内容説明
歴史的な厄災が私たちに突き付けた「問い」とは?
医療崩壊、排外主義、コロナ貧困、自殺者の増加……。新型コロナウイルスの感染爆発は、全世界に社会的混乱と不安をもたらした。誰一人として先行きが見通せない状況で、私たちはパンデミックをどう生き抜くべきか。そして、先人たちはパンデミックとどう向き合ったのか。4人の論者が自身でセレクトした名著を持ち寄り、いま我々が直面している問題に即して解題し、感染症が暴いた人間の本質に迫る。大好評を博した「100分deパンデミック論」(2022年1月3日放送)の内容をさらに充実させた一冊!
【目次】
1 斎藤幸平:グローバル資本主義の限界(ジジェク『パンデミック』を読む)
2 小川公代:パンデミックとケア(ウルフ『ダロウェイ夫人』を読む)
3 栗原康:奴隷根性を打ち砕け!(大杉栄『大杉栄評論集』を読む)
4 高橋源一郎:露わになる社会の本質(サラマーゴ『白の闇』を読む)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイトKATE
27
番組を視聴した時、目を開かされた気持ちになった。このテキストを読んでもその気持ちは変わらない。新型コロナウイルス感染によるパンデミックによってそれまで常識となっていたものがいとも簡単に覆された。パンデミックによって分かったことは、資本主義の限界、「直立人」だけでなく「横臥者」の視点、危機的状況下で強くなる権力、災厄の中から社会の本質が見えることである。スラヴォイ・ジジェク、ヴァージニア・ウルフ、大杉栄、ジョゼ・サラマーゴの著書はパンデミックで混乱する世界と向き合うために、私たちは読まないといけない。2022/06/12
ののまる
9
なるほど。『ダロウェイ夫人』をスペイン風邪の背景から読むと、新しい発見。2022/07/17
KATSUOBUSHIMUSHI
1
4人中3人は市場を守るために強権をふるう混乱した政府に連帯で対抗しようという社会主義や無政府主義的な考え、小川公代は病人同士が孤独の共感を介してつながるというバタイユの思想にも関連しそうな考えを語っている。どの章もニュースで語られるような俯瞰的な視点ではなく、コロナ禍で生きる個人にフォーカスした統一感のある内容で、非常に面白く読むことができました。2022/11/08
rockwave1873
1
ジジェク『パンデミック』:1.資本主義で「カフェイン抜きのコーヒー」と比喩する見せかけの取り組みが蔓延している2.思考を停止させる「無知への意志」①陰謀論②科学への妄信③問題を知らないかのように振る舞うこと 大杉栄『大杉栄評論集』:1.自分の自我だと思っている大部分は、他人が無意識的にもしくは意識的に、我々に強制した他人の自我である。2.「無支配主義者」として「美は、真は、ただ乱調にある」と主張 サラマーゴ『白の闇』:1.パンデミックによる無秩序状態を患者側から描いた「カミュのペスト」に対比される書物。2022/06/07
mak_1410
0
「資本主義はゾンビ段階に入っているのですが、現実を受け入れられないそのゾンビが暴れ回って世界をめちゃくちゃにしていくわけです」2022/10/10