内容説明
冷酷非情で,神の掟にも従わないドン・フェリックスは,スペイン文学史上,もっとも残忍非道,大胆不敵なドン・フアンである.陰鬱で不気味な霊界を舞台に,ドン・フェリックス=ドン・フアンの凄絶な死後の世界を描く長篇物語詩「サラマンカの学生」ほか,スペイン・ロマン主義を代表する詩人エスプロンセーダ(1808―42)の絶唱六篇を収録.
目次
サラマンカの学生┴第一部┴第二部┴第三部┴第四部┴抒情詩篇┴夜に捧ぐ ロマンセ┴海賊の歌┴物乞い┴死刑囚┴星よ┴乱痴気騒ぎのハリファへ┴*┴訳注┴解説(佐竹謙一)┴訳者あとがき┴人名・作品名一覧
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
25
詩集。西班牙の浪漫派は今まで読んだことがなかったので、こういう本を出してくれたことはありがたい。全体の三分の二を占める表題作は、堕天使の傲慢さを思わせる主人公といい裏切られた乙女、誘い来る白衣の女といい、ゴシック小説を思わせる。特に最後の誘われるままに導かれる場面、動き出す尖塔や自分の葬式、踊りだす亡霊や髑髏といったイメージが実に素晴らしかった。その他の詩も海賊や物乞いの自由さや死刑囚の絶望を歌ったもの、過ぎ去る時の無常や運命の流転を歌ったもの等、様々な詩が納められており、しばし別世界に遊ぶ心持ちがした。2013/01/02
藤月はな(灯れ松明の火)
20
読友さんの感想がきっかけで読みました。表題作の傲慢で冷酷な学生に裏切られても愛した乙女に涙します。しあし、学生が自分の死という事実に懐疑的でありながらも亡霊たちの祝福を受けながらその悪業の報いが課される場面は悍ましくも幻想的です。同じ状況でありながらも亡霊にとってはわが身の最高の幸福、学生にとっては永遠に逃れられない無限地獄という対比が際立っていました。2013/02/07
塩崎ツトム
8
スペイン・ロマン主義の詩人エスプロンセーダの詩集。しっかしこの出版不況の中、よくwikipedia日本語版に記事のない作家の邦訳が出せたよなあ。で、面白いのが表題作で、一人のピカレスクの激情を描いた「サラマンカの学生」。幻想小説として読んでも面白い。(詩だけど)2014/12/24
きゅー
8
ドン・ジュアン物語のバリエーションの一つ。途中まではいつもと変わらないドン・ジュアン物語だなと思って読んでいたが、白衣の女性との地獄めぐりの描写がすごい。生々しく、おどろおどろしい死者の描写が続きながらも、ドン・フェリックスはびくともしない。モリエールの『ドン・ジュアン』のように奇妙な正義感を持っているわけではなく、プーシキンの『石の客』のような冷徹な酷薄さとも違い、荒々しく、傲岸でいながら突き抜けた意志の強さに惹かれるキャラクターだった。幻想的な物語が好きな人にはおすすめ。2013/07/09
シンドバッド
5
スペイン・ロマン主義を代表するエスプロンセーダの物語詩。 表題作は、ドン・ファン伝説をもとにしたもの。2014/06/22