内容説明
縄文土器においてすでに、活力溢れる蛇の造形が数多く見られる。蛇に対する強烈な畏敬と物凄い嫌悪、この二元の緊張は注連縄(しめなわ)・鏡餅(かがみもち)・案山子(かかし)など数多くの蛇の象徴物を生んだ。日本各地の祭祀と伝承に鋭利なメスを入れ、洗練と象徴の中にその跡を隠し永続する蛇信仰の実態を大胆かつ明晰に検証する意欲的論考!
目次
第1章 蛇の生態と古代日本人
第2章 蛇の古語「カカ」
第3章 神鏡考
第4章 鏡餅考
第5章 蛇を着る思想
第6章 蛇巫の存在
第7章 日本の古代哲学
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
テツ
19
有名なところではミシャグジ神か(あれも蛇やら石やら様々な説があるけれど) 本邦における蛇への信仰や想いを民俗学的な見地から説いていく一冊。牽強付会的な部分はあれ素人目線では十分面白く興味深く読めました。資料的な物として読むのではなくエンターテイメントとして読むべきなのかな。太古からウネウネとのたうっている蛇さんたちも自分たちがこんなに考察されたり信仰の対象となっているなんて考えてもないだろう。2017/08/18
N島
17
著者の蛇への想いに満ち満ちた一冊。日本人の精神の根元に蛇の影を見いだし、様々な民俗資料から失われた信仰のイメージへと結び付ける手法は、牽強附会の感は否めないモノの、なかなかに読ませる内容になっています。日本人の蛇信仰を学ぶにあたり、かなりの存在感を放つ一冊になっています。先祖が諏訪神社を祀っていた…ということを最近知り、なんとなく手に取った一冊でしたが、諏訪信仰の理解への取っ掛かりとしては、抑えておいて損は無い一冊だと思いました。2023/10/05
犬養三千代
8
蛇を民俗的観点から論じた一冊。とっつき難いがゆっくり読むにはこれくらいがいい。この方は陰陽五行からの分析が多い。縄文土器の装飾に何が込められたのか?縄文を起点にアジアまでの広がりを論じる壮大な一冊。2021/04/19
甘木
6
以前「山の神」を読んだことがあり、蒲葵や箒が蛇っていう説は知ってたけど、その理由がつらつらとまとめてあって、成程と勉強になることが多かった。全部が全部蛇というのには納得しかねるけど、思考の取っ掛かりにはちょうどいい。注連縄、カリヤの話はなかなか面白かった。関係ないけど、夜毎訪ねてくる男の髪や衣に針を刺して身元を調べる話の、実際には蛇体や蛇の目に針が刺さっていたっていう件、痛いだろうにそのまま帰ったのか…といつも思ってしまう。2016/05/24
お萩
6
ーー強烈な畏怖と物凄い嫌悪ーー蛇好きとしては大変楽しい読書だった。著者の思考と筆致が簡潔で、逆にそういう面がこじつけのような印象を残すのかもしれない。が、今残っている祭事や儀式も色々な思いや観念から出来上がってきたものなのだろうし、ある一文より筆者も十分それを踏まえているのだとわかる。ここではその自由でしなやかに伸びていく思考の枝葉をこそ楽しむべきだろう。第二章「蛇の古語「カカ」」が好き。2015/11/05