内容説明
誰もが知る「聯合艦隊」初の通史。
東郷平八郎や山本五十六ら聯合艦隊司令長官は、ともすると海軍大臣よりも一般に名の通った存在である。
では、聯合艦隊とはどのような「組織」で、どのような役割を果たしていたのか。
本書は、本来、戦時や演習時に必要に応じて編成される臨時の組織に過ぎなかった聯合艦隊が平時に常設されるようになり、海軍の象徴として政治的にも大きな存在となりながら、次第に戦争の現場に合致しない組織となっていく過程を、鍵となる司令長官の事例を軸に説き起こす。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
97
渡部昇一『ドイツ参謀本部』と似た組織論として読んだ。それぞれ発足時は大して注目されなかったのが普仏戦争と日露戦争で比類ない功績をあげ、その指揮官は英雄として長く尊敬された。結果、組織は常勝無謬の神話を帯びて軍の象徴と化し、後継者は時代に即した変革より栄光と権威を利用した維持拡大に努めるようになる。自分たちの利益を最優先する姿勢から政治や外交と衝突したり、内部でも派閥抗争を起こすなど変われない故の組織の劣化を招いたのだ。硬直化で現実対応能力を失って敗戦と消滅に至る姿は、ソ連崩壊とも共通する官僚組織の脆さか。2022/06/29
六点
86
帯に「海の関東軍」とある通り、伝統を墨守し、ついには祖国の敗北を招いた帝国海軍の一組織である聯合艦隊の歴史を見て、エリートである彼らが何故に前記の如き事態を招いたかを描き出して余りない。現場ばかりに責任を押し付け、上に甘い組織なんてどこにでもあるが、90年代生まれの著者にしてなおも聯合艦隊を貶める意図は無いと記ような言語空間であるらしい。日本という国は。2024/04/15
skunk_c
74
若い研究者による聯合艦隊の歴史をまとめた本。特に1941年以降の戦争の時期に、陸軍や軍令部と対立していく様子が興味深かった。従来の「輸送船を沈めるなんて面白くない」的な視点だけではなく、海軍において聯合艦隊がある種の独立した指揮権を持っていたため、陸軍と協調しようと努力していた海軍軍令部と衝突する。著者はこれを「一現地軍に過ぎないものの独走」として関東軍になぞらえているが面白い視点だ。ただし、真珠湾攻撃以来カリスマ化した山本五十六の聯合艦隊への評価が、その後にどんな影響を与えたかは記されていないのが残念。2022/10/23
樋口佳之
60
陸軍でいうと陸軍大臣/参謀総長/教育総監となるのに比して、海軍の要職となると海軍大臣/軍令部総長/連合艦隊司令長官みたいなので、連合艦隊の位置付けはたしかに奇妙。その連合艦隊(司令長官)を軸に描くお話/「海の関東軍」という惹句が効いていると思うのですが、制度上の歪みから言うとそれを超えるかも/「末次氏ハ其ノ謹厳サウナ顔付ト、落チ付イタ態度弁舌ト断定的ナ美辞麗句トニ依ッテ、上下ノ信頼・輿望ヲ獲得スルニ或ル程度成功シテ居タ如ク思ハレル」(堀悌吉)。クリアカットなお話をする方には要注意だな。2022/10/29
鐵太郎
27
さながら「海の関東軍」──というオビの煽り言葉に目を引かれ、一読。太平洋戦争において、聯合海軍はどのような存在だったのか、どのように海の戦いを主導したのかを描き出したもので、著者の博士論文を元にまとめた歴史論なのだそうな。『誕生』『成長』『栄光と没落』そして終章『海の「関東軍」』の四つの章にまとめられてます。最初の二章は目新しくなかったのですが、後半はユニーク。軍令部に対して屋上屋を架すような組織形態と身勝手な軍事的暴走、小さな司令部で大部隊を組織しようとする無理。なるほど、関東軍とは言い得て妙か。2025/11/16
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