ちくま新書<br> 臨床心理学小史

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ちくま新書
臨床心理学小史

  • 著者名:サトウタツヤ【著者】
  • 価格 ¥825(本体¥750)
  • 筑摩書房(2022/05発売)
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  • ISBN:9784480074829

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内容説明

近代心理学が成立した19世紀末、ウィトマーは臨床心理学雑誌を創刊し、医学と異なる専門領域である臨床心理学の必要性を宣言する。精神分析は臨床心理学にどのような影響を与えたのか、自閉症という概念はどのように変化してきたのか、そして日本の臨床心理学はどのような道をたどってきたのか。臨床心理学の歴史と展開の百数十年を概観し、現代の心理実践を考えるための一冊。

目次

はじめに
第1章 臨床心理学の成立まで
1 心理学の長い過去(一)──中世まで
一万年前──魔術医とシャーマニズム
ギリシャの考え方
イスラム圏の考え方
中世の魔女狩り
2 心理学の長い過去(二)──近世~近代
用語としての心理学
身体の理解の深まりとカントショック
魔女狩りから動物磁気へ
催眠と二重人格
3 必須通過点──近代心理学の成立
精神物理学
進化論と民族心理学
一八七九──ヴントと心理学実験室の整備
アメリカにおける心理学の発展──ヘヴン・ジェームズ・ホール
4 ウィトマーと心理学クリニック
ウィトマーと研究
場所としての心理学クリニック
雑誌としての心理学クリニック
一八九六年頃の出来事
第2章 成立後の臨床心理学
1 生後の環境を重視する精神分析の誕生
フロイトの考え方とアメリカでの受容まで
フロイトを受け入れたアメリカの文脈──精神衛生・臨床心理学
精神分析のひろがり──学派の形成と対立
フロイトが臨床心理学に与えた影響
2 子どもの状態を実際に把握する知能検査の誕生
個性や個人差の把握と心理学
フランスにおける公教育
ビネの知能検査
IQの光と影
3 行動主義という逆転の発想──行動療法の萌芽
玄人好みの行動主義
生理学と心理学の接点としてのパブロフの犬
ワトソンの行動主義と新行動主義の展開
行動療法の萌芽──実験神経症、アルバート坊や実験、常同行動(誤った随伴性)など
4 二つの世界大戦の影響(特にアメリカ)
兵士の精神衛生
砲弾ショック(戦争神経症)
アメリカ陸軍のアーミーテストと個人データシート
ルリヤによる脳損傷兵士のリハビリテーションと神経心理学
第3章 臨床心理学の多彩な展開
1 児童への関わりや見方と
の心理学
職業指導ガイダンスと少年非行への対応
児童相談におけるサイコロジスト
子ども観の噴出──ヴィゴーツキー・ピアジェ・ビューラー
子どもの異常行動への行動主義的介入
2 精神医学における進展
脳地図、脳波
集団心理療法や自助グループの始まり
自閉症の提唱──アスペルガーとカナー
フロイトの精神分析理論の展開
3 性格理論の深化、心理検査の展開
性格の類型論
性格の特性論
ロールシャッハと投影法
神経心理学的検査という発想
4 臨床実践の心理学化
カウンセラーとクライエント
「心理療法の新しい諸概念」を講演
中核条件、録音、訓練用画像
ロジャーズの遺産──エンカウンター・グループ
第4章 臨床心理学の成熟
1 ホスピタリズム・実存主義──退役軍人支援からの制度化
強制収容所サバイバー『夜と霧』
戦災孤児の境遇から理解できること
制度としての臨床心理学の進展──科学者─実践家モデル
実践と研究における倫理
2 精神医学の動向──精神分析、向精神薬、操作的診断
精神力動論・精神分析の輝き──ユング心理学・アイデンティティ理論
向精神薬の発見とその余波
操作的診断基準
同性愛が病気でなくなった過程
3 心理療法の効果
アイゼンクの効果研究とそれへの反論
ケース・フォーミュレーションの萌芽
心理療法の効果
経験的に支持された処遇
4 ストレス・PTSD・PTG
セリエの〝汎適応症候群〟
ストレス概念の心理学化──ソーシャル・サポートとコーピングの取り入れ
トラウマとストレス、心的外傷後ストレス障害(PTSD)
PTSDの治療法とレジリエンス
第5章 臨床心理学の新展開
1 心理療法の多様な展開
芸術療法──芸術の力を活かした心理療法
ミルトン・エリクソン『短期催眠療法の特殊技法』
行動療法の展開──スキナーとアイゼンクの貢献
家族療法──アッカーマン『家族生活の精神力動』
2 論理療法・認知療法から認知行動療法へ
論理療法・認知療法
セリグマンの学習性無力感、バンデューラの自己効力感
行動療法の広域・狭域の争い
マインドフルネス──認知行動療法の第三世代
3 発達
適応と社会との関係の再構成
注意欠陥障害と学習障害の提唱
コミュニティ・予防
人種とジェンダーに心理学はどう関わるか──生得的か社会的か
自閉症と心の理論
4 統合への気運の高まりとグローバル時代の臨床心理学
統合アプローチの萌芽
短期心理療法の展開
心理士による投薬、精神科医による対話
多文化心理学、ポジティブ心理学
第6章 日本の臨床心理学史
1 黎明期から混乱・衰退期へ
前史──江戸時代末期まで
黎明期──元良勇次郎による精神遅滞児の注意訓練
揺籃期──催眠の流行
混乱期──福来友吉による透視・念写騒動
2 活性化期から停滞期へ
上昇期──知能検査への期待
活性化期──雑誌『変態心理』創刊、森田療法の提唱
戦忙期──傷痍軍人リハビリテーション
休止期(戦閑期)──国破れて山河あり
3 知識流入・自立期から挫折期へ
知識流入期──GHQによる教育の科学化と心理学
アメリカかぶれ? 心理学ブームが巻き起こる
組織化模索期──日本臨床心理学会
挫折期──資格化が社会の大波をかぶって頓挫
4 再生期・国家資格の整備へ
社会的ブーム──『モラトリアム人間の時代』
制度化期──日本心理臨床学会設立、日本臨床心理士資格認定協会
社会化期──阪神・淡路大震災とPTSD
公認心理師の成立
おわりに 謝辞もこめて
主要参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

