内容説明
啓蒙の合理主義や科学信仰に対する批判を検討した思想史的作品を収める.ヴィーコ,ハーマン,ヘルダーなど反啓蒙の系譜をさぐる表題作の他,冷徹な反革命思想家を鮮やかに描いたド・メストル論,政治的振幅の大きい人物に迫ったソレル論.自らの論敵ともいえる思想家を深く読み解き,その魅力を引き出すことを得意としたバーリンの珠玉の論集.
目次
凡例
反啓蒙思想(三辺博之 訳)
ジョセフ・ド・メストルとファシズムの起源(松本礼二 訳)
ジョルジュ・ソレル(田中治男 訳)
解説(松本礼二)
索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chanvesa
24
反啓蒙思想が反理性であるというヨーロッパ思想の潮流として、ド・メストルにファシズムや全体主義の原型を見出し、ソレルの危険性とその行動主義から植民地解放のアフリカの思想・行動への影響の可能性を示唆する。18世紀の反動思想に「個人であれ、民族であれ、創造的なものとそうでないもの、歴史あるものとそうでないものとを鋭く区別する考えが加わると、ナショナリズムと帝国主義を当然により刺激し、遂にはそのもっとも暴力的な病理形態である二〇世紀のファシズムと全体主義の理論を生み出した。(53頁)」この峻別は友敵関係でもある。2022/01/13
無重力蜜柑
16
最高。めちゃくちゃ面白い。「自然法……の実在、それに従うことによってのみ人間は賢く幸福で有徳で自由になれる永遠の原理が存在するという確信」「これらの法則が実在し……それを知ることができるということ」を啓蒙思想の中心教義とし、それへ反発する反啓蒙の思想を論じる論文三本。そこにあるのは合理性、体系性、科学性、知的楽観主義……等々への強烈な反発であり、様々なバリエーションがあるがいずれも部分より全体を、論理より直感を、理性より感覚を、科学より芸術を、進歩より伝統を重んじる。2022/09/14
Ex libris 毒餃子
9
啓蒙の合理化と科学信仰への批判の再検討。ド・メストルについて、初めて触れたので新鮮でした。反啓蒙思想の正統性は触れて面白かったです。2022/02/11
預かりマウス
3
本書を読むことにより、民主主義、自由主義、人権など、現代の諸体制・思想の直接的な起源と言うべき啓蒙主義を、徹底的に相対化することができる。その点で非常に痛快であり、特に本書の第一篇である『反啓蒙思想』は、バーリンによる名言の嵐、全く圧巻である。第二篇『ジョゼフ・ド・メストルとファシズムの起源』は、同じく岩波文庫で先訳のあるバーリン『ハリネズミとキツネ』以上に、今の日本においてはメーストルについて知る上での基本、決定版とも思える。2022/03/26
げんき
2
本書で取り上げられているド・メストルもジョルジュ・ソレルも全く知らない思想家だったが、とても面白く読むことができた。彼らはいわゆる《反啓蒙》の思想家なのだが、そのユニークさはあくまで人間に普遍的な理性の力によって社会は合理的に改善していくことができる、という啓蒙思想が強力に浸透した社会があってこそのものだなあと思った。2021/12/16
-
- 電子書籍
- 後宮のポクチャ~下女から王の側室へ!?…
-
- 電子書籍
- ふゆりぃな先生のろーばい【分冊版】 3…
-
- 電子書籍
- バイオレンスアクション【単話】(34)…
-
- 電子書籍
- 29歳独身中堅冒険者の日常(3)
-
- 電子書籍
- オペラ座の美女~女子大生桜川東子の推理~