内容説明
ツゥーっと横丁曲って、路地の奥へツゥと入って……下駄の向くまま気の向くまま、ひたすら地ベタの感触と人間臭い風景にひかれ、なにやらやって来ましたあの町この町。ああ郷愁の…ムグ…「あの頃」。スケッチブック片手のブラブラ歩き、落着く先はなぜか黄昏時の赤提灯、ふられ酒あり祭り酒あり。江戸っ子絵師・滝田ゆう流「東京百景」。一口ガイド・マップ付き。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とみやん📖
6
あっという間に読了。 滝田ゆう氏の作品は初めてだが、絵は見たことがあるような気がする。 本作は昭和50年初頭の街歩きエッセー。著者の故郷、玉ノ井で墨東綺譚の話題も出たが、散歩好きの荷風に通じるところを感じる。 大半が馴染みのある場所だが、何せ40年以上前の街の様子ゆえ、現代とは全く別世界なのだと思う。銀一小路なんて、聞いたことも無かった。葛飾の川甚も店じまいしたばかりだが、紹介されているお店も現存しているのは少ない。 滝田氏の絵は人物が特徴的で、何とも言えずほんわかした色気がある。 2023/01/14
Eu
2
グフフとご機嫌になったかと思えば次の拍子にはコロッと自虐に転じて「死にまひょ」とか言うてる酒臭いオッサンの文章で巡る東京。 この人のフキダシに意味深なモチーフを描くやり方がすごく好き。歴史資料に使えそうなくらい説明的に描きこまれた絵ながら、この吹き出しひとつで詩になる。鈴付き糸切鋏とか、吸取器とか、想像力を掻き立ててやまない。2018/12/05