雌犬

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雌犬

  • 著者名:ピラール・キンタナ【著】/村岡直子【訳】
  • 価格 ¥2,534(本体¥2,304)
  • 国書刊行会(2022/04発売)
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  • ポイント 690pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784336073174

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内容説明

これはわたしの犬《むすめ》。
もし何かしたら、殺してやる。

この世から忘れ去られた海辺の寒村。子どもをあきらめたひとりの女が、もらい受けた一匹の雌犬を娘の代わりに溺愛することから、奇妙で濃密な愛憎劇《トロピカル・ゴシック》が幕を開ける……
人間と自然の愛と暴力を無駄のない文体で容赦なく描き切り、世界15か国以上で翻訳され物議をかもしたスペイン語圏屈指の実力派作家による問題作が、ついに邦訳!!

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

どんぐり

93
コロンビアの女性作家キンタナの小説。海とジャングルに囲まれた寒村で漁師の夫と別荘の管理をしているダマリスは、妊娠適齢年齢を終えようとしている。子どもができないなか、雌の子犬を譲り受け、我が子のように溺愛する。成犬となったある日、雌犬が数日山に脱走したあとに孕み、母犬となる。雌犬は子犬にとって最悪な母親だった。産んだ4匹のうち1匹を食べてしまい、残り3匹を放置し、授乳させるのはダマリスの役割になった。ダマリスの雌犬に対する愛情はここから憎悪へと反転していく。家から脱走して再び孕んだ雌犬との対決が面白い。2023/07/22

藤月はな(灯れ松明の火)

75
インフラが整っていないコロンビア。いつ、戻るか分からない主人の為に今にも朽ちそうな別荘を維持しながら住むダリマス夫妻には子がいない。彼女は一匹の雌犬に愛情を注ぐが、その姿は私には不気味に思えた。まるで犬に自分が掛けた愛以上の愛を返すように期待するような重苦しさを感じたから。だが雌犬は仔を孕みながらも育児を放棄するのだ。その姿をダリマスは憎む。しかし、雌犬は「犬」という性を生きていただけなのだ。彼女は「母性を持たない女」という神聖視される「女」像を覆すが、埋もれていただけの現実を突き付けられ、惑乱する。2022/09/20

HANA

72
子供が欲しくてもできなかった女性が、一匹の雌犬を飼う事となって…。ストーリーこそ単純だけど、全編にこうなんというか、やるせなさみたいな物に覆われて読み進めるのがなかなかにきつい。主人公の雌犬に対してある時期を境にその愛憎が変化していく感情の描写は、一見身勝手だけどその底には誰もが持つような感情があるため、一層やるせなさが募る。救いがあるようで決して救いは無いのね。そう考えると雌犬に名前はあるものの、作中ほとんど「雌犬」と呼ばれているのは暗示的だなあ。個人的にはやはり、こういう形で犬と関わるのは苦手。2022/08/26

ゆのん

66
舞台はコロンビア。ジャングルと海があり、買い物一つも船で行かなければならない。生活も貧しい。そんな場所で主人公の女性は子供が出来ず雌犬を飼う事に。我が子の様に溺愛するが、ある事を境に雌犬に対する気持ちが変化してゆく。残酷とも思える行動を取りながらも心の隅には罪悪感や寂しさも感じる。決して好きにはなれない主人公ではあるが、その気持ちの変化は否定しきれないものがある。2022/04/02

ヘラジカ

45
サイコホラー的な作品を想像していたが、そこまでサスペンスを感じさせる描写はなく、むしろダマリスの感情は全体の空気に溶け出さないよう意図的に抑えているとも読める。雌犬との交流と顛末を描いたメインのシナリオは非常にシンプルで、だからこそ様々な読み解き方が出来そうでもある。「母と子」から、「女と女」、更には「持てる者と持たざる者」へと変化していく関係性は、最後の1ページに取った行動にどんな影響を与えているのだろうか。独特なムードというかオーラを持った南米文学だった。2022/04/28

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