内容説明
「わたしという女は、子しか産むことのできぬ女なのか」「ひとふりの刀の重さほども値しない男よ」……。男尊女卑の因習、家の規範、愛なき結婚、第二次世界大戦、70代での夫との訣別……薩摩士族の娘であるキヲは、明治から昭和にかけて世のならいに抗い、「独立」の心を捨てずに生きた。自らの母をモデルに、真の対話を求め続ける一人の女性を鮮烈に描いた名著。
目次
序章
第一章 生いたち
その一 西南の役と父
その二 「冷物取り」でいけ
第二章 娘時代
その一 血を汚すな
その二 そのころの男と女の差別
第三章 女の肌の重み
その一 傷つけられた意向
その二 嫁が姑となり
その三 血の精粋とは 血の憎悪に徹することである
その四 結婚とは 血の固めに他ならず
その五 胸は「まさむね」
その六 息子よ 自我は各 ひとつの根となる確立を
第四章 刀との対話
その一 このひとふりこそ 肌と向きあえる唯一のもの
その二 鬼の姑と仏の嫁と
その三 「血」の亀裂
その四 なにが古く なにが新しいといえるのか
その五 鬼婆とは
その六 わたしの「いくさ」ではなかった
その七 訣別
その八 独立のたのしみ
解説 鶴見俊輔
解説 斎藤真理子
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
37
芯の強い女性を描いているという印象を受けました。強烈で力強さがあり、生まれる時代が異なれば良かったと思わずにいられません。2023/10/29
Moeko Matsuda
9
長いこと積読していたこちらの本、読み始めたらあっという間だった。めちゃくちゃ強烈。帯には「薩摩士族の娘の苛烈な生」とあるが、その苛烈さの根本は彼女の性格だ。凄まじい男尊女卑の在り方は、読んでいると暗い気持ちになる。しかしそれを跳ね返すキヲさんはあまりにも気が強いし、更にその根本には別種の差別意識が根強くあることが、私自身がこの作品をどう評するか、述べることを難しくしている。ただ確実なのは、要するに一言で言えば、彼女はあまりにも強く、直刃の刀のように鋭いということ。女、だから。魂が震える読書体験だった。2022/12/18
かれーらいす
3
激動の時代を、たった一人で、刀のような言葉で生き抜いた女の一代記。キヲの語りは毒舌で乱暴で、でも不思議と胸を打つ。「自分を信じて、誰にも媚びずに生きる」ことの苦しさと誇りが、全編に満ちていた。2025/06/18
石橋
3
自家中毒的な独特の文体は読んでいて恥ずかしくなるのだが、薩摩言葉が中和剤となり読了できた。強烈な自我「意向」を貫かんとする姿勢はよくわかったけれど、男尊女卑は声高に語るわりに、身分制については絶対肯定なのかキヲよ…と思った。しかし彼女ら郷士は城下士から同じように蔑まれていたのだろうと想像した。そして離婚してからのキヲの対外的姿勢の変化に希望が生まれた。2023/01/26
kana0202
3
思想的には賛成なところと反対な箇所もあるが、いい意味でとてつもなく非常識。鶴見の言うように己の軽さを考えさせる。明治以降の百年を郷士の女がどう過ごしたかもわかる。次は石牟礼の西南役伝説を読もうかしら。2023/01/22