怪異と遊ぶ

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怪異と遊ぶ

  • 著者名:怪異怪談研究会/一柳廣孝
  • 価格 ¥2,640(本体¥2,400)
  • 青弓社(2022/05発売)
  • 2025→2026年!Kinoppy電子書籍・電子洋書全点ポイント30倍キャンペーン(~1/1)
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  • ISBN:9784787292674

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内容説明

日常を逸脱した存在や現象である「怪異」は、恐怖の対象として忌避されてきた。しかし同時に、怪異は好奇心を刺激して多くの人々を魅了してきた。私たちはなぜ「怖いもの見たさ」で怪異をのぞき込み、怪異と戯れてしまうのだろうか。

怪談師、心霊術、分身、透明人間、キューピッドさん、『トワイライトシンドローム』、妖怪と地域文化、「意味が分かると怖い話」――多様なジャンルの事例から、怪異と遊びとの関係性を描き出す。

怪異を自らの手で日常生活へと呼び込む心性に迫り、怪異が単なる恐怖の対象ではなく娯楽や趣味として受容されてきたことを、文学研究や民俗学、社会学、宗教学などの視点から照らし出す。作家・川奈まり子との座談会も所収。

執筆者(以下、執筆順)
大道晴香/伊藤龍平/斎藤 喬/一柳廣孝/永島大輝/構 大樹/今藤晃裕/橋本順光/橋迫瑞穂/市川寛也/川奈まり子

目次

はじめに 大道晴香

第1部 怪異を語る

第1章 幽霊に萌える、怪異で遊ぶ 伊藤龍平
 1 落語『お菊の皿』
 2 恐怖と笑いの近日点
 3 「皿屋敷」は萌えているか
 4 創作怪談と実話怪談のベクトル

第2章 語り継がれる狸合戦――阿波における憑依と遊戯 斎藤 喬
 1 「金長霊明神」由来譚
 2 初発の口走り
 3 狸憑きから狸合戦へ
 4 合戦を語る遊戯性

第3章 怪談師の時代 一柳廣孝
 1 遊びとしての怪談語り
 2 明治の怪談師たち
 3 そして、現代の怪談師へ

第4章 「意味が分かると怖い話」とは何か――「似ている話」を探して、作って、読み換える、遊び 永島大輝
 1 本章で「意味が分かると怖い話」について考えていく道筋
 2 「意味怖」の歴史
 3 内容から検討するために、「話型(ルビ:わけい)(似ている・同じ)」について考える
 4 「意味怖」という場で語られた話が「意味怖」である
 5 心理テストは八百屋お七の夢を見るか?――「話群」の置き換えは「意味怖」に限らない
 6 「意味怖」から「眼前の事実」を探るための覚書

第2部 怪異を表現する

第5章 分かたれた「己」で、遊ぶ――森鴎外「不思議な鏡」が映し出す分身譚の愉しみ 構 大樹
 1 簇出する分身譚
 2 お約束からズレようとする「不思議な鏡」
 3 「新年のお慰み」という意識
 4 分身を自然化する鴎外の語られ方

第6章 大正、〈霊交術事件〉の夏――奇術としての心霊術 今藤晃裕
 1 ゼーゲル夫妻来朝す
 2 〈霊交術事件〉顛末
 3 エンターテインメント化する心霊術
 4 奇術としての心霊術

第7章 透明人間現る――隠れる物語から露わにする物語まで 橋本順光
 1 透明人間の誕生――ギュゲスと龍樹の逸話からウェルズまで
 2 人として見られない透明な存在の語り――労働者・黒人・移民
 3 日本におけるウェルズ型の「透明人間」とハーディ型の「見えない男」の混交
 4 見えない男から、見えない女、そして見えない子供たちへ

第3部 怪異を操る

第8章 一九八〇年代の「こっくりさん」――降霊の恐怖を払拭する「キューピッドさん」の戦略 大道晴香
 1 「こっくりさん」と制御できない神霊の恐怖
 2 恐怖を脱色する「キューピッドさん」の戦略
 3 「キューピッドさん」は怖い
 4 「宗教儀礼」にも「遊び」にもなれない「こっくりさん」

