内容説明
2022年5月28日、満期出所。リッダ闘争から50年、77歳になった革命家が、その人生を、出所を前に獄中で振り返る。父、母のこと、革命に目覚めた10代、中東での日々、仲間と語った世界革命の夢、そして、現在混乱下にある全世界に向けた、静かな叫び。
自分の死が前提であったリッダ闘争に、参加を決意したあの日――。
「もう、これが最後の日と頭ではわかっているのに、人間の生き死にに、どうしてあんなに平気で、また冷静でいられたのだろうと、老齢となった半世紀を経て思い返すことがある。
でもそれは「平気」でも「冷静」でもなくて、使命への渇望が、感情、心情を無自覚に抑えつけていたのだろうと今はわかる。」――本文より
本書は、日本赤軍の最高幹部であった著者が、リッダ闘争50年目の今、彼岸に在る戦士たちへの報告も兼ねて闘争の日々を振り返りまとめておこうと、獄中で綴った革命への記録であり、一人の女性として生きた“特異な人生の軌跡でもある。
疾走したかつての日々へ思いを巡らすとともに、反省を重ね、病や老いとも向き合った、刑務所での22年。無垢な幼少期から闘争に全てを捧げた青春時代まで、変わらぬ情熱もあれば、変化していく思いもある。彼女の思考の軌跡が、赤裸々に書き下ろされている。
さらに、出所間近に起きたロシアのウクライナ侵略に対する思いも、「今回のウクライナの現実は、私が中東に在り、東欧の友人たちと語り合った時代を思い起こさせる。」と、緊急追記。元革命家の彼女に、今の世界はどう見えているのか。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぽんくまそ
8
内ゲバやリンチで陰惨な新左翼の歴史のなかで、同じ赤軍の中でも左翼洗脳カルトな所業をした永田洋子らと違い、重信房子には、容姿もあってか、暴力肯定者であり、数々の大事件の裏にいながら、暗い雰囲気が無い。「この一報(3時のあなたの山口淑子から直通電話で仲間殺しを知った。重信は泣いた)から何日かを経て、今度は私の親友の遠山美枝子さんを含む10人くらいが殺されたことを知った。もう涙も出ない。」という記述にあいつらとは違ったのだと確認。しかし非暴力の言論戦・情報戦で「ナクバ」の非道を明らかにするしか勝ちはないと思う。2024/04/19
猫草
3
『私だったかもしれない』と思いながら、60年代70年代の革命に取り憑かれた人たちの記録を読み漁る。日本から世界へ飛び出した彼女たちの熱に圧倒される。終わりの見えないパレスチナ問題の渦中に飛び込み共闘の道を選ぶ生き方…チェゲバラのように……?革命闘争にのめり込んで行く過程が生々しい。2022/10/03
松村 英治
0
目的のためには手段を選ばず、が正しいかは難しい問題。2022/08/19
ワシじゃ
0
同一の・年齢・思想・行動力が結果的に危険な行為に及んでしまう恐怖。若気の至りとは決して言えない残酷な結果。 オウム真理教やネオナチ等々・・・。 民主主義は時間は掛かるが今の所ベターな選択と改めて思う。それにしても正しい歴史教育や他者の意見、常識の再検証は大事ですね。2022/07/04