内容説明
首都に巡らされた不思議な地下通路。昔の生活が残る小さな島の老婆たち。古いホテルの幽霊。海辺の葦原。カヌーで渡る運河の涼やかな風。そして密かに願ったコウノトリとの邂逅は叶うのか……。北ヨーロッパの小国エストニア。長い被支配の歴史を持つこの国を訪れた著者が出会い、感じたものは。祖国への熱情を静かに抱き続ける人々と、彼らが愛する自然をつぶさに見つめた九日間の旅。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
173
梨木さんの最新の文庫本が出たのでさっそく読んでみました。エストニアの紀行記です。エストニアというと私などすごいIT大国であるというイメージなのですが、ここにはそのような話が少しも出てきません。ホテルの設備で若干それらしきことが出てきますが、梨木さんの話はひたすら素朴な人々との接触や自然風景の話で、私にはかなりいい国の印象でした。行ってみたい気がします。2016/06/07
buchipanda3
110
「人が森に在るときは、森もまた人に在る」。エストニアというとまず浮かぶのはバルト海、旧ソ連、そして最近では公共のIT化が進んだ国というもの。洗練された所かなと思いつつイメージがあまり湧かなかったが、梨木さんのエッセイで自然豊かな森の国、中でも伝統衣装の色合いと合わせて緑色とえんじ色の国という事が印象付けられた。81歳の歌姫の自転車姿が微笑ましい。蛭のボトルキープにぎょっと。ムース1万頭って驚き。祖国の歌からはその歴史と麗しの地への静かな熱を感じる。何より著者がこの地を描く嬉しさがその筆致から伝わってきた。2021/06/18
はたっぴ
108
梨木さんの文章が柔らかく滑らかで、一緒にエストニアを旅しているような憩いの時間だった。「歌う革命」や「人間の鎖」など、国家独立への行動を起こした人々の逞しさと敬虔な日々の暮らしを垣間見て、この国への関心が一気に高まった。表紙と共に掲載されている数々の写真も良かった。81歳の歌姫ヴィルヴァおばあさんが、マウンテンバイクにまたがって走る姿に釘付け。颯爽と去っていく後ろ姿に元気をいただいた。どんな旅にもかさばる長靴を持っていき、森を歩き回るという著者の自然を愛する姿勢が、小説の登場人物と重なってみえる。2016/06/18
Rin
95
豊かな自然、島々と多くの自然動物。歌の祭典にコウノトリ。エストニア。生活を楽しみ、自然というものにその生活の指針をおってきた人たち。それらを染々と、丁寧に味わっている梨木さん。彼女が紡ぐ言葉や文章には、深い愛情がつまっていて。愛嬌もありやっぱり好きだなぁと、浸っていたくなる。文章を追いかけて行ったことのないエストニアの地を想像する。コウノトリの巣が電柱にあると困るので横にポールを立てて「移っていただきたい作戦」をする人。不思議な体験をするホテル。中の写真を観ながらの読書は幸せ。私たちの祖国も地球ですね。2016/11/09
Kajitt22
91
中世の時代からエストニアはスウェーデン領になったりロシアに併合されたり、大戦中はドイツ軍の侵攻やその後はソ連の蹂躙があったりと、島国日本からは想像だにできない歴史のようだが、それにはほんの数ページしか触れていない。作者の関心は、この国の辺境の地に残っている小さき草花、きのこ、鳥、羊、ムースの大群など、自然に宿る魂にあるようだ。森の中や、葦原の海岸などを歩いて、体をすりぬける風から「気」を受け楽しむ文章が弾んでいる。写真もいいです。2018/03/09
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