第9章 怪異と「遊ぶ」装置――『トワイライトシンドローム』を手がかりに 橋迫瑞穂
 1 『トワイライトシンドローム』の概要
 2 『トワイライトシンドローム 禁じられた都市伝説』の概要
 3 ゲームとしての「学校の怪談」
 4 学校空間と怪異
 5 学校・怪異・「遊び」

第10章 怪異に学び戯れる人々――妖怪文化を育む虚構の共同体に着目して 市川寛也
 1 「現実」と「虚構」のあいだで
 2 地域学における怪異・妖怪――「遊び」と「学び」
 3 「四国の秘境 山城・大歩危妖怪村」の前史――秘境と開発
 4 大歩危妖怪村における「虚構」と「現実」

特別座談会 怪異を創る楽しみ 川奈まり子/一柳廣孝/大道晴香
 1 語りと一人称の関係
ほか

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

HANA

78
怪異と遊びの関係性に注目した論集。それぞれの論文の主題となっているものがこっくりさんにトワイライトシンドローム、意味怖に怪談師、阿波の狸合戦と興味深いものばかり。特に興味深いものとしてはこっくりさんからキューピドさんへの変遷と戦略とそれでも脱色できない何かを扱ったものや、鴎外の自分のパロディとしての分身、口碑から文学へ変化していった狸合戦の部分かな。全体的に過去から現在への恐怖に見える価値観の変遷といったものを扱っている論文が多い印象で、HPLの名言、恐怖は最も原始的な感情を思い出させる一冊であった。2022/06/16

へくとぱすかる

48
いやもう、表紙が怖いです~~。だけど怪異そのものというより、怪異をどのように受容してきたか、端的に、どう楽しんできたのか各地の歴史を発掘する内容。人間の「怖いもの見たさ」への探求である。阿波の狸合戦といえば、どうしてもアニメの「ぽんぽこ」を連想する。桂米朝が声優をつとめた金長大明神にかかわる伝承が興味深い。「意味が分かると怖い話」は一度読んでみよう。ゲームと学校の怪談の親和性はおもしろい。実際に分析を進めていったら、どんどん展開していくような気がする。「「学校の怪談」はささやく」も再読してみようと思う。2022/06/21

ワッピー

43
【日本の夏は、やっぱり怪談2022】イベント参加本。怪異怪談研究会による娯楽・趣味としての怪談トピック。古典怪談のパロディ発生の意味、狸合戦伝承、明治期の怪談ブームと怪談師、意味怖話の楽しまれ方、ドッペルゲンガー、日本に上陸した降霊会、透明人間の両面性、こっくりさんの変容、学校を舞台としたホラーゲーム登場、町おこしと妖怪といったテーマを扱い、日本のオカルト史をたどるという意味でも面白い。見えない人間の意味を追求した第七章の「透明人間現る」は【世界を批判する怪異】で、まさにこれが社会的妖怪そのものです。2022/07/25

∃.狂茶党

10
東アジア恠異学会の本に比べて、とりあげる題材からか、文献学的な雰囲気は、薄めで、カジュアルな印象。 オカルトに興味あるけど、あんまりおかしな本や、いたずらに難しい本ではなく、ちゃんとした知識が欲しい人におすすめです。2025/05/30

qoop

8
怪異を媒介としたコミュニケーションのあり方を、複雑で多様性を秘めた文化的事象である〈遊び〉という切り口で探った論稿集。意図しない偶然性を本義とする怪異は、決められた遊びのルールの内から時に逸脱し、ルールの変更を余儀なくし、それが遊びの新たなルール/コミュニケーションの可能性を広げる。遊びが内包するアンコントローラブルな側面が強調され、同時に怪異を宥めてコントローラブルな埒内に収めようとする心性の両側面が見てとれる点で、本書のテーマ設定は秀逸と感じた。2022/07/04

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