岩波新書<br> 企業と経済を読み解く小説50

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岩波新書
企業と経済を読み解く小説50

  • 著者名:佐高信
  • 価格 ¥946(本体¥860)
  • 岩波書店(2022/04発売)
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  • ISBN:9784004319054

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内容説明

高度経済成長期に登場した経済小説は,疑獄事件や巨大企業の不正など,多種多様なテーマを描き続けてきた.城山三郎『小説日本銀行』,石川達三『金環蝕』,松本清張『空の城』など,戦後日本社会の深層を描いた古典的名作から,二〇一〇年代に刊行されたものまで,著者ならではの幅広い選書によるブックガイド.

目次

はじめに┴Ⅰ 巨悪の実態┴──原発利権┴1 「原子力マフィア」の形成── 『原子力戦争』田原総一朗著┴2 なぜ東電は潰れないのか── 『ザ・原発所長』黒木亮著┴3 現役官僚による告発── 『原発ホワイトアウト』若杉冽著┴4 電力の鬼と呼ばれた男── 『まかり通る』小島直記著┴──政財界の裏側┴5 戦後最大級の疑獄事件── 『小説佐川疑獄』大下英治著┴6 ロッキード事件の利益構造── 『金色の翼』本所次郎著┴7 財界の総本山に迫る── 『小説経団連』秋元秀雄著┴8 銀行に銀行を食わせる── 『戦略合併』広瀬仁紀著┴9 使途不明金の明細書── 『小説談合』清岡久司著┴10 汚職事件の曼荼羅図── 『金環蝕』石川達三著┴11 インドネシア賠償需要の闇── 『生 贄』梶山季之著┴12 新興財閥と軍部の利権── 『戦争と人間』五味川純平著┴Ⅱ 増大する資本と欲望┴──巨大資本をめぐる┴13 外資系投資銀行の内幕── 『小説ヘッジファンド』幸田真音著┴14 イケニエを決めたのは誰か── 『ハゲタカ』真山仁著┴15 大口融資規制の暗闘── 『頭取敗れたり』笹子勝哉著┴16 「物価の番人」の挫折── 『小説日本銀行』城山三郎著┴17 予算編成の駆け引き── 『小説大蔵省』江波戸哲夫著┴18 旧財閥に残る気風── 『果つる底なき』池井戸潤著┴19 金融帝国のルーツ── 『ザ・ロスチャイルド』渋井真帆著┴20 日本人発行のルーブル札── 『ピコラエヴィッチ紙幣』熊谷敬太郎著┴──欲望のゆくえ┴21 触れてはいけない魔法のランプ── 『小説総会屋』三好徹著┴22 「狙って潰せない会社はない」── 『虚業集団』清水一行著┴23 ある闇金融の挫折── 『白昼の死角』高木彬光著┴24 ローン破産という公害── 『火車』宮部みゆき著┴Ⅲ 会社国家ニッポンのゆがみ┴──企業のモラルを問う┴25 会社は誰のものか── 『トヨトミの野望』梶山三郎著┴26 消費者vs経営者── 『大阪立身』邦光史郎著┴27 経済大国の原罪── 『19階日本横丁』堀田善衞著┴28 未知の商戦と孤独── 『忘れられたオフィス』植田草介著┴29 日本人であること── 『炎熱商人』深田祐介著┴30 取引先の破綻と回収── 『商社審査部25時』高任和夫著┴31 安宅産業の消滅── 『空の城』松本清張著┴32 「水潟病」の原因究明── 『海の牙』水上勉著┴──業界の深奥┴33 金融資本としての生保── 『遠い約束』夏樹静子著┴34 ホテルは社会の裏方── 『銀の虚城(ホテル)』森村誠一著┴35 患者ファーストは可能か── 『M R』久坂部羊著┴36 証券界と地下経済── 『マネー・ハンター』安田二郎著┴37 量販よりも鮮度の保持── 『小説スーパーマーケット』安土敏著┴38 食品加工業の暗部── 『震える牛』相場英雄著┴Ⅳ 組織と人間┴──会社を告発する個人┴39 自分の生き方を通す── 『沈まぬ太陽』山崎豊子著┴40 現役記者の社長解任請求── 『日経新聞の黒い霧』大塚将司著┴41 新聞は生き残れるか── 『紙の城』本城雅人著┴42 研ぎ澄まされた感覚を保つ── 『いつも月夜とは限らない』広瀬隆著┴43 ワンマン体制への叛旗── 『管理職の叛旗』杉田望著┴44 組織内の不正を糺す── 『会社を喰う』渡辺一雄著┴45 地位保全の訴え── 『懲戒解雇』高杉良著┴──社員という人生┴46 死ぬくらいなら辞めていい── 『風は西から』村山由佳著┴47 その人なりの価値基準── 『ふぞろいの林檎たち』山田太一著┴48 社宅という残酷な制度── 『夕陽ヵ丘三号館』有吉佐和子著┴49 「世間」に立ち向かう── 『食卓のない家』円地文子著┴50 企業ぐるみ選挙の悲哀── 『わが社のつむじ風』浅川純著┴おわりに┴本書で取り上げた五〇冊

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

trazom

112
ブックガイドであるこういう本に、敢えてレビューなど不要だろう。巨悪の実態/増大する資本と欲望/会社国家ニッポンのゆがみ/組織と人間の4つの分野に分けて、古今の経済小説が紹介されている。私が、経済には興味あれど経済小説に食指が伸びないのは、エンタメ的要素として詰まらぬ男女の物語が盛り込まれたり、名誉棄損を怖れて架空の設定だったりと、ストレートに本質に届かないもどかしさを覚えるからである。その点、この佐高さんの解説は、モデルの所在も実名で紹介し、現実と作品との関係への明快な読み解きになっているのが有り難い。2022/11/28

菫子

13
社会勉強にうってつけな良書。また読み直したい。2022/01/02

羊山羊

11
著者はビジネスマンを他者と会社という存在に二重に自己を曲げられた人々であると定義してそのせめぎあいからこぼれる人間たちを描く小説たちを次々と紹介する。そしてその小説たちの危うさときたら、中々にすさまじいものがある。新聞紙で紹介したら圧力がかかったものだらけだ。小説たちを巡る内情だけでも1つのドラマが成立するものばかりである。お金や経済だけではないブックガイド。2022/01/27

Z

6
著者は良くも悪くもジャーナリストで官民の癒着、政治家、官僚、企業の不正を暴く小説を主に紹介。読みながら、不正の例を挙げようと思ったが、多すぎて書けない。私小説にゆがまなったら、あったであろう、自然主義の小説って感じだなぁ。いくつか読んでみようかな2022/02/21

ゆうろう

2
昨年逝去した某有名評論家は「小説はフィクションだから読まない」との姿勢だったそうだが、如何にも彼らしい「限界」を感じさせるエピソードだと思う。私は、佐高氏が常日頃述べている通り、事実を公にできない事柄をフィクション、特に経済小説がカバーしているとの主張に説得力があると思う。50冊超の経済小説が取り上げられており、読みたいと思わせる作品が新たにワンサカ出てきた。一方で、積読状態の29,50も読まねば、と思う。私が読書の素晴らしさを認識したのは、氏の『時代を読む 青春読書日記』(実業之日本社)に拠るところ大。2022/06/05

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