講談社学術文庫<br> ベルクソンの哲学 生成する実在の肯定

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講談社学術文庫
ベルクソンの哲学 生成する実在の肯定

  • ISBN:9784065281567

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内容説明

「生の哲学」を提唱しノーベル文学賞を受賞した、フランスを代表する哲学者、アンリ・ベルクソン(1859-1941年)。彼は、伝統的な哲学を根本的に批判し、転覆させた特異な存在です。
その影響は、20世紀の名だたる哲学者たち、ハイデガー、ウィリアム・ジェームズ、サルトル、レヴィナス、メルロ=ポンティ、デリダ、西田幾多郎など、多方面に及びます。そして何より、生成のリアリティーを巡る思考の原理を徹底させ、ベルクソンを蘇らせたのが、ジル・ドゥルーズでした。
本書は、ドゥルーズのすぐれた読解に身を寄せながら、ベルクソンの主著を丹念にたどり、その核心を浮かび上がらせます。同時に、ドゥルーズ自身の哲学の出発点ともなった、斬新で独創的なベルクソン解釈を提示してもいます。
ベルクソンにとって実在とは、持続とは何か。どのようにして、直観によって本質的な差異を見出すのか。他者のない、否定性のない、そして外との弁証法的な統合もない哲学とは、どのようなアイデアなのか。
著者によるベルクソンの現代思想における位置づけ、主要著作を通した整理、これ以上なくクリアで精密な解読は、ベルクソンに取り組もうとする読者にとって、最良のガイドとなるでしょう。解説には、『物質と記憶』の訳者である杉山直樹氏の書き下ろし原稿を収録しました。

[本書の内容]
学術文庫版まえがき
序 論 ベルクソンの哲学とその位置
第一章 連続的で異質的な特徴――『試論』について
第二章 知覚の機構と実在する過去――『物質と記憶』について
  1 純粋知覚について
  2 記憶と認識の機制
  3 記憶の即自存在とその心理的な働き
  4 持続の存在論
第三章 分散する一者としての生命――『創造的進化』について
第四章 持続の一元論/結晶と層――ベルクソンの存在論について
あとがき
解説 杉山直樹
ベルクソン関連略年表

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

しゅん

14
ベルクソン論であると同時にベルクソンを読むドゥルーズ論。フッサール~ハイデガー以降の現象学徒にとってベルクソンはすでに乗り越えられた遺物だった。その認識を反転させたのがドゥルーズ。実在を正確に認識するために、すべてを動的に描き出す哲学。運動に忠実であるがために、ベルクソンは量化できない質的差異を強調し、変化の可能性を常にもった潜在性を物に見出す。「差異」「潜在性」はドゥルーズ哲学のキー概念としても知られる。認識論における二元性と存在論における一元性の両立が本書のポイントだろうが、まだ整理できていない。2023/05/12

koke

14
進化や相対性理論が論じられるところで挫けそうになったが、ベルクソン哲学の二つの次元を分けて説明していくスタイルは明快でよかった(認識論と存在論、差異化と統合)。ただ解説にもあるように、この方法からは「一にして全」なる存在というヤバそうな結論が導かれる。『動きすぎてはいけない』で言われていたのはこういうことか。2022/11/14

yanagihara hiroki

7
ベルクソンの主著はだいたい読んだが、ベルクソン研究者の本は一冊も読んでいないので、その勉強の一つとして。ベルクソン読者にはわかりやすかったが、しかしこの本をベルクソンを読んでない人が読んでわかるのか、という問題もあるように思う。ドゥルーズによるベルクソンの再評価の流れがとてもよく分かる一冊。ベルクソンの主張というのは多岐にわたりすぎるのと壮大すぎて、ある意味検証のしようのない「妄想」でしかない。ただその「妄想」は我々に様々な面でradicalな示唆を与えてくれる「妄想」でもある。それが伝わる本だと思う。2022/10/04

ゆきだるま

5
現実側のイマージュと、認識する側のイマージュは同じもの、程度の違い。記憶(過去)と現在との関係も同じような構図。あと、とにかくすべては流れ。現実も生命も。そして最終的にはすべて一に集約される、などと、基本のイメージを(イメージできないということも含めてのイメージを、、)作ってくれた上で説明を展開してくれて、おぼろげながらもしっくりくるものがあった。あとがきにあるようにファンタジックといわれたらそうなのかなあ、だけど、一つ一つの生物を大きな一つの流れと捉えるのはなんとなく自分が思い描いてたことと重なるな。2023/04/30

wengou802

3
「生命体とは、知覚世界の側から発せられてくる多様な光を浴びながらそこに屈折を生じさせ、いくつかのラインを消滅させつつ生命体にとって有効な事態を弁別していく働きとして描かれる」(p.19)。このイメージが助けになった。 以下は特に印象に残った点。 実在は、現れの断片から構成される潜在的なもの。自己根拠的であることの裏返したる無根拠さへの諦観こそが、自由。 生きること、流れの屈折装置として在ることは、流れへの吸収に抗して自己を維持すると同時に、変わり続ける流れの一部としてある瞬間の自己を解体することである。2022/09/14

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