コロナ禍とトリアージを問う - 社会が命を選別するということ

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コロナ禍とトリアージを問う - 社会が命を選別するということ

  • 著者名:土井健司/田坂さつき
  • 価格 ¥2,640(本体¥2,400)
  • 青弓社(2022/05発売)
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  • ISBN:9784787235053

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内容説明

コロナ禍では医療従事者が不眠不休で治療にあたってもなお医療資源が不足している。どのような理由で医療資源を配分して、誰を、どの命を優先するのかを判断するトリアージをおこなうことの是非が、医療現場でも社会全体でも議論されている。

「助かる命を優先する」という効率的な医療の必要と「その選別から漏れる患者の命と尊厳を守るべきだ」という考えのはざまにある現在の日本社会で、トリアージをおこなう根拠や倫理的な責任を、医療や宗教、哲学の視点から多角的に考え、問題点を提起する。

「自宅待機」などの政府方針や医療界での議論など、日本の事例はもちろん、台湾やイタリア、ドイツなどの実情にも目を向け、「命の選別とその基準」をめぐる課題と正面から向き合い、検証した貴重な成果。2021年8月に開催した日本学術会議のシンポジウムでの報告に書き下ろし原稿を加えた論集。

目次

序 文 いまトリアージを考える 土井健司

第1部 世界の事例から考察する

第1章 コロナ・トリアージと人間の尊厳――イタリアとドイツの事例に即して考察する 加藤泰史
 1 「(SIAARTI)臨床倫理的提言」とイタリアの「コロナ・トリアージ」
 2 「(DIVI)臨床倫理的提言」とドイツの「コロナ・トリアージ」

第2章 新型コロナ禍でのトリアージと患者の人権をめぐるフランスと欧州人権機関 建石真公子
 1 新型コロナウイルス感染症とトリアージに関する日本の議論
 2 ヨーロッパ評議会での医療へのアクセスと健康権
 3 イギリスとフランスのトリアージに関する倫理的基準
 4 フランスのトリアージに関する指針
 5 ヨーロッパ評議会、イギリス、フランスのトリアージに関する倫理の違い

第3章 台湾の集中治療のトリアージ制度――新型コロナウイルス感染症パンデミック時の対応と課題 鍾宜錚
 1 トリアージの訳語と台湾のトリアージ制度
 2 分流というトリアージ制度とその運用
 3 医療資源の配分とトリアージ
 4 終末期医療の法制度とトリアージ

第4章 新型コロナウイルス感染症パンデミックでのトリアージをめぐる日本の医療界の議論 竹下 啓
 1 今回のパンデミック以前とパンデミック早期でのトリアージに関する提言・指針
 2 新型コロナウイルス感染症パンデミック早期に公表された指針など(表2)
 3 生命・医療倫理研究会提言での人工呼吸器トリアージの考え方
 4 実際の感染爆発で生じたトリアージ

第2部 命の選別を考える

第5章 コロナ禍で根拠あるトリアージは可能か 島薗 進
 1 医療を受けられない事態の頻出
 2 「トリアージ」の脅威
 3 「人工呼吸器配分提言」は妥当か
 4 「無益な治療」という論拠は妥当か

第6章 トリアージと人権に関する哲学的覚書 一ノ瀬正樹
 1 議論のすれ違い
 2 トリアージという緊迫
 3 救急外来でのトリアージ
 4 新型コロナウイルス感染症に関する人工呼吸器の配分
 5 「救命可能性」と「生存年数最大化」
 6 トリアージをめぐる予防文脈と危機文脈
 7 予防文脈の不整合性
 8 トリアージと人権
 9 「公共の福祉」と人権の制約
 10 絶対的権利としての人権?
 11 人権概念の基盤と「人民の福祉」
 12 人権概念の普遍性の問題

第7章 選別なきトリアージとトリアージなき選別――「トリアージ」という語をめぐる混乱と錯綜 安藤泰至
 1 選別なき「トリアージ」
 2 「トリアージ」なき選別
 3 生命倫理問題のなかの「トリアージ」
 4 「いのちの選別」に向かう時代のなかのトリアージ

おわりに 田坂さつき