ちくま新書<br> 海の東南アジア史 ──港市・女性・外来者

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ちくま新書
海の東南アジア史 ──港市・女性・外来者

  • 著者名:弘末雅士【著者】
  • 価格 ¥880(本体¥800)
  • 筑摩書房(2022/05発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480074782

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内容説明

近世から現代まで、ヨーロッパ諸国、中国、日本などから外来者が多く訪れ、交易をし、また植民地支配を行った東南アジア。そこでは、人喰いの風聞を広める人、現地人女性、ヨーロッパ人と現地人の間の子孫、華人などさまざまな存在が、外の世界と現地の間に介在していた。その様相を見ると、いかに多様な人々が各地に存在し、複雑な関係を持っていたか、各地の国民国家形成に影響を与えたかがよくわかる。主に東南アジア海域を舞台に、前近代と近現代、西と東をつなげる画期的な一冊。

目次

はじめに
東西世界をつなぐ海の東南アジア
近現代東南アジアを形成した人々
第一章 近世東南アジアの港市──多様なネットワーク
1 東南アジアの自然環境と人々
地形と生態環境
言語と住民
小人口と社会形成
2 東西海洋交易活動と多様な来訪者
港市国家の台頭
「交易の時代」の東南アジア
コスモポリスの港市
3 港市の社会統合と王権の強化
イスラムの受容
上座部仏教と外来者
広域世界秩序の媒介役
4 東南アジアの「人喰い」風聞と地域秩序
東南アジアの入口における「奇習」
北スマトラの食人風聞
南シナ海の食人風聞と屍頭蛮
マルク諸島の食人風聞と女性
第二章 外来者と現地人女性
1 東南アジアの女性と商業活動
市場と女性
王国の経済活動と女性
ポルトガルの来航とムラカ王国
王国の滅亡と美女トゥン・ファティマ
2 外来商人と現地人女性
外来者と現地人女性との結婚
一時妻の周縁化
外来者と奴隷
3 近世東南アジアにおける日本人の活動
奴隷と傭兵
朱印船貿易と東南アジアの権力者
山田長政とアユタヤ王プラサートーン
日本人の活動と東南アジアの社会統合
バタヴィアの日本人女性
4 植民地支配者と現地人女性
オランダとマタラム王家
ジャワの社会統合と女性
オランダ人と元パジャジャラン王女の女奴隷
第三章 近世後期の東南アジア社会──現地人首長とヨーロッパ勢力
1 清朝の隆盛と東南アジアの経済活動の活性化
東南アジア大陸部の王朝の交代
島嶼部東南アジア社会の動向
イギリスの海峡植民地形成
王国の統合と宮廷文化の成熟
ムスリム支配者とアラブ人宗教家
2 社会統合と女性
近世後期の宮廷女性
華人とニャイ
バタヴィアの社会統合とニャイ
近世後期の食人の語りと女性
3 海峡植民地と海賊
ラッフルズの自由主義プロジェクト
シンガポール建設
シンガポールの発展と海賊
現地人支配者への協力依頼
4 植民地支配と現地人有力者
ラッフルズのジャワ統治
ジャワ戦争と強制栽培制度の導入
強制栽培制度と現地人首長
東インドのヨーロッパ人
第四章 植民地支配の拡大と外来系住民
1 東南アジアにおける植民地勢力の拡大
島嶼部における植民地支配の拡大
英領マラヤ・北ボルネオの形成
スペイン領フィリピン
ビルマの植民地化
フランス領インドシナの成立とシャム
2 植民地体制下の東南アジア社会の変容
植民地体制下の統治制度
輸出用第一次産品の開発
英領マラヤの鉱山企業と大陸部の米のプランテーション
交通通信手段の発展
学校制度の拡充
3 植民地支配体制の確立と仲介役の変容
スペイン系メスティーソの在俗司祭の活動
プロパガンダ運動とフィリピン民族主義
フィリピン革命
4 東インドのユーラシアンとニャイ
植民地体制下のヨーロッパ系住民
「白人」の文明の使徒意識とニャイ
ユーラシアンの描くニャイ
ユーラシアンの運動
第五章 新たな内と外の構築と国民国家
1 植民地体制下における諸集団の統合と分化
イスラム同盟と東インド党
ムスリムvsニャイ・ユーラシアン
社会主義とイスラム
インドネシア共産党の成立とヨーロッパ系住民の離脱
社会主義思想とニャイ
社会主義と東南アジアの民族主義運動
2 原住民と非原住民との結婚
一九三〇年代の東南アジアの民族主義運動
東インドにおける「混淆婚」の増加
インドネシア民族意識と母親像
新婚姻法案
ミアイ(インドネシア・イスラム会議)の結成
3 日本占領期東南アジアの社会変容
日本の東南アジア占領
大衆動員と東南アジア社会の変容
日本軍政と独立運動
4 国民統合への道程
インドネシアの独立
インドネシアの国民統合
開発独裁体制と家族像
開発独裁後の諸勢力の分立と仲介役
おわりに
あとがき
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

