内容説明
生まれながらに執権の地位を約束された若き執権北条時宗と、彼を支え無謀にも思える大胆な幕府改革を試みた硬骨の政治家安達泰盛。二人が中核を担う13世紀の日本に、ユーラシア大陸を席巻したモンゴルの嵐が迫る――。
「救国の英雄」では決してなかった時宗の素顔とは? 泰盛の弘安徳政は、幕府が構造的に抱えていた限界にどのように挑んだのか。二人を主人公に、絵巻や彫刻、宗教など多様な視点を取り入れ、血なまぐさい権力闘争相次ぐ政治史を、著者ならではの手腕で立体的に編み上げた労作!(原本:日本放送出版協会、2001年)
はしがき――時代、世界、個人
プロローグ――若君誕生
第一章 時宗誕生前後の幕府政治
第二章 北条得宗と御家人安達氏
第三章 蒙古襲来のなかで
第四章 絵にみる時宗時代
第五章 時宗と日中禅宗世界
第六章 時宗死後の政治改革
エピローグ――記憶のなかで
あとがき
付録1 書評と紹介 川添昭二著『北条時宗』
付録2 研究余滴 大河ドラマあやかり本の大罪
学術文庫版あとがき
主要人物の生没年
安達泰盛の経歴
北条時宗の履歴書
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
116
元寇時に鎌倉幕府の執権だった北条時宗は救国の英雄とされるが、実際に幕府を率いたのは義兄である安達泰盛との説を提示する。時宗は得宗家の当主ではあったが未熟な若者でしかなく、20歳も年長でベテラン政治家の泰盛が実務を担当してもおかしくない。異国警護のため御家人を動員したり、兵糧や兵士を徴発する面倒な仕事を時宗の名の下に泰盛が仕切るのは当然だった。しかし時宗死後、幕府内部の権力抗争で泰盛は敗死する。北条氏は執権であって絶対的権威を持つ将軍でなかった幕府の弱点が、元寇を契機に露呈していく状況を見事に論証している。2022/09/11
MUNEKAZ
20
北条時宗と安達泰盛を軸に、元寇前後の鎌倉政治史を描く。読みどころは、やはり泰盛の行った「弘安徳政」に関する論考。同時期に行われた亀山院の公家徳政への影響にも触れており、短いながらもその改革の意義がよくわかる。本筋とは関係ないが、本書では文庫化に合わせた増補として「大河ドラマ『北条時宗』はファンタジー」「大河ドラマあやかり本はでたらめばかり」というパンチの聞いた小文が。ちなみに原著はNHK出版から2001年刊。さすが大物研究者は忖度などしないのである。2022/07/21
nagoyan
19
優。2001年刊のNHKブックス「北条時宗と蒙古襲来」の学術文庫化。国難に立ち向かった英雄という時宗像に異議を唱える。時宗は人物像を伝えるエピソードが少なく、実像に迫りにくい。僅かな史料から立場上「国難」に立ち向かう羽目になった青年が命をすり減らしながらも真面目に向き合おうとする姿を描き出す。その「岳父」(実は妻の兄)にあたる安達泰盛は豊富なエピソードから、教養、政治的経験、公正な人柄が描き出される。幕府統治機構における「将軍」というパズルの一辺がもたらさざる得ない不安定さが二人につきまとう。2022/07/27
nishiyan
12
2001年刊『北条時宗と蒙古襲来』(NHKブックス)に付録2編、学術文庫版あとがきが収録。北条時宗自身よりも得宗家と御家人安達氏に重点が置かれている。得宗家の姻戚以上に家格を高めてきたのは歴代当主の力もあるのだが、安達泰盛の果たした役割の大きさに驚かされた。執権に就任した時宗が蒙古襲来を前にして北条家の重鎮たちを病で失い、厳しいかじ取りを迫られた中で、泰盛は主体的に動き支える。時宗の死後は画期的な政策を打ち出すも、得宗被官平頼綱との対立から霜月騒動で滅亡の憂き目に。彼の死は幕府崩壊を早めたのかもしれない。2023/04/02
白隠禅師ファン
11
泰盛は書にすぐれ文化人としても知られていたという点や、弘安徳政は亀山上皇主導によって行われたという点は興味深かったです。 あとがきで時宗は与えられてしまった使命を果たすために命をすりへらした人と書かれていて🥹の顔になった。2024/05/11
-
- 電子書籍
- 予知視【特装版】 4 ズズズキュン!
-
- 電子書籍
- 灰色の御花 まんがフリーク
-
- 電子書籍
- ラストマン 9巻 まんがフリーク
-
- 電子書籍
- おいしい銀座 21巻 まんがフリーク
-
- 電子書籍
- ひきこもりつつ育つ - 若者の発達危機…