内容説明
宗教学の権威である著者は問う。「幸福と成功を追い求めるだけが人生なのか」と。むしろ著者は「不幸な悲しみに耐えている人間に尊敬を抱く」とも。その問題意識のもと、自らの死を予感していた源実朝、親族を皆殺しにした北条時頼、乞食願望を持ち続けた松尾芭蕉、キリスト教に入信した支倉常長、死んだ妹の魂を追いかけて旅した宮沢賢治、殉死の予行演習をしていた乃木希典、鴎外晩年の著作に執着した松本清張、死後も自分の欲望を満たそうとした谷崎潤一郎、『黒い雨』に慟哭の通奏低音を挿入した井伏鱒二、上官の罪を背負って処刑された青年学徒などを取り上げつつ、縄文の昔から日本人の底流に流れ続ける「悲しみ」の旋律を描いた渾身の作品。幸福願望ばかりが肥大化する現代において、「孤独とは何か」「人生の無常とは何か」を考えるうえで大切な視点を示してくれる一冊でもある。2002年1月に発刊された『悲しみの精神史』を加筆・改題して復刊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サワ
14
死んだつもりで生きる能、木偶なるものに息を吹き込む歌舞伎…能と歌舞伎はドラマツルギー。 日本人とは「私」ではなく「私たち」。文化も同じで、○○の文化ではなく、文化たち。日本の歴史が、深いところで悲しみの精神でつながっていることを悟りました。2022/01/21
nizimasu
3
山折先生の人生訓話みたいなものかと読み進めてみるといきなり宮沢賢治が妹の死についてなげく詩の話が始まる。そうした「哀しみ」のエピソードの数々を紹介しながらその折々の感情を丹念になぞっていきながら文章は進む。かなり不思議な内容で面食らっていたら後半になり友人である江藤淳の自殺について著者の交友と共に語られるその哀しみの深さに驚かされる。世の中に成功譚があれば悲劇譚もあってもいい。そんな内容であった。哀しみこそが日本人の深い根の部分にあるのではないかという視点に深く共感した。ハレでなくケの文章も味わい深い2015/12/21
take
0
自分には無かった、違った角度でいろいろ考えさせらる。 深い悲しみ の 自己浄化力 幸福獲得への脅迫観念→精神不安 ・ヒトとヒトの比較をやめる →比較はモノとモノでする ・だますより、だまされる人間になる →人を信じてだまされる幸福、無欲であれば騙されない。 ・一人で歩く →散歩で胸中の鬱屈が晴れる、涙がながれ 乾いていく 万葉人→富士山は恐ろしい異界の山 源氏物語の もののあわれ と もののけ 能と歌舞伎 老木に花の咲かんが如し 葉隠 出家道と武士道 慈悲と勇気2016/10/12
佐藤太郎
0
まえがきと気になった章だけ流し読み。まえがきは素晴らしいが中身は凡庸な文学解説とエッセイなので特に感想は無い。が、明治以前は現在と生活背景が乖離していて、描かれる世界も限られた書物や著者の想像でしか無く、言ってみればファンタジーだから、それを事実として実感を持って受け入れる才能の無い自分にとっては、真面目に感情移入して読もうと努力する時間が無駄だと素直に認められるようになった。まえがきに共感した感性の人の本ですらそうなのだから。通史系の解説本を基礎とか必読とする幻想から覚めた気がした。2024/07/12
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