skunk_c

71
東南アジアの基本的な歴史をしっかり押えながら、外来者(ヨーロッパ、中国)とそれをつなぐ女性(ニャイと呼ばれる外来者男性と現地で生活を共にする者)、そしてユーラシアンと呼ばれる混血や現地生まれの外地人(メスティーソ)が、どのように媒介となりながら社会が展開していったかを明らかにする。ニャイやユーラシアンは近代になりその意義を失っていくなど、時代により意味合いが異なるが、時代ごとの役割をきちんと位置づけている。一夫一妻制や女性の権利問題なども現代の価値観に引きずられず記述するなど多くの新しい知見を得た。良書。2023/05/18

サアベドラ

42
近世~近現代の東南アジア海域世界の展開を、外来者(華人、日本人、西洋人など)とそれをつなぐ現地妻やその子孫の観点から記述した新書。2022年刊。外来商人がひっきりなしに訪れる中近世の港市国家にとって、いわゆる現地妻とその子孫であるユーラシアンは外来者と現地人をつなぐ重要な存在だった。しかし、植民地化を経験し、国民国家を形成する段階に至ると彼女ら彼らは次第に周縁化し、最終的には現地人化するか外来者として去るかの二択を迫られるようになる。東南アジア独特の問題を扱っていて非常に興味深かった。2022/08/20

MUNEKAZ

15
近世以降の東南アジア史を扱った内容だが、本書の面白いところは「ニャイ」と呼ばれる現地妻に着目した点。現代だといかがわしい香りもするが、近世東南アジアの港市国家にとって、外来者と現地住民を媒介する女性やその間に生まれた混血児たちは非常に重要な存在であり、社会的にも高い地位にいたことが示される。ただ近代以降の民族主義の勃興や独立運動の激化により、こうした女性や混血児は、植民地時代の犠牲者として周縁に追いやられ、マイノリティとなってしまう。「女性」「交易」「民族主義」とさまざまな視点が交錯する興味深い一冊。2022/05/28

かんがく

14
タイトルの「海」要素よりも、副題の「女性・外来者」要素が多い。古代より様々な文化圏の人間が往来する東南アジアにおいて、現地人と外来者を媒介した人々に焦点が当てられている。特に外国人男性と結婚するニャイと呼ばれる女性たちが、時代によって現地からの見られ方が変わっていく様子が面白い。2022/10/02

ポルターガイスト

6
独自の最新研究で東南アジア史を更新する試み。興味が少しありますというより,ある程度もう流れを掴んでいる人が読むといいと思う。ニャイやユーラシアンの位置づけが国民国家の形成とともに変質していく様が興味深い。ただこの手のテーマ史にありがちな,現代に近づくにつれて生じてくる竜頭蛇尾感は否めない。「『周縁』から眺める東南アジア史」の部分をもっと強調して,序盤で少し出てきた日本の絡みとか削いでもよかったと思う。個人的にはその部分が面白かったから,序盤で少し出てくると,最後まで出ることを期待してしまうんだな。2023/07/07

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