内容説明
日本の問題は、「経済」と「環境」にある。そんなのは、コロナにならなくったって、虫を見ていればわかること。虫が生きにくい世のなかは、人間も生き物も生きにくい――。
コロナ禍で一転、イタリアとの行き来が途絶え、日本生活を余儀なくされた根っからの昆虫好きのヤマザキマリが先輩として慕う養老孟司。コロナ以前から箱根の養老昆虫館に足を運んだ4年間、話は虫を通じて見えてくる世界の複雑さ、気候変動とともに変わりゆく生態系、来るべきAIの世界、すっかり脳化が進み「戦時中と似ている」という日本を覆う空気まで。そして養老さんに訪れたまるの死と病。はたして想像力と突破口はどこにある?
世の中との「ズレ」を感じ続けるふたりが、その違和を一つひとつ解きながら、いつしか微視的スコープで文明の深奥までを眺め見る対談。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
206
ヤマザキ マリは、新作(但し、漫画以外)中心に読んでいる作家です。養老 孟司も同様です。あまり接点のないと思っていた二人の対談集、ヤマザキ マリが、こんなに昆虫オタクだとは思いませんでした(笑) https://books.bunshun.jp/ud/book/num/97841639108022022/08/05
アキ
126
ヤマザキマリと養老孟司の対談本。2018年からコロナ後の2021年まで計7回。伊集院光との対談本も読んだが、本書の方が断然面白い。マリ氏のイタリアからの視点が、養老孟司の幅広い範囲に渡る知見を引き出してくれている。知性つまり脳が支配的なこの世界で、身体の重要性を説く。そのためには虫捕りが一番いいという。武道とスポーツの違い、修行の最終目的、論理と倫理の関係、資本主義の終焉など、数多くの書物と共に考えを述べる。コロナワクチンとしてmRNAを人体に入れる方法が倫理を通り越して実施されたことに警鐘を鳴らす。2022/07/07
ネギっ子gen
89
昆虫好きのヤマザキマリが先輩として慕う養老先生と、時には息子のデルスも交えて、コロナ禍での対談集。マリは「はじめに」で、<養老先生が熱中するのは命を終えた昆虫だが、私が熱中するのは生きている虫の方だ/昆虫愛好家でも養老先生のレベルの人々は巷では“ムシ屋”と呼ばれている/ムシ屋かそうでないかはともかく、私がそもそも昆虫に興味を持つようになったのは、この生態が犬や猫などと違って、全く、一切合切の意思の疎通を可能とせず、同じ惑星に生存しているということ以外、何も共有できるものがないからだ>と。なるほどねぇ~。⇒2022/08/09
けんとまん1007
85
自分の中では哲学書になる。思い上がることへの警鐘の書。それは、おとなしくしている・・ということではなく、自然に対する畏敬の念を持ちながら、自分の立ち位置を考え、自分の頭で考え・行動するということ。帯にある「新しい知性」という言葉も、受けとり方はいろいろ。驕りを捨てることで、見えるものがある。2022/08/01
shikashika555
63
大好きなんだけど、たまにぶっ飛びすぎていて眉に唾をつけて聴きたくなる養老節と、力強い知見とエネルギッシュなうねりを感じさせるヤマザキマリさんのお二人の対談。 昆虫の話を導入に、人間の認識やアートについて、死刑や安楽死について、言葉について、日本と日本人について、などなど盛りだくさんであちこち飛ぶ話題をまとめている。 4章5章が興味深かった。 特に5章での「喜怒哀楽のような情動というのは結局は全て社会的概念である」という所。目からウロコが落ちると共に、知ってた感覚を言い当てられたような相反する感想を持った。2022/07/26