内容説明
西洋文明との出会いという衝撃により伝統文化が危機に瀕した明治日本。そんななか雑誌ホトトギスを舞台に、「写生」という新たな手法を創出、俳句と短歌に革命をもたらした子規。国民的文芸の域にまで高らしめ、俳句は今や世界的存在となった。幼時の火事体験からベースボールへの熱狂、漱石との交友、蕪村の再発見、そして晩年の過酷な闘病生活までを綿密に追った日本人必読の決定的評伝。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ペグ
65
「葉桜や 昔の人と立咄」好きな句です。人々が愛でる花が散り葉だけになった桜。散策の途中で出会った昔の人とは?下宿先でほのかに恋心を抱いた娘さんでしょうか?そんなに長くはお話ししていない雰囲気が漂います。けれど心の中には甘酸っぱい思いだけが残る。そんなことなど想像します。この本は本当に読んで良かった。ドナルド・キーン先生も素晴らしい!2023/03/04
ころこ
50
それまで、例えば俳句で自分の感情を伝えることのいかに稀であったか。着想や言い回しの巧妙さに力を入れるあまり感情は無視しがちになる。巧妙さが感情から切り離された途端に表現は退屈になる。子規がなぜ写生にこだわったのか。ここには小説における自然主義と同じ問題意識が垣間みえる。子規は小説も書き、露伴の後ろ盾を得ようとしたが、その才能は無かった。詩歌は文末の処理を考える必要が無いため、その点は言文一致の問題は回避できた。漱石との交友はふたりの気質の違いだけが際立つ。英国に留学して分裂した意識を持ち帰り、時代を先取り2025/06/09
pirokichi
26
とてもよかった!俳句と短歌に革命をもたらした正岡子規の評伝。弟子による子規への批判を以てしても、子規はますます魅力ある人物だった。子規が「汚穢山の如き中より一もとの花を摘み来りて清香を南風に散ずれば人皆其香に酔ふて泥の如し」と讃えた樋口一葉の『たけくらべ』と、「而して世人は俊頼と文雄を知りて、曙覧の名だに之を知らざるなり」とした橘曙覧の短歌を読みたくなった。本書はドナルド・キーン氏が英文で書いたものの和訳。子規の文章については現代語訳でも記されているので、読みやすい。2022/06/15
藤井宏
12
結核・脊椎カリエスのため30数年の短い生涯を終えた子規。「新しい時代にふさわしい文学表現は何か?」を追求し、当時の俳句、短歌の問題点を明らかにし、これらの詩歌にあたらしい息吹を吹き込んだ。ヨーロッパの絵画における印象派の登場と比べると、詩歌の変化についてすべてを理解することは難しかったが、なんとなく彼が目指したもののさわりは理解できたかな。彼の父親はアル中で早死にしたが、そこは士族階級出身。小さい頃から漢詩、漢文をたしなみ、英語の原著を読みこなす。2024/01/19
voyager2
5
子規について書かれた論考は多いが外国人のものは少ない。引用部分に付された翻訳は日本人には不要な部分のような気もするが「現代人」にはそうもいかないのでやはり必要か・・2024/08/30
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