内容説明
自由民主主義体制は20世紀半ば以降、大枠としては機能してきたが、いまや多くの自由主義諸国で、代表制や複数政党制の機能不全が指摘されるようになっている。新自由主義が世界経済を席巻するようになるにつれ、格差社会化も進行している。地球環境の危機も深刻化している今、これら喫緊に課題とどう向き合うかを巨視的な枠組みから考究し、隘路からの脱出の方途を探った渾身の書である。
目次
はじめに──いまなぜ「資本主義・デモクラシー・エコロジー」なのか
三頭立ての馬車──デモクラシー、ナショナリズム、資本主義
新自由主義の出現と「新右派連合」の形成
資本主義と社会主義
シュンペーター『資本主義・社会主義・民主主義』
地球環境の危機──エコロジー問題
第一章 資本主義の変容──デモクラシーと立憲主義の危機
国民経済としての初期資本主義vs.今日のグローバル金融資本主義
1 アメリカ合衆国の風景
リーマン・ショックの真相とその問題の根源
2 日本の風景
3 新自由主義的イデオロギーとは何か
新自由主義の定義
ウェンディ・ブラウンの新自由主義批判
「タックス・ヘイブン」の問題
第二章 揺らぐ現代国家の正統性
1 グローバル資本主義とアカウンタビリティ
「アカウンタビリティ」という概念の登場
「委任型」正統性vs.「アカウンタビリティ型」正統性
信託型代表制に向けて
2 ハーバーマスの後期資本主義国家批判
3 ウォリンの現代アメリカ国家批判
ポストモダン国家の自動的正統化への批判
アメリカの覇権主義への批判──「逆立ちした全体主義」
国内の法の支配および立憲主義の破壊
4 統治形態としての「民主的」国家の危機
ポスト真実の時代におけるデモクラシー
「束の間のデモクラシー」
5 ふたたび、デモクラシーvs.国家形態
アバンスールとランシエールの見解
ウォリンの立場
第三章 自由民主主義の危機と社会保障の劣化
1 自由民主主義体制の危機
代表制民主主義と参加民主主義の連続と非連続
自由民主主義体制
2 「革命の失われた宝」としての参加民主主義の政治
ジョン・スチュアート・ミルの格闘
「革命の失われた宝」──アーレントの議論との関連で
ロック的革命論の今日的意義──ウォリンの議論との関連で
3 代表制と参加民主主義の還流に向けて
代表制の機能不全の多様な要因
民主主義の複線モデル
4 すでに「ポスト・デモクラシー」の時代なのか
社会民主主義の後退
コリン・クラウチのポスト・デモクラシー論
5 民主主義の再生のために
ヘゲモニーの視点
福祉社会の実現へ──下からの民主的ヘゲモニー構築の制度構想①
ベーシック・インカム導入の可能性──下からの民主的ヘゲモニー構築の制度構想②
第四章 エコロジーの限界とその逆襲
1 環境危機の四つの問題圏
環境汚染
人口、食糧、エネルギー問題
熱帯林の破壊と巨大な山火事
地球温暖化による気候変動
2 人類種は自らの生存を願ってはいないのか
3 ジェイムズ・ラヴロックの「ガイア」仮説
4 三つの異なる政策路線ないし目標──持続可能な発展、定常型経済、脱成長
持続可能な発展(グリーン・ニューディール)
定常型経済
脱成長
5 将来に向けた課題
補論 シュンペーター・テーゼ再訪
『資本主義・社会主義・民主主義』の出版とその画期的意義
三つのシュンペーター・テーゼとその骨子
歴史の後知恵から──八〇年後の視点論点
あとがき
略記表(アルファベット順)
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