内容説明
長野県三須々市で生まれ育った25歳の善は、薬剤師として市内最大の総合病院で働くことになった。多岐にわたる病院薬剤師として激務をこなす毎日。善には幼い頃から前触れなくこれから起こる事件や事故の模様が見えてしまうという不可解な能力に悩まされていた。ある日、善の脳内に老人が突如苦しみ倒れる状況が見えてしまう。それは紛れもなく、善の働く病院の中だった…。緊迫感溢れる、医療エンターテインメント小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のんちゃん
32
信州の地方都市の総合病院で働く薬剤師の五十嵐善は、子供の頃からこれから起こる事件事故の様子が見えるという特殊能力に悩まされてきた。この病院内でもそれは度々現れた。その特殊能力を駆使して、善がいろんな危機に対応するお仕事小説かと思い読み始めたが、これがなかなかのミステリーだった。と同時に医療者の矜持を感じる小説。どんな時にも諦めない強い意志と冷静さ。改めて医療従事者の皆さんへのありがたみを感じた。登場人物のある医師の言葉、帯にもある様に「医療は天秤の護り役」という言葉の意味がたっぷり詰まった物語だ。2022/10/11
coco夏ko10角
18
今までの安澄加奈さんの作品とはちょっと違う感じ、こういうのも書くなんてすごい。大きな総合病院で働くことになった薬剤師・善の忙しい毎日。病院が舞台の作品は大量にあるけど主人公が薬剤師というのは珍しい。その仕事内容や予徴による選択、そして過去の事件のこと。良かった。ドラマにも向いてそう。2023/09/24
ベローチェのひととき
17
妻から廻ってきた本。主人公の善は生まれ育った信州の地方都市の総合病院で薬剤師として働いている。善には子供の頃から、これから起こる事件や事故の様子が見えてしまうという不可解な能力を持っている。その能力に悩まされながら勤務先の先輩である朝希と共に15年前に起こった悲しい事件の真相を調べ始める… 医療関係者の大変さがよくわかる内容であった。2022/10/30
秀玉
14
一気に読んだ、読まなければと思った小説はひさしぶり、図書館の魔女、ジェノサイド以来か。プロットがというより、描き方が、構成がうまい。読まずにいられなかった。先を争うような内容ではないが、読まずにいられなかった。ほんの少し先の死を見られる青年と優秀な薬剤師の女性の物語。書き方によっては、つまらない小説になるだろう。そもそも少し先の死が見えるっていう設定が胡散臭いものね。だが、この小説は全体のスジ立て+先を匂わせる書き方に秀でたものがある。読み終えて心に刻まれる小説ではない、もう一度読みかえすこともないがね。2024/08/27
Jmama
7
善良で最善を尽くす男、善。死に瀕する人の未来が見える特殊能力を持つがゆえに、最善を尽くせなかった時の打撃も大きい。代々歴史的な出来事を体験してきた家系の遺伝子が進化した結果?。周囲に理解してくれそうな人が複数いるのが救いかな。2022/09/13