内容説明
文字を持たぬ辺境の島に生まれ、異国の師に導かれて書物に耽溺して育った青年は、長じて憧れの帝都に旅立つ。だが航海中、不治の病に冒された娘と出会ったがために、彼の運命は一変する。世界じゅうの書物を収めた巨大な王立図書館のある島で幽閉された彼は、書き記された〈文字〉を奉じる人々と、語り伝える〈声〉を信じる人々の戦いに巻き込まれてゆく――デビュー長編にして世界幻想文学大賞、英国幻想文学大賞、ジョン・W・キャンベル新人賞、クロフォード賞の四冠を制覇した驚異の新人による、書物と言葉をめぐる傑作本格ファンタジイ。/解説=乾石智子
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あたびー
48
なぜこの本の題名を「図書館島」にしたのか?と知人が言っていた。原題は「オロンドリアの異邦人」。図書館のある島はこのサーガの一部でしかない。オロンドリア帝国の海に浮かぶ紅茶諸島。文字を持たない島で生まれ育ったジェヴィックに、胡椒農園主の裕福な父は本土から連れてきた家庭教師をつける。教師に読むことを教えられ彼の世界は広がる。やがて父の死により農園を継ぎ、都へ商売に出る船の上で彼は不治の病に犯された少女と出会う。やがて命を落とした少女は天使(幽霊)となって彼の前に現れる…2023/01/27
優希
36
濃厚なファンタジーでした。文字を持たない島に生まれた青年は、異国の師の影響で本を読むようになり、晴れて異国の地に立つことになりますが、航海中に出会った娘との出会いで運命は一転します。なかなか世界に入っていけなかったのが本音ですが、何とか読み切りました。何冊もの本を読んだような感覚に陥りました。2023/12/08
ゲオルギオ・ハーン
18
長編文学ファンタジーという感じの小説。ファンタジーということで壮大な世界観と文学表現や場面描写の細かさから文量に圧倒される。長編として捉えるには場面転換が急でけっこうしんどいため、連作短編と捉え直して読むと読みやすかった。表現や世界の描き方がとても緻密なので幻想的な雰囲気を味わえた。文字で表現する石の教団と言葉で表現できないものを信奉する天使の教団の争いが背後にあるのは著者のテーマにも読めて興味深い。出来れば訳者あとがきの世界観解説を本編中に差し込んでも良かったと思う。2025/08/22
まさ☆( ^ω^ )♬
15
タイトルと ”世界幻想文学大賞など4冠” の帯の文句に釣られて読んでみました。なんとも難解でした。文字数が多くてかなりの読み応えもありました。しかし一度読んだだけでは全然理解できていないような気がします。読み進めては前の章に戻りを何度か繰り返しながら何とか読了。面白くなくはなかったのですが、こんなにも根気が必要な作品って・・・。しかし、またいつか再読するかも。2022/05/30
topo
10
幾冊もの本を読み、異国を旅した気分。 読みやすくはなく時間が掛かったけど、その時間が愛しくなる。 文字を持たぬ島の民、人生を本に書いてくれと懇願する幽霊。言語を、書物を愛した主人公の試練の旅路を通して見た世界から離れ難い。 作者が作り出した言語に触れられるのもこの作品の魅力のひとつ。 巻末に用語集があるのでそちらを参照しつつ読むのがおすすめ。(物語の半分くらいまで存在に気付かず、たいへんだった…) あと、邦題に引きずられず原題『A stranger in Olondria』を念頭に置いて読んだ方がいいかも2023/04/13