内容説明
まわり道しなければ、たどり着けない場所がある――。
若き日の著者の、人生を決めた旅立ちの物語。読んだ人に深い感動と変化をもたらした話題の書。
第七回梅棹忠夫・山と探検文学賞受賞作。
大学4年のある日、オオカミの夢を見た。自然写真家を目指していた著者は、導かれるように1冊のオオカミの写真集と出会う。「ダメもとくらいの挑戦をしないと、人生は面白くない」と語る著者は、その世界的な写真家ジム・ブランデンバーグに弟子入りを直接志願するため、単身アメリカに旅立つ。
ミネソタ州北部に広がる森と湖の世界「ノースウッズ」の入り口へたどり着き、ジムの家がその先にあると突き止めると、カヤックにキャンプ道具を積み込み、水上の旅へ。深い北国の森と無数の湖、様々な野生動物との出会い。8日間の旅の末にたどり着いた場所で、ついにジムとの対面を果たすが――。
臨場感あふれる自然描写、不安に揺れ動く心情を正直に素直に描く、著者のかざらない姿に、いつしか共感し励まされる。自分の足で歩き、自分の目で見て、人と出会うことの大切さを教えてくれる、人生の羅針盤となりうる一冊。
著者による「文庫版あとがき」追補。
解説:松家仁之(小説家)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Sam
50
確たる旅程も決めず、自分が見た夢にインスパイアされて一人で旅に出た若き日の著者。行き先は米国とカナダに横たわる広大な自然の地、ノースウッズ。昼はカヤックで湖を渡り夜はキャンプして過ごす日々が前半で、目的地に辿り着き憧れの写真家ジム・ブランデンバーグを訪ねてからの経験が後半で語られる。見ず知らずの異国の若者を温かく受け入れる人々の懐の広さや、著者が日々向き合った自然の素晴らしさや恐ろしさが強く印象に残った。自分の会社勤め一筋の人生には少しの悔いもないけど、こんな得難い経験ができるなんて本当に羨ましい。良書。2023/11/22
@nk
45
大学での経験が、自然写真家になるという決意となり、当時24歳の著者は憧れた写真家を訪ねるべく北米 NorthWoods へ向かう。その3ヶ月間の旅で得た邂逅は今も尚、彼の前進を途絶えさせぬ糧となっているように思う。旅立ちの荒削りな豪快さとは対照的に、大自然を綴る精緻な描写に感じるのは、星野道夫でありレイチェル・カーソン、そしてトーマス・カーライル。まずは踏み出すこと、目と心(と予定)をopenでいること、憧れ続けるのではなく自分の道をみつけること等々、濃密で示唆に富む壮絶な物語だった。2023/02/14
うた
19
大竹さんの初写真集『ノースウッズ』をテレビで見かけたとき、一目でいい仕事だと気になり購入。今も時折眺めて楽しんでいる。ノースウッズでの旅と日々は、初々しくも思い切りがよく、また出会った人々への感謝に満ちており、清々しい気持ちさせられる。飾りのない言葉で自然へと誘い出してくれる。週末にカメラを担いで出かけたくなってきた。2022/05/25
もっちー
7
旅がしたくなる、そして夢や目標に向かって頑張りたくなる、そんな本でした。筆者の情熱や行動力が凄すぎる。レイチェル・カーソンやトーマス・カーライルなど、様々な著名のことばの引用があり心に刺さりました。結果は「出る」ものであって、「出す」ものではない。いまの自分ならほんの少しですがわかるような気がします。近道や効率よりも遠回りや寄り道することが大事。人生迷走中の自分にとって少し前向きな気持ちになりました。2022/12/05
ぱせり
7
道中の数々のよき出会いが著者の夢を後押ししてくれる。道がないと途方にくれたときに力を貸してくれた人々の思い出がこちらをあたためてくれる。人々の温かさは、逆に言えば著者自身の誠実さによるものでもあったことだろう。ジム・ブランデンバーグを探す旅が、思いがけない出会いに繋がるさまに、わくわくする。2022/08/28