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内容説明
アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞作『The Cove』(ザ・コーヴ)。本作が映し出したのは、小型漁船がイルカの群れを入り江に誘導して捕殺する「追い込み漁」だった。そして現在、生き物をめぐる新たな運動が日本と世界に広がりつつある。キーワードは「ビーガン(vegan:完全菜食)」と「動物の権利(アニマルライツ)」。「水族館には行くな」「肉食は恥」「ビーガンになると、人間は優しくなれる」。ビーガンはいまや、女性のあいだで隠れたブームの一つでもある。さらに地球温暖化対策を訴えるスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリは、畜産動物の保護を求める理由に気候、生態系、健康の危機があるという。「もしも私たちが今のやり方で食物を作り続けたら、ほとんどの野生動物と植物の生息地も破壊し、無数の種を絶滅に追いやります」。現場の取材を通じ、アニマルライツ運動の本質に迫った本邦初の新書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふみあき
24
この書名とPHP新書というレーベルから、ビーガニズムやアニマルライツを訴える運動に否定的な(つまり保守的な)内容かと思ってしまうが、そうでもなかった。その筋の活動家の主張に理解を示す文章も散見されるし、その筆致から著者がジャーナリストとして公正中立に努めているのが伝わってきた。活動家の過半数が女性だという事実は、本書で指摘されるまで意外に気づかなかった(反捕鯨団体「シー・シェパード」とか、コワモテ連中のイメージが強烈だったので)。2022/05/21
Tomomi Yazaki
16
かつて鯨漁の町・太地町を世界的に非難の的にした映画「THE・COVE」。残酷さを必要以上に脚色し、太地町の人たちを極悪非道と口撃した。だが、コロナ禍の現在、シーシェパードをはじめとする似非団体は来日できない。そして今、活動の主体は日本人となっている。しかもビーガンやベジタリアンの思想も兼ねて。彼らの理想は、仲間を食べないジャングル大帝のレオなの?本書を読み、彼らの真摯な態度に心は動かされたけど、他国の捕鯨は看過し、なぜ太地町だけ?でもこれだけは言える。可愛いけど美味しい。これは矛盾しないと。2022/07/07
Satoshi
13
映画「The cove」発端でシー・シェパードによる和歌山県大地町のクジラ漁の妨害といった非論理的な運動から、動物の権利という理性的な活動に変わったことを初めて知る。公民権運動の延長に動物の権利運動があるととらえ、動物に変わり訴訟を起こすなどは理解し難いが、著者が本書を公平なドキュメンタリーとしているので、片方に肩入れすること無く読めた。2025/05/14
こぺたろう
10
事情があって再読。感想は過去に読んだ時と変わらず。別のレビューでも書きましたが、動物利用を巡って「一貫性のある理屈や基準はない」という考え方を、私は支持しています。動物利用反対の場合「痛みを感じるか否か」で線を引く例があるようですが、私は「ヒトとヒト以外」で線を引いているのだろうなと思います。2023/01/28
こぺたろう
10
新書版も届いたので、再度読了。本書ではありませんが、講談社の人気漫画「ダーウィン事変」でも、こうした「動物の権利」「ビーガン」「種差別」などが登場してくる。やはり今後、一般的に触れる機会が増えていくのかもしれないですね。動物の利用が許されない社会(たとえば、食べたり、飼ったり。いや、お金儲けでない飼育は許容されるのかな?)って想像できませんが。2022/05/19