白い鶴よ、翼を貸しておくれ - チベットの愛と戦いの物語

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白い鶴よ、翼を貸しておくれ - チベットの愛と戦いの物語

  • ISBN:9784863854215

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内容説明

亡命チベット人医師が遺したチベット愛と苦難の長編歴史小説

1925年、若きアメリカ人宣教師スティーブンス夫妻は幾多の困難を乗り越え、チベット、ニャロン入りを果たした。現実は厳しく布教は一向に進まなかったが、夫妻は献身的な医療活動を通じて人びとに受け入れられていく。やがて生まれた息子ポールと領主の息子テンガは深い友情で結ばれる。だが、穏やかな日々も長くは続かない。悲劇が引き起こす怨恨。怨恨が引き起こす復讐劇。1950年、新たな支配者の侵攻により、人びとは分断され、緊迫した日々が始まる。ポールもテンガもその荒波の中、人間の尊厳を賭けた戦いに身を投じてゆく。

【著者】
ツェワン・イシェ・ペンバ
チベットのギャンツェ生まれ。医師であり作家。1941年にインドのイギリス式学校に入学して英語を身につけ、1949年にロンドン大学に留学。医学を学び卒業後はブータン、インドなどで外科医として活躍。1957年にチベットで過ごした日々をエッセイに綴った『少年時代のチベット』をロンドンで出版。1966年にはチベット人として初めての長編小説『道中の菩薩たち』を出版。その後創作活動から離れていたが、晩年ようやく実現したチベット旅行をきっかけに『白い鶴よ、翼を貸しておくれ』を執筆後病没。享年79歳。

星泉
1967年千葉県生まれ。東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所・教授。チベット語研究のかたわら、チベットの文学や映画の紹介活動を行っている。訳書にラシャムジャ『雪を待つ』、共訳書にトンドゥプジャ『ここにも躍動する生きた心臓がある』、ペマ・ツェテン『ティメー・クンデンを探して』、タクブンジャ『ハバ犬を育てる話』、ツェラン・トンドゥプ『黒狐の谷』などがある。『チベット文学と映画制作の現在 SERNYA』編集長。

目次

この本について
第1部
第2部
第3部
第4部
第5部
訳者解説

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

榊原 香織

78
面白かった。チベット文学。 中国共産党に支配される前後の時代をアメリカ人宣教師一家を主人公として描く。アメリカ人でありながらチベット人として育つ子供時代、ゲリラとして戦う青年時代ともに魅力的な物語。 表題はダライ・ラマ6世の詩から。 2022/08/01

seacalf

57
タイトルの意味がいい。知られざる東チベットのニャロンを舞台に繰り広げられる誇り高き種族のサーガ。歴史、風俗、宗教、異文化でも受け入れる寛容さやこの世界の美しさが描かれて、読み応えたっぷり。アメリカの宣教師夫婦の冒険譚から始まり、彼らの息子ポールと領主の息子テンガの成長物語と続いていく。とにかく多くのテーマが盛り込まれているのに実に読みやすい。中国共産党の容赦ない侵略は読むのもおぞましい程だが、今なお続くチベット自治区への弾圧、世界各地での内戦、そしてウクライナの問題を改めて喚起させる。読んで良かった。2022/11/28

慧の本箱

26
1932年チベットで生を受け、チベット人として初めて西洋医学を学んで外科医となり、英語によるチベット文学の先駆者でもあるツェワン・イシェ・ペンバ氏の遺作となった本書です。物語は1920年代から60年代までのチベットの激動の時代が描かれています。東チベットのニャロンと言う辺境の土地に布教のために訪れたアメリカの宣教師夫婦。その夫婦の息子とニャロンの領主の息子の出自も性格も人種も全く異なる二人の少年が様々な事件をともに経験しながら、お互いを刺激し合い成長していく様は躍動感に溢れ非常に魅力的で飽きさせません。2022/06/18

みらあ

14
チベットはダライ・ラマ程度しか知識がなかったが、豊かな自然や文化そして苦難の歴史について知ることができた。 1920年代、チベットのニャロンにアメリカ人宣教師夫妻が訪れる。前半はそこで生まれ育つ息子と村での生活が。後半は中国共産党により国が接収されてゆく様子が分かる。故郷を守るために抵抗する戦士や僧兵達。命が尽きるまで読経する僧侶。命がけで亡命する人々。読んでいて胸が痛かった。 作者はチベット出身の外科医で退職後に本作を執筆し遺作となった。2025/06/21

ポテンヒット

14
チベットが舞台の大河小説。叙情的な表題とは裏腹に、荒々しく血なまぐさい描写が多くていつの時代よ?と感じる場面が多いが、続きが気になってハラハラしながら読んだ。チベット族も戦いに次ぐ戦いの歴史があるが、全てをなぎ倒すかのような共産党の侵攻は凄まじい。テンガやサムドゥプ・ダワが言うように、自分の国でどんな思想や宗教を信じようが構わないが、俺たちの場所はそっとしておいてほしい、この思いは香港やウクライナを始め多くの人々に共通する願いだろう。話のその後が気になるが、本書が著者の遺作となっている。2023/01/21

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