船旅の文化誌

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船旅の文化誌

  • 著者名:富田昭次
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  • 青弓社(2022/05発売)
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  • ISBN:9784787220936

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内容説明

江戸末期に洋行した福沢諭吉、ニューヨークからナポリに向かった有島武郎、ハイカラなフランスをめざして「船旅文学」を打ち立てた島崎藤村。大使館に赴任する家族に同行した女性、新天地に将来をかけた移民たち、あるいは船旅で寿命が延びる感覚を受けたという鶴見和子と俊輔の父・祐輔、船中を和服で通した新宿中村屋の創業者・相馬愛蔵……。

夢と期待を乗せた客船が洋上を駆け巡った洋行の時代、「海の外に出る」ことは生きることそのものだった。暮らしが船旅と結び付いていた時代の営みを、小説やエッセー、絵はがきや旅行パンフレットほかの史料を示しながら、さらには造船現場や客船を運航した人たちの視点も交えて、いまや笑い話のような逸話、想像を超える苦難の道中の数々を紹介する。

決死の覚悟で乗船した時代から150年後の現在、客船は最新テクノロジーで操舵され、長い日数を退屈させないイベントも用意されていて、まるで高級ホテルで移動するようだ。
著者が長年をかけて収集した珍しい図版140点が、まだ見ぬ海外への往時の旅情をかき立てる。

目次

はじめに
「洋行」という言葉が生きていた時代/福沢諭吉が書いた「船中の模様」/華やかな出港のなかの孤独と別離/にぎやかな出港を演出したお別れのテープ/大揺れの船で発見した耐震壁理論/人生の幕開けを飾ってくれた船旅/外国人との交流で気づかされたこと/近代文学に新しい流れをつくった日本郵船型/階級社会の縮図をみて決意する/片道の航海で終わる人々

序 タイタニック号、いまだ色褪せず
忘れられない悲劇/深海探査装置から送られてきた衝撃映像/海底に散乱するタイタニック号のはらわた/超大型客船で他社を圧倒するWSL/紳士的な振る舞いを見せた大富豪/実は安全性を最も重視した船だった?/ただ一人の日本人乗客が残した手記/石炭庫の火災という「新たな真実」/沈没を早めた?隔壁の歪み/氷山よりも燃料不足の立ち往生を恐れた?

第1話 船の旅、苦しみから楽しみへ
船酔いに苦しんだ歴史上の知名士/船に弱い者同士、同病相憐れむ/船に強い人を見て腹を立てた昆虫学者/酔い止めの薬で救われた野上弥生子/船上の食事に閉口した幕末の留学生/口に合わない食べ物でも威厳を崩さず/無聊に苦しめられた永井荷風/船旅をすると寿命が延びるという人も/船上から見える家々の小さな明かり/船旅の魅力が詰まった瀬戸内海航路/「人は船の旅のたのしさを忘れてゐる。」/船で日本を離れる者の感傷「さらば祖国よ」

第2話 礼儀作法と社交の振る舞い
乗船時の注意あれこれ/多額のチップを手渡してしまう日本人/見栄っ張りの人が周囲に迷惑をかける/チップを先に渡す人、ごまかす人/日本船なのに、なぜ西洋の風習に倣うのか/服装を整えるのは自尊心のため/欧米人の振る舞いに感心した日本人/人生を方向づけてくれた言葉を得て/チャプリンとコクトーの出会い/句会を開いたり、議論を戦わせたり/競売で寄付金を集める慈善活動も/船の上も「旅は道づれ、世は情け」

第3話 「風俗画報」の日本郵船特集号を読む
汽船からの眺めは絵画のようだ/パリの花を詠み、ロンドンの月に嘯く/今日の旅客船は海に浮かぶ一大旅館/当時は外国人船長も少なくなかった/無事到着できれば、一等も三等も同じ/家族や知人に「一片の雁信」を書き送るべし/一等食堂は華麗なる人々の祭典/豚の点眼に、タンサンとシガレット競走/舟遊の快や、実に甲板運動場裡にあり

第4話 豪華客船の第一号、天洋丸出航
歓声に沸き立つ横浜港/客船史を飾る出来事が相次ぐ明治末期/内航は過去のもの、舞台は海外だ/巨船の注文にたじろいだ造船所/欧米の水準に最も近づいた客船/一等船客の外国人を自邸に招いて茶会を開く/「豪華の夢破れて 海の女王空し」/船旅は軽やかなジャズのリズムとともに/豪華客船は音楽も最先端を走っていた

第5話 「優秀客船」とは何か
科学と文化と芸術の結晶/全長が東京駅に匹敵したマジェスティック号/一等大食堂の天井高は九メートル超/ブルーリボンの獲得競争/世界を圧倒するドイツの最優秀船/ドイツ船を手放しで褒める日本人/法学者・高柳賢三のブレーメン号印象記/乗船して感じた階級社会と重大事件/日本でも相次いで優秀客船を建造/客船の規模は市場の規模に比例

ほか

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ようはん

21
明治から昭和初期ぐらいの時期の話ではあるけど一生に一度は豪華客船に乗って旅してみたいと強く思わされる。流石にタイタニック号みたいに沈んだり船酔いにのたうち回るのは避けたいが。 2023/01/18

RYOyan

8
船旅が贅沢なのは昔も今も変わらないけど、飛行機がまだ客を乗せて飛ぶ前の時代は、海外渡航するには船に乗るしかないわけで、歴史に残る著名人が船でどんなふうに過ごしていたか、当時の雰囲気に触れることができたのは面白かった。色々な世間のしがらみを一旦切って、世界へ旅立っていった重みが伝わってくる。2024/01/15

takao

2
ふむ2022/12/28

Go Extreme

2
「洋行」という言葉が生きていた時代 タイタニック号、いまだ色褪せず 船の旅、苦しみから楽しみへ 礼儀作法と社交の振る舞い 「風俗画報」の日本郵船特集号を読む 豪華客船の第一号、天洋丸出航 「優秀客船」とは何か 覇を競う二人の女王の物語 乗客の最大の楽しみは食事だった 客船だからこそのおもてなし ゲーテも夢想した二大運河を通航 旅情の波間を進む連絡船 世界一周という壮大な旅のなかで 悲喜こもごもの移民船 「南洋の島々」という新しい世界へ 活字が伝える船旅の魅力 新型コロナウイルスの感染 常連客の賢い航海術2022/05/24

Yasuhisa Ogura

1
「洋行」という言葉が生きていた時代、飛行機がまだ一般的でなかった時代に客船で世界を旅した人々のエピソードを文献をもとに紹介したもの。当時、豪華客船で世界を旅できたのは限られた人々だったことから、数多くの著名人が登場する。やはり船旅では、料理が重視されていたという。ホテル・リッツがレストランを監修した船もあったという。そして、船内では「階級意識」がいたる所で感じられるのも時代なのだろう。しかし、タイタニック号のような夢のような空間は、今となっては文献の中にしか存在しえないのだろう。2024/03/15

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