内容説明
焔を囲んだ人達が、それぞれの身に起こったことを語り出す――。近隣諸国と武力衝突の危険性が高まるなか、人々が“あること”を始める「ピンク」。突然泣き出してしまう“謎の病”が大流行する「眼魚」。南米やアフリカなど各地から集まった力士が頂点をめざす「世界大角力共和国杯」。祈りや驚嘆、希望など様々な思いを込めて語られた九つの物語は、最後に大きく燃え上がる。谷崎潤一郎賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
45
夢の中を彷徨うような短編集でした。様々な感情で紡がれた物語は最後に焔のように燃え上がる。それだけの熱量が秘められているのでしょうね。面白かったです。2024/07/13
おいしゃん
29
谷崎潤一郎賞作品。とにかく不思議な作品。キャンプファイアを囲みながら不気味な小噺を語り、一人ずついなくなる…というような内容。それぞれの語る内容も、人からカラスになったり、お金になったり…存分にカオスを楽しめた。2022/06/22
みこ
26
初読みの作家。炎を囲む男女が自分の話をすると消えていく。不思議な世界観。その話の内容もオカルトのようなホラーのような非現実性が強い。得体のしれない天変地異で世情が不安定になったり、民族意識が高まって人々が排他的になったりとここ最近の世界情勢を反映しているかのようだが、発表が2018年とコロナ前のようなので作者の慧眼がむしろそら恐ろしく感じてしまった。2022/07/05
ちぇけら
15
あたりを見渡すと、象徴としての救済はいたるところで俺たちに手を伸ばされるのを待っている。冷を取るため自ら回転する人びと、ところ構わず泣いてしまう急性落涙症候群にかかりやがて眼になっていく人びと、カラスになったひと、地球になるために大地に溶け込んでいくひと。べつのなにかへとうつり身をとげること、それが生きていくことであり、俺たちは物語ることでそれが実現できる。ことばを発する。それが物語になっていく。俺はその物語に出てくるカラスであり焔であり地球だ。俺は俺でありあなただ。そう気づいて俺は、物語に救済される。2022/10/23
ヨノスケ
14
不思議な感覚の短編小説である。「きっと感じたことをストレートに表現しているんだな」と思った。であるから、読み進めると、どこへ連れて行かれるのか分からなくなってきて、置いて行かれそうで不安になってくる。この中では【人間バンク】が唯一ついていけた作品であった。あとは幻想の中を彷徨っているといった感覚。星野さん、私と同年代の作家さんとは思えないほど感覚に違いがあり、その深い想像力に驚かされた。2022/07/23