内容説明
教育はしばしば失敗するし、学校は本質的に退屈である。にもかかわらず、学校や教育は世界を広げてくれる――。教育の目的から、学校の役割、道徳教育やAI社会まで、広い視点と多様な角度からとらえなおす。
目次
はじめに
この本を読んでもらいたい人
「AとB」で議論してみる
第1章 教育と社会化
教育はなぜ失敗するのか
1 教育とは何か
教育の定義
教える側の意図
教育の不確実性
2 教育と学習・社会化
人は生きているとさまざまなことを学ぶ
学校以外でも学ぶ
3 多様な社会化エージェント
学校は不要か?
学校教育の影響力を高めたい! という試み
やり過ぎもある
仲間集団がもたらすもの
情報センターとしての仲間集団
いじめ
第2章 学校の目的と機能
1 学校の目的
目的と機能とを区別する
教育基本法の中の「教育の目的」
学校教育法における「高校教育の目標」
高い理想を掲げる意義
2 学校の機能
社会化機能
選抜・配分機能
過度の画一化──社会化機能の暴走
「まずいこと」を学んでしまう
テストが目的になる本末転倒
学校には他にもいろんな機能がある
第3章 知識と経験
1 学校の知
学校の勉強よりも世の中での経験?
学校知不要論のそれなりの根拠
学校知=世界の縮図
コメニウスの『世界図絵』
学校知はより広い世界への通路
学校の勉強がつまらない理由
2 知識と経験
経験は狭い、人生は短い
知が経験の質を変える
「学び方」自体を学ぶ
「検索」だけでは質の高い情報にたどりつけない
「できる大卒」と「できる高卒」
第4章 善人の道徳と善い世界の道徳
1 道徳的に生きる、とは?
道徳教育の功罪
善と悪との争いではない
2 道徳的社会化の場としての学校
道徳教育論はなぜ困難なのか
「先生の話をちゃんと聞く」だって道徳的学習になってしまう
「善き世界の倫理」の欠落
「社会を変える」という視点の弱さ
3 知識は道徳を広げる
「善き世界の倫理」のための知識
「信頼できる議論」を見分ける
共感や想像力のための知識
4 「きしむ車輪は油を差してもらえる」
周囲に流されない強さを
第5章 平等と卓越
原理上の対立
1 公教育の中の平等と卓越
日本国憲法第二十六条
教育は卓越を追求する
経済からの要求による教育の分化・序列化
教育効率という論理からの分化・序列化
2 みんなにとって有益な教育
学校教育は単なる競争の場なのか
人的資本を高めることは社会全体にとって有益
みんなが政治的教養・文化的教養を持つと、いいことがある
すべての子どもに質の高い教育を
3 家庭環境と教育機会の不平等
家庭環境はどれくらい影響するか
「個別最適化した学び」論
第6章 人間とAI
AIによる社会の変化は、今の子どもたちの人生を直撃する
AIが影響を与える分野
技術革新は教育方法・内容を変える
経済の二極化か、万人の豊かさの実現か
政治への影響
文化への影響
AIと幸せに共生するために
未来に向けた学校教育の役割
公共的議論を高めるための教育
もしもうまくいった場合の学校教育の危機
教育学の役割の見直し
第7章 身の回りの世界とグローバルな世界
1 広い世界に出て行くために
家族と友人だけの世界は狭い
学校は「長い廊下」
2 〈自分探し〉と学校
アイデンティティを宙吊りにする学校
子どもを「未熟」扱いする学校
仮のアイデンティティ
〈自分探し〉のコツ
3 世界は人間の努力で前よりもよくなっている
一番広い世界
悲観主義と理想主義
貧困の減少、奴隷制の消滅
核戦争の脅威
地球温暖化問題
若い世代に期待する
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