内容説明
百花と千愛は3つ違いの姉妹。両親のもと成長していたが、ある日両親が離婚する。
父の元へ引き取られた百花と、母の元へ引き取られた千愛。離れて暮らすようになって30年が過ぎ、39歳となった百花は、制作会社の契約社員として働いている。
ある日、担当している番組の百花宛に1通の手紙が届く。長らく会っていない妹・千愛からの手紙に驚きながらも、手紙の内容から千愛からのものだと確信し、返信にメールアドレスを書いておいた。
それから2人のメールのやり取りが始まる。千愛はすぐに、重大な事実を知らせる。
会えなかった間の30年の間を埋めるように、互いの辿った道を綴る。
父の再婚相手との関係がうまくいかず、早くに自立した百花。母子家庭で困窮状態にあったが、結婚を経て、1児の子育てに忙しい千愛。最初に語り合ったのは、そんな表向きのこと――。
距離が近づいていくうちに、心の底に仕舞った思いをぶつけあっていく2人。
共有できない母との思い出、途切れた時間は再びつながるのか……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とん大西
127
両親は幼い頃に離婚。姉の百花は父とともに、妹の千愛は母とともに…。離れて暮らし30年、メールで再開された姉妹二人のちょっと切なくもほがらかな交わり。お互いのこれまでと今、父が父であり、母が母であること。そして老いたこと。彼女たちのメールのやり取りは淡々と静かにすすむ。自分のことと重ね合わせてときにチクリときたり、グサっときたり。言葉以上に語りかけてくる慕情が微妙に心地良かったりします。2022/07/06
ポップノア♪@9/1~9/5初入院。でもプチ旅行気分
74
両親の離婚後、30年間別々に暮らしていた姉妹。妹の千愛(ちあき)がテレビの制作会社に勤務する姉⋅百花の名前を偶然見つけたことから物語は始まる。全編2人のメールのやり取りで進むので最初はやや物足りなく感じたが、それぞれの日常の変化、更には母⋅静子の病と、誰にでも訪れる出来事がリアルで胸が詰まる場面もしばしば。「母の死を文章に残したかった」と仰る中江さん御自身の経験が込められていると知ると一層重みは増す。コロナ禍も描かれているし、他人のメールを盗み見してるような不思議な小説だった。 因みに、サイン本でした。2022/06/14
sayuri
73
全編メールで紡がれた家族の物語。両親の離婚で離ればなれになった姉妹。姉の百花は父の元へ、妹の千愛は母に引き取られる。テレビ番組の最後に流れるエンドロールに姉の名前を見つけた事がきっかけで、二人のメール交換が始まった。30年という時を経たから話せる事がある。自分自身の事や両親の離婚の事。面と向かっては言いにくい事や聞けない事。メールだから素直に心の内を曝け出す二人。母の闘病で姉妹と父親の距離が再び近づいていく過程に家族の絆を感じる。メールの文章だけで綴られていても喜怒哀楽の表情までが浮かんで来る作品だった。2022/07/08
tetsubun1000mg
28
中江有里さんの作品を読むのは5冊目になった。 今回は小学生低学年と幼少期の姉妹が両親の離婚によって離れ離れになった設定。 TVのエンドロールに姉の氏名を見つけて、すがる思いで手紙を出したことがきっかけで出会うことになる。 コロナ過の状況を織り交ぜてほぼ全編を、お互いのメールのやり取りで進行させる思い切った構成としている。 顔を合わせて話すよりメールの方が素直な気持ちが出せる面もあるだろうし、違和感を全く感じさせない文章だった。 インタビューではコロナ過で母親を癌で亡くされたのがきっかけだったとの事でした。2024/05/08
あおけん
24
幼い頃に両親の離婚により姉の百花は父親が、妹の千愛は母親と暮らすことになり離れ離れに。それまで交流は全くありませんでしたが30年後、千愛がテレビで姉の名前を見つけて手紙を出すところから物語が始まります。前編メールでのやり取りの為、ハードな内容が緩和されてる感じはしました。しかし、対面だと言いにくい感情がメールだと赤裸々に書ける部分もありますね。中々、興味深い作品でした。2023/06/04