内容説明
名君・保科正之の来歴を、爽やかに描きだす。
生まれた直後に養子に出された徳川秀忠の庶子、保科正之。
不遇にも見える生い立ちの陰には、彼を思いやる多くの人々がいた。
養母となった武田信玄の娘、見性院。
人徳の高さを買われ、養父となった高遠藩主、保科正光。
そして陰に日向に力になってきた老中、土井利勝。
江戸城の外で育った「将軍の子」は、
いかにして稀代の名君と呼ばれるに至ったのか。
今もっとも注目される歴史時代小説の新鋭が、その半生を辿る。
※この電子書籍は2019年7月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mapion
76
短編7編。徳川3代将軍徳川家光の時代から、将軍補佐役として政治に携わった稀代の政治家保科正之。2代秀忠が身分の低い女性に産ませた子で、徳川家に迎えられることなく高遠藩主保科正光のもとで育つ。やがて家光が異母弟の正之を迎え将軍補佐役とする。この小説では正之の心情が直接語られることは少ない。各編の主人公には正之と関わった人々が置かれ、それぞれ語られる物語で正光の姿が浮かび上がる。歴史的事実に乗せて語られる、派手さを控え抑えた筆致で綴られた物語は、いずれも胸に沁みるものだった。登場人物はコメント欄で。2025/04/26
みこ
24
数奇な運命をたどった江戸時代初期の名君・保科正之の生涯を彼の周囲の人物を主人公とした短編連作で綴る。どうせなら長編で読んでみたい人物だが、清廉潔癖の聖人君子なので長編の主人公だと面白みに欠ける可能性ありなのでこの手法で真面目過ぎて変わり者扱いされる彼の人物造形はありかも。それでもラストの松平信綱との戦友と書いてライバルと読む関係は大好きなので、やっぱり長編で読んでみたい気持ちもちょっと芽生えた。2022/08/03
ニックス
19
この作者の本は会津の執権に続いて2作目。前回の本が非常に面白かったためこの本を買ってみた。結果期待を裏切らず面白かった。将軍の子は保科正之こと。つまりこの本は保科正之の一生について書かれている。前作みたいに主人子の周囲の者の視点で章が進んでいき、保科正之の一生が分かる。この書き方がこの作者は非常に上手い。星4.52023/11/18
coldsurgeon
11
しっかりとした人物描写が、物語を引き締め、静謐な物語を生み出した。エンターテイメント性はないかもしれないが、江戸初期の幕府の成り立ちを理解できる。二代将軍徳川秀忠の落胤とされる保科正之の静かな活躍が、目を見張る。彼の政に向き合う姿勢には、常に民政が重要視され、民の安寧を心から望んでいたことがうかがわれる。様々な環境の中を生き抜き、大輪の花を咲かせたのだ。とてもうまい書き手だと思った。2022/08/18
たけはる
10
将軍家忠の子でありながら、親子の対面すらさせてもらえなかった保科正之。しかし正之は多くの人に支えられ、健やかに生い立ってゆく。 正之のさわやかな人となりが全編を通して清々しく、気持ちのよい読後感でした。2022/09/04
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