内容説明
★中華時代小説の新鋭が放つ、松本清張賞受賞の大河武侠小説
〈安史の乱〉により未曾有の混乱に陥った唐で、
言葉の力を信じ、戦禍の流れを変えるべく奔走した顔季明。
彼の言葉を胸に、武芸に秀でた許嫁の張采春は故郷を出奔し、
采春の兄の張永は叛乱軍との戦へ身を投じた。
袂を分かった兄妹の運命は戦場にて思わぬ形で交差する――。
約3600万人もの犠牲者が出たと言われる〈安史の乱〉を背景に、
言葉の力で世を動かしたいという一心で文官を志す名家の青年と、
理不尽な理由で世間からつまはじきにされてきた地方の兄妹の
運命の出会いが唐の歴史を大きく動かす。
手に汗握るアクション、ハラハラする謀略、
そしてかけがえのない友情と愛情……。
そのすべてが詰まった、圧倒的スケールの武侠小説登場!
(解説 三田主水)
第27回松本清張賞受賞作。
※この電子書籍は2020年9月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よっち
32
安禄山の叛意が徐々に顕在化しつつあった唐・玄宗の時代。平原太守・顔真卿の下で大隊長を務める張永とその妹の采春の数奇な運命を描く中華小説。文官を目指し信念を曲げず敵陣の刃に倒れた青年・顔季明、彼の仇討ちを計るため故郷を出奔した許婚の采春、季明の遺志を継ぎ新皇帝のいる霊武へと向かった張永。激動の時代の自分ではどうにもならない運命のようなものが感じられて、それでも言葉で人を動かそうとする季明に影響された兄妹のその後は思ってもみなかった展開でしたけど、それぞれの信念の下に生きる彼らの姿がとても印象的な物語でした。2022/06/16
coldsurgeon
9
王羲之を超えた名筆とされた顔真卿の書「祭姪文稿」を東京国立博物館展で目にした時、確かな志の籠った文字に驚いたが、文中の顔季明という人物は知らなかった。その顔季明が、正に登場人物として活躍するのが、この物語である。国の人口の3分の2を失うことになる安史の乱に遭遇する顔季明は、物語半ばで殺されてしまうが、彼が発した志と想いは、まさに「一字、震雷の如し」と、世の乱れの中で、静かに広がっていく。世を乱し人々を苦しめるのは、国というシステムやそれを直接動かす権力者たちだけではない。同調圧力も一因となる。2022/07/30
地方書店員の髙橋
9
追加された話によって物語全体に奥行きが広がり、登場人物たちの動機や内面の心情等がより明確になっていてとても面白かった。 季明の言葉が、“一石を投じ”る形となって、張永と采春だけでなく、安慶緖の心までも揺さぶる。そしてそれぞれの生き方を、歩む道を変えていく。 正に【一字、震雷の如し】 本当は今週末ゆっくり読もうと思っていましたが、少しだけ、とページを捲った手が止まらず一気読み。 単行本を読み終えたばかりで、記憶が新しかったお陰でより楽しめました。2022/06/09
うさぎや
5
安史の乱を題材とする中華武侠小説。采春、いろんな意味で強すぎる。2024/04/09
umikaze_nagiko
4
大陸の歴史に疎いが、引き込まれる様に読み終えた。 名もない兄妹が、戦いに巻き込まれながら国とは力とは何かを考える。 言葉の力を信じ二人は進み続ける。2023/08/16