内容説明
なにが青春だ。どいつもこいつも、恋だの部活だの遊びだの、楽しそうにしやがって。
俺には友達もいない。恋人もいない。部活にだって入ってない。青春なんて無縁だ。
だけど、それのなにが悪いんだ!?
そんなくだらないものをありがたがっている奴らも、俺を見下すような奴らも、全員くそだっ。
そう思っていた。彼女に出会うまでは。
誰もいない昇降口。壊れた下駄箱。汚れた階段。床が抜けそうな木張りの廊下。
そんな古びた旧校舎の三階の一番奥に、秘密の部屋があった。
黒い三角帽子とローブを身に着けた冥先輩は、床に魔方陣を描き、黒魔術で人を呪うことに余念がない。耳にかかる艷やかな髪をかきあげ、海のように澄んだ大きな瞳で、はにかみながら彼女は俺に言う。
「呪っちゃうからね」
空が青く澄みわたり、桜舞う春。
入学したばかりの高校で出会った彼女の笑顔を、大人になった今も俺は忘れられない。
聖女と崇められる先輩と出会ったことで、かけがえのない青春を送ることになる、ある高校生の物語――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
オセロ
32
事なかれ主義で孤独を愛する上賀茂京四郎、黒魔術を極めようとするポンコツ気味な学園の聖女こと沙倉冥、京四郎にある計画を邪魔された頭脳明晰な氷童凛。そんな凸凹な3人組が紡ぐ青春物語。 表向きは人助け、裏では黒魔術の信者を増やす計画を企む冥を、何だかんだ手伝う京四郎と凛の3人のコミカルなやり取りが繰り広げられる中で、突然冥の身に起きたハプニング。そんな冥の為に京四郎が起こした行動にはグッとくるものがあって、単巻でも満足ですけど出来れば続きを読みたいですね。2022/05/10
わたー
30
★★★★★空気のように生きることを標榜する主人公が、学園の聖女と呼ばれるも、黒魔術に傾倒する先輩と出会うことから始まる学園ラブコメ。著者の久しぶりの電撃文庫での新作は、2010年代の謎部活モノの雰囲気を持った、どこか懐かしさすら感じるような作品で非常に良かった。魅力的なキャラで前半をさらっと読ませて、ラストにはとびきり熱い展開を。教科書通りといってしまえばそれまでだが、こういうのがいいんだよと声を大にして言いたい。ただ、1点、物語の展開上、必要なこととはいえ、彼女が受けた処分は重すぎる気がする。2022/05/12
まっさん
28
★★☆ 序盤から中盤にかけてはなかなか楽しめましたが、後半から終盤にかけては正直そこまでピンとくるものはありませんでした。 中盤までは、よく見る友達もいないいわゆる陰キャ主人公と学園で聖女と持て囃される美少女先輩が送る日常ラブコメ物であり、主人公・ヒロインが良い意味で一昔前の王道キャラクター味を感じさせ、特にヒロインの言動が天然ふわふわ系の典型例でツボにハマりました。 ただ、中盤以降に関しては正直あまりパッとしないというか…プロローグであんな匂わせ展開を描きながら、それらしい伏線がその後描かれなかった→2022/08/24
中性色
17
パプアニューギニア。ラブコメとしての水準レベルにはあると思うけど、黒魔術である必要性があまり感じれないかなという。あと、そういった意味も含めてメインキャラの掘り下げが今後あるならそれに期待か。まぁ、あればの話ではあるんだけど、個人的には凛が好み2022/06/02
rotti619
17
ミッション系の高校に通う、存在感がない事がウリの主人公上賀茂京四郎が聖女と呼ばれる先輩、沙倉冥の黒魔術に興じる所を見てしまった所から始まる謎部活系のお話。ミッション系なのに黒魔術をする先輩、というだけで相当キャラが立っているのに更にぼくっ娘という。この作品は各キャラクターの相関図が上手く出来ていて、京四郎を中心に誰かに問題が起きても必ずカバーできるようになっていた。京四郎自身の影が薄いという特徴は比較的陰自己肯定低めで卑屈になりがちだが、彼は堂々とその特徴を活かして問題解決に導いていたのも好印象だった。2022/05/31