内容説明
戦後、産業構造が変容し、最盛期には4100キロにのぼった北海道の鉄道の約四割が消滅した。そこでは何が失われ、何が残ったのか。紀行作家として鉄道の魅力を伝える著者が廃線跡を丹念に取材し、開拓史、地域の栄枯盛衰、そこに生きた人々の息遣いを活写する。鉄道への郷愁と憧憬とともに、かつて北海道の基幹産業だった、石炭、鉱山、にしん漁、馬産、砂金などの歴史エピソードを渉猟し、新しい「鉄道民俗学」を試みる。
目次
Ⅰ 道北
第1章 さいはての天と地をゆく──天北線
第2章 消えたにしん列車──羽幌線
第3章 流氷街道をゆく──名寄本線
第4章 廃駅復活の希望──深名線
Ⅱ 道東
第5章 根釧原野、見果てぬ夢──標津線
第6章 鉄道駅舎、ふるさとの記憶──池北線
第7章 国策に翻弄された鉄道──白糠線
第8章 幻のタウシュベツ川橋梁──士幌線
第9章 晩成社という名の開拓物語──広尾線
Ⅲ 道央
第10章 石炭が〝黒いダイヤモンド〟だったころ──手宮線、幌内線、万字線、石勝線夕張支線
第11章 石狩平野、囚人たちの道──札沼線
第12章 羊蹄山麓をめぐる──胆振線
Ⅳ 海をめぐる鉄道
第13章 日本海をめざす鉄道路線──留萌本線、岩内線、瀬棚線、江差線
第14章 黒潮迫る太平洋の道──日高本線
第15章 オホーツク、謎の遺跡と夕日の湖──湧網線
あとがき
巻末資料 北海道廃線クロニクル
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
92
著者は自分より若干、年長ですが、ほぼ同世代。北海道の鉄道が頼りにされていた時代を知っている最後の世代か?。その青春時代に乗り歩いた多くの路線はもうない。戦後産業構造が変容し、最盛期には4100kmあったという路線の約4割は消えたという。今、廃線となった思い出の場所を訪ね、草薮に分け入り、駅舎を探し、その地が北海道開拓にかかわった歴史を顧みる。数多くの路線を扱っているので内容がやや散漫なのは仕方がないとしても、各路線(章)ごとの地図がないのは致命的。宮脇俊三先生の著作のような簡潔にして十分な地図が欲しい。 2022/06/28
skunk_c
60
旅行好きにはたまらない。旅行の楽しみはいくつもあるが、景観を楽しむには鉄道が一番いい。若い頃まだ免許を持っておらず、この本で紹介されている今はなき路線も結構乗っていので思い出すことも多かった。北海道の観光のためいくつか路線復活を提案しているが同感。さらに旅行の楽しみは遺構を巡るというのもある(城跡も立派な遺構)。廃坑が好きだが鉄道遺構も結構好き。この夏北海道に行くので本書で紹介された遺構や、保存された鉄道のモニュメントを巡ってみたい。巻末に紹介された路線のコンパクトな歴史と諸元が載っているのもありがたい。2022/06/04
ろべると
8
かつて北海道には4100kmもの鉄道路線があった。それは石炭や木材輸送などのために敷設され、川で砂金が採れたり海辺にはニシン御殿が建ち並び、道内は賑わっていた。一方でトンネル工事などに多くのタコ部屋労働者が酷使され命を落とすといった負の歴史もあった。私も80年代に国鉄のワイド周遊券で道内を巡ったものだ。その後の地方の衰退により40%の路線が廃止となり、もはや見るかげもない。「旅と鉄道」の編集長も務めた筆者が、私にも思い出深い道内の鉄路の跡を巡り、過去の栄枯盛衰に想いを寄せる。大自然だけは今でも残っている。2022/06/04
オールド・ボリシェビク
4
著者は北大卒。鉄道雑誌の編集者を長く務めた。北大生のころ、道内の鉄道で回ったいわゆる「カニ族」である。天北線、名寄本線、池北線、日高本線などなど、消えていった路線の跡をたどりながら、思いをつづる。草生す廃線跡を歩くなど、現地に行かなくては書けない力作なのだから、写真や地図をもっと多用すべきだったと強く思った。あと時折、事実関係にあやふやな部分がるのも落ち着かなかった。さらに富内線など、取り上げていない線もある。「完全版」を出してほしいが、北海道、これからも廃線が増えそうだしなあ。2025/01/22
とりもり
3
廃線紀行といっても廃線跡を辿るシーンは少なめで、車で沿線を辿りながら昔の想い出や沿線の歴史エピソードを披露するといった感じの本。写真も少ないし、期待したものと違ってちょっとがっかり。それにしても、これだけ豊かな鉄道文化を誇った北海道が、今では見る影もなく、更に追加で廃線にしようとしている現状を憂慮せざるを得ない。鉄道は文化だという発想がないから、効率だけでバス路線化を選択し、更に衰退を招く。本当にこの国の近代・現代には文明はあっても文化はないと痛感する。北海道一周の観光列車、乗ってみたかったな。★★☆☆☆2022/07/30
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