説ではない。没後弟子を自称する西村賢太が藤澤清造が遺した随筆、演劇評論、手紙等を編集したものだ。幼年期の記憶、演劇論、役者評、同時代を生きた小説家への思い出が収録されている。貧乏だった。悪所に頻繁に出入りした。その為に病気になった。それが原因で精神に異常をきたし凍死した。その人生を辿るだけで小説になりそうだ。私小説作家の西村が没入したのはよくわかる。解説の六角精児は面白かった。歌舞伎への言及が多いが六角はその方面への知識がないのでと言及を避けている。潔い。また、苦役列車は六角が適任だろうと思う。2023/06/07
ライム
1
面白かった。読む限り興味を引いてやまない人物で、確かに埋もれさせておくのは惜しい。「世間をして、あっと言わしめる作品」を描こうとして、作ったのは借金ばかりとか、下宿料を半年余もとどこらせて、原稿を方々の雑誌社に持ち込むも一向に買い手が無く、知人に泣きついて、やっと一篇の小説を買って貰ったとか、自虐的におどけてる感じではなく、淡々とした状況報告風の書き方。それが逆に独特の可笑しさを感じた。暗い話の多い中、著者の幼少時に見世物小屋の像の背中に乗った話、そこだけ明るく輝く。2023/09/17
chuji
1
久喜市立中央図書館の本。2022年6月初版。西村賢太が歿後弟子と自称した師匠の随筆集。後書きが六角精児「この人、かなり味わい深い人だったんじゃないか」でした。2022/08/26
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