内容説明
日本史の授業でいちばん教えにくいと言われる荘園。時代や場所により性質が様々で、関わり人々の利害関係が複雑なことがその理由だろう。しかし、古代から中世にいたるまで特産物によって日本の経済を支え、王家・摂関家を頂点とする重層的な社会構造を生み出したのは荘園に他ならない。加えて武士の発生や源平の争乱も荘園の支配権争いに端を発する。この制度を把握できなければ日本の歴史を真に理解することは出来ないだろう。本書はそんな荘園の実態を、荘園に生きた人々のドラマを通じて具体的に描いた画期的な入門書。この本を読めば荘園が面白い存在に見えてくる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
南北
44
日本史の中でも理解しにくい荘園を平安時代から室町時代まで具体的な個人を取り上げながら描き出している。荘園とは国家が認めた私的土地所有で、貴族や官寺・官社の所有するものを指すようだ。中世以後、年貢が官物・公事などと言われたり、農業に従事する百姓も自分たちのことを「御百姓」と呼ぶなど興味深い内容が多かった。冒頭の概観は全体のまとめとも言えるところなので、最後に読んだ方が良いかもしれない。惣村についても少し見えてきたので、もう少し別の本も読んでみようと思う。2023/02/03
翠埜もぐら
18
まず初期の荘園は人とセットではなかったというのが目から鱗。開墾請負人が人を引き連れてやってきて、うまくいかなかったら逃げちゃうとか。未だ荘園の実態が今一つ解からないのですが、700年に渡る成立から解体まで、形態や構成員が大きく変化し続けたものだというのはかろうじて理解できました。中世後期には構成員である「百姓」自らの荘園の運営と、収奪する側の荘園領主の関係がとても生々しく、また収奪側の多重構造と百姓の中にも上下構造があって、いや、結局混乱して終わってしまった感じだわ。近々再読しないと。2024/03/25
nagoyan
15
優。1978年教育社歴史新書から刊行されたものがちくま学芸文庫から再刊されたもの。本書冒頭の「概観」は著者の荘園研究の大要。荘園は、長い歴史を持つ。律令国家の一部であり国衙機構の支持がなければ存在しえなかった初期荘園。不輸不入なんてない。延久荘園整理令以後、本所のもとに集中、国衙から独立する古典荘園。室町期から、貨幣経済、生産力の向上を背景に、百姓の力が増大。武家領と荘園の相克。戦国期は、惣村。荘園は大きく変質していく。その時代時代に、実際に荘園に住んだ人々の記録を追う。立派な人も、そうでない人も。2022/01/20
akiakki
14
古代から中世惣村の形成まで荘園の中で生きる人々に着目している。意外なことに農民は土地に縛られておらず平気で離散逃亡を行うし、体制上の支配者である地頭などに別の権威をバックにつけて対抗したりもしていたようだ。惣村という土着の社会が形成される歴史からその舞台となった荘園システムを読み解く本という印象を受けた。最後に参考文献を寸評付きで紹介しているのが珍しい。2023/11/13
bapaksejahtera
13
中世村落については、社寺権門による開発農地を先駆とする荘園が、史料の豊富さから中心とならざるを得ぬ。律令以来水源、農地面積や生産力の上で荘園を上回る国衙領こそ、本来知りたい処である。本書では仏閣造成や仏事に必要な木材や灯油等確保の為住み着いた工人の自作農地をきっかけに出作請負によって農地拡大を図った東大寺の初期荘園を手始めに、以降惣村と呼ばれる自治的村落形成迄を、具体的な人の動きを元に述べ、荘園の変遷を読者に理解させる。著者の時代的性格から史的唯物論臭が強く、かつ用語説明はないに等しいが良書の名に背かぬ。2023/09/17
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