ちくまプリマー新書<br> 学校はなぜ退屈でなぜ大切なのか

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ちくまプリマー新書
学校はなぜ退屈でなぜ大切なのか

  • 著者名:広田照幸【著者】
  • 価格 ¥825(本体¥750)
  • 筑摩書房(2022/05発売)
  • GW前半スタート!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~4/29)
  • ポイント 210pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480684288

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内容説明

教育はしばしば失敗するし、学校は本質的に退屈である。にもかかわらず、学校や教育は世界を広げてくれる――。教育の目的から、学校の役割、道徳教育やAI社会まで、広い視点と多様な角度からとらえなおす。

目次

はじめに
この本を読んでもらいたい人
「AとB」で議論してみる
第1章 教育と社会化
教育はなぜ失敗するのか
1 教育とは何か
教育の定義
教える側の意図
教育の不確実性
2 教育と学習・社会化
人は生きているとさまざまなことを学ぶ
学校以外でも学ぶ
3 多様な社会化エージェント
学校は不要か?
学校教育の影響力を高めたい! という試み
やり過ぎもある
仲間集団がもたらすもの
情報センターとしての仲間集団
いじめ
第2章 学校の目的と機能
1 学校の目的
目的と機能とを区別する
教育基本法の中の「教育の目的」
学校教育法における「高校教育の目標」
高い理想を掲げる意義
2 学校の機能
社会化機能
選抜・配分機能
過度の画一化──社会化機能の暴走
「まずいこと」を学んでしまう
テストが目的になる本末転倒
学校には他にもいろんな機能がある
第3章 知識と経験
1 学校の知
学校の勉強よりも世の中での経験?
学校知不要論のそれなりの根拠
学校知=世界の縮図
コメニウスの『世界図絵』
学校知はより広い世界への通路
学校の勉強がつまらない理由
2 知識と経験
経験は狭い、人生は短い
知が経験の質を変える
「学び方」自体を学ぶ
「検索」だけでは質の高い情報にたどりつけない
「できる大卒」と「できる高卒」
第4章 善人の道徳と善い世界の道徳
1 道徳的に生きる、とは?
道徳教育の功罪
善と悪との争いではない
2 道徳的社会化の場としての学校
道徳教育論はなぜ困難なのか
「先生の話をちゃんと聞く」だって道徳的学習になってしまう
「善き世界の倫理」の欠落
「社会を変える」という視点の弱さ
3 知識は道徳を広げる
「善き世界の倫理」のための知識
「信頼できる議論」を見分ける
共感や想像力のための知識
4 「きしむ車輪は油を差してもらえる」
周囲に流されない強さを
第5章 平等と卓越
原理上の対立
1 公教育の中の平等と卓越
日本国憲法第二十六条
教育は卓越を追求する
経済からの要求による教育の分化・序列化
教育効率という論理からの分化・序列化
2 みんなにとって有益な教育
学校教育は単なる競争の場なのか
人的資本を高めることは社会全体にとって有益
みんなが政治的教養・文化的教養を持つと、いいことがある
すべての子どもに質の高い教育を
3 家庭環境と教育機会の不平等
家庭環境はどれくらい影響するか
「個別最適化した学び」論
第6章 人間とAI
AIによる社会の変化は、今の子どもたちの人生を直撃する
AIが影響を与える分野
技術革新は教育方法・内容を変える
経済の二極化か、万人の豊かさの実現か
政治への影響
文化への影響
AIと幸せに共生するために
未来に向けた学校教育の役割
公共的議論を高めるための教育
もしもうまくいった場合の学校教育の危機
教育学の役割の見直し
第7章 身の回りの世界とグローバルな世界
1 広い世界に出て行くために
家族と友人だけの世界は狭い
学校は「長い廊下」
2 〈自分探し〉と学校
アイデンティティを宙吊りにする学校
子どもを「未熟」扱いする学校
仮のアイデンティティ
〈自分探し〉のコツ
3 世界は人間の努力で前よりもよくなっている
一番広い世界
悲観主義と理想主義
貧困の減少、奴隷制の消滅
核戦争の脅威
地球温暖化問題
若い世代に期待する

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

みねね

44
教育の現場に出ていると、学生や非常勤講師時代に学んでいた「教職教養」はまるで無力で、◯年前の俺はなんでこんなもんをありがたがって勉強していたんだ、なんて思うこともしばしばあった。が、包括的に見ると、やはり基本的なルールや行動原理は学んだことの中にあると気づく。一歩、二歩下がって教育を見る余裕があるとき、学んだことは大いに役に立つ。数学とか数学科教育についても程度は違えど似たものを感じるから、これは共通なのだろう。余裕のないときにきちんと物事を判断できるよう、教育社会学の諸々を少しずつ学んでいきたい。2023/09/05

venturingbeyond

39
タイトル通り、「退屈」である理由を示し、それが教育という営為の「大切」さと分かちがたく結びついている理路を示す。教育は、俗世から隔離された社会的真空状態で行われる訳ではない。教育の対象である生徒・児童の有する多様な社会的背景ゆえに、職業的教育者からの働きかけが意図通りに定着する訳もなく、シニカルにその機能不全や無効性を主張する言説も枚挙に暇がない。しかし、ウェーバーとは異なる抑えたトーンで“denn noch”と著者は教育の価値を語る。教員志望の生徒に読ませておきたい一冊。2022/06/07

生ハム

27
「多くの子供達に「勉強がつまらない」というふうに映るのは、学校の知の本質です。つまらないと思った人は多いと思いますが、学校はそういうものです。身近な日常経験とは切り離されたものを教わっているので仕方ありません。」筆者のこの一文に感銘を受けました。なぜ、少しでも学びに前向きな子どもたちを育てたいのか、なぜ、授業の導入を一生懸命考えるのか、なぜ・・・。「退屈」と「大切」はそれぞれ独立していたり対立していたりするのではなく、もしかして同一なもの、裏表の関係に近いのかな、と思えるようになりました。2022/08/04

りょうみや

26
教育哲学的な深い話題が砕けたエッセイ風に分かりやすく書かれている。いかにもちくまプリマ―新書らしい。いわゆる「正解のない問い」が多いが著者なりの考えが示されている。高校生くらいでこの本が読めたら学校でのメタ学習が進むと思う。2022/05/31

TAK.I

23
本のタイトルに惹かれて。「退屈だが大切」一見矛盾するようだが、その通りだなと読む前から思う。さて内容はというと、著者が教育と学校に関する長編エッセイと表するぐらいだから非常に読み易い。学校から得られる知は記号化された世界の縮図だという。身近な経験とは離れたものを学ぶのだから退屈なのはむしろ当然で、よく、学校なんて何で行かないといけないの?塾でよくない?あるいは、自分がやりたいことだけ学べばいいんじゃない?と言う人がいるが、そういう人にも読んでほしい1冊。終盤はAIとの共生ついても触れていて考えさせられる。2022/08/06

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