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内容説明
目に見えないウイルスの感染者数が日々「可視化」されたコロナ禍の2年間の後に残ったのは、一人では安心感を得られず、周囲にも疑いの目を向けあう日本人の姿だった。SNSで自らプライバシーを発信し、政治信条や病気・障害までを社会の視線に公開しても、最後は安易なルッキズム(見た目偏重)ばかりが横行する「すべてが見えてしまう社会」を、どう生き抜くのか? 歴史学者から評論家に転じた著者が、臨床心理士の東畑開人氏、哲学者/作家の千葉雅也氏、文化人類学者の磯野真穂氏と白熱した議論を交わしつつ、人文学の方法論の壁を超えて「見えない信頼」を取り戻す方法を提言する! 【目次より】・情報を「見せる」ことで国民を操る権力 ・過剰可視化が失わせる「身体感覚」 ・キラキラしたダイバーシティの空疎さ ・若者の「ヤバい」「エモい」に隠された不安 ・現金支給という「数値化」が不公平感を招く ・病気で「タグ付け」することの是非 ・ファクトよりも先に「品位」を問うべき ・「ハレとケ」を区分できない、のっぺらぼうな日常。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
119
SNSの発達で地球の反対側に住む人の主張も、ウクライナでの殺し合いもリアルタイムで見られる。しかし「見える」範囲の急拡大で大量の情報を受け取れた人は処理能力が追いつかず、一方で情報弱者との格差が広がった。これほど可視化された社会を前提としていない民主主義体制は混乱して不安感が広まり、明日が見えない人びとは権威主義政治を主張する勢力にすり寄っていく。そんな時代に精神の健康を得るためにはどうすべきか、方向を見失った現代思想のあり方を問いかける。これに「承認欲求」問題を絡めたら、それこそ手が付けられなくなるか。2022/06/19
trazom
117
與那覇さんのいつもの主張が炸裂する。プレゼンやコンサルへの懐疑、タグ化の弊害、エビデンス主義の副作用…。でも今回はどうも波長が合わない。「見えすぎる」と言うが、自己紹介や日々のつぶやきなど「見せすぎる」自分たちが元凶ではないのか。巻末の「調味料の民主主義」で、著者への違和感の所以がわかった気がする。「主張や分析の内容」という食材ではなく「語り口」という調味料こそ重要で「だから僕は自分の仕事でも食材以上に調味料を大切にしたい」との宣言だが、私は、調味料に誤魔化されずに食材を吟味できる「教養」を身につけたい。2022/08/19
ころこ
44
前半は語り下ろしのため文章の艶の無いことに落胆し、右も左も批判する取り留めの無さと相まって、雑然とした感じに落胆するかも知れません。しかし後半の対談相手である東畑開人、千葉雅也、磯野真穂とポリコレから突き抜けているメンツをみると、著者の一貫した態度が推し量れます。「すべてが公共的な存在として「可視化」されていく社会の気持ち悪さは、あらゆる個性が「見える」ようでいて実際には平板化され、ブランド名のロゴマークと同じ扱いに転じてしまう」という千葉との対談の著者のこの言葉に「可視化」の問題が集約されています。「可2022/06/03
kan
25
コロナ禍でハレとケの区分が失われツルツルの日常になり、同じタグの繋がりで排他的な同質化が進み意見が異なる人をブロックすることと、従来は特別な場所でゆるやかに可視化されていた本音がSNSで透明化され、単純化と極論化に繋がるという著者の分析。これと、Z世代が「いい子症候群」になる要素がピタリと一致すると思った。現実の混沌世界で目立たぬよう気を遣い、無菌室に籠るのは最近の重要な風潮だと思う。予防的な人付き合いや、思考や身体をアプリ化する弊害はすぐ顕れそうだ。現代のトレンドを的確に言語化していて勉強になった。2022/09/11
活字スキー
23
IT技術の進歩によって物事の可視化が進み、情報発信が容易になることはなはだしい現代において、人間の情報処理能力の方は進歩していると言えるだろうか。前半では著者のコロナ禍日本についての所感と問題提起、後半では著者が注目する3名の有識者との対談を通して可視化以外の可能性を模索する。読み応えはあったけれど、どうにも感想がまとまらずに苦労したよ。 2022/08/20
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