tolucky1962

10
悪魔時代からルネサンスで魂の考えが変化。宗教改革で自己の概念。カントが心理学は非科学を主張。心理研究は数式化し科学化,宗教から独立。実験心理,構成心理学。ウィトマーの心理学クリニックが臨床心理学の始まり。フロイトの精神分析。ユングのコンプレックス,集合的無意識。パーソンズはカウンセリング。精神障害を環境不適応としたマイヤー。ランクはクラエントと呼ぶ。フロイトの症例報告。セガンの知的障害児教育。ダウンの症児支援。ビネの知的検査。スキナーの認知行動療法。2023/04/23

ひろか

10
臨床心理学徒、はじめての一冊。小史であり、一つの項目は簡単な記載だけだが、こんな本なかったですねー。そのことが、臨床心理というか、心理臨床の過ちだったのではないでしょーかねー2022/05/14

くろねこ

7
心理学の成り立ちから日本の臨床心理学史まで、わかりやすく簡潔に全体の流れや立ち位置を書いてくれています。専門性がある場合はそれこそ立ち位置、他の専門分野との関係を考えるにも良い本と思いました。2023/08/01

Dolphin and Lemon

4
最近臨床心理学に興味を持ち河合隼雄などを読むようになったが、臨床心理全体を概論するような本を読みたくてこの本を手に取った。非常に読みやすくて今後この分野の本を読んでいくときに大きな助けになると感じた。 精神医学と臨床心理学の違いについて対象とする問題に目を向けるのか、その人全体に目を向けるのかの違いであるというのはとてもクリアな説明でわかりやすかった。 全てを頭に入れられたわけでは当然ないけどまた読み返したい。2023/05/05

空白少女

3
ヴントあたりから始まるのかなと思いきや心理学が成立する以前の宗教や哲学の話に触れられており、期待以上に良い本だった。日本における臨床心理学についても初めて知ることが多く、面白くてすぐ読み終わってしまった。2022/12/26

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