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内容説明
「従軍慰安婦」の存在は周知のものだったにもかかわらず,1990年代の当事者による告発まで,なぜ彼女らの存在は「見えて」いなかったのか.「慰安婦」問題がつきつけるすぐれて現代的な課題を,フェミニストとして真正面から論じ話題となった『ナショナリズムとジェンダー』に,その後の論考を加え,戦争・国家・女性・歴史にかかわる著者の発言を新版として編集.
目次
Ⅰ 『ナショナリズムとジェンダー』┴1 国民国家とジェンダー┴2 「従軍慰安婦」問題をめぐって┴3 「記憶」の政治学┴あとがき┴Ⅱ 戦争の憶え方/忘れ方┴1 国を捨てる┴2 今もつづく「軍隊と性犯罪」┴3 沖縄女性史の可能性┴4 戦争の憶え方/忘れ方┴5 過去の清算──ドイツの場合┴6 戦後世代の再審に希望┴Ⅲ その後の「従軍慰安婦」問題┴1 記憶の語り直し方┴2 「民族」か「ジェンダー」か?──強いられた対立┴3 アジア女性基金の歴史的総括のために┴参考文献┴自著解題┴初出一覧┴関連年表┴
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
politics
5
「女性の国民化」の鍵概念のもと、戦前日本のフェミニスト思想家分析、慰安婦問題から提起された記憶の政治学、歴史学の分析など、表題通りジェンダーとナショナリズム関連の論文を集めた一冊。高群逸枝についてはあまり知らなかったためその思想の特異性は興味深い。「慰安婦」問題然りジェンダー問題がナショナリズムとどう絡み合うのかその一端を伺うことが出来たが、その解決には両国のナショナリズムの負の側面を押さえて解決するしかないが、果たして「完全」解決する時は来るのだろうか。2023/07/08
あまん
4
「慰安婦」問題について、私の「社会学」的な認識が欠如していたことがよく分かった。「慰安婦」問題の戦争責任主体に関して、上野氏はやり玉に挙げられているが、そんなに非難を受けることなのか。私の理解が正しければ、日本国民としての責任はとらなければならないとして、その前提のもと、「わたし」個人として、ジェンダーの視点から責任を取っていくということなのではないか? 文書史料至上主義にも問題はあるが、それは急進的な保守層であって、歴史家の実証は大切だろう。一方で、真偽にのみ重きを置く歴史学には限界もある。2023/04/09
KA
4
名著。ここ日本で90年代を考えようという者は必読。「引用したい文言」だらけなのが凄い。たとえば、「フェミニズムが近代の産物なら、近代とともにフェミニズムの命運も終わるはずだが、フェミニズムは近代を喰い破って生まれた「近代の鬼子」であった。フェミニズムによる「ジェンダー」という変数の発見は、ただそれを解体するためにだけ、ある」85頁とかね。無数にある。「自著解題」で「わたしがこれまでの書物のなかでもっとも熱をこめて書いた」と言い切っている通り、1998年当時の上野の筆致は迸っている。2022/03/03
まあい
4
これはすごい。戦時中の日本フェミニズム言論を辿り直し、従軍慰安婦の問題を根本に立ち戻って問い直し、フェミニズムはナショナリズムと相いれないことを力強く論証する。旧版発表後の反応およびそれに対する応答も収録されており、資料としても使い勝手が良い。(引用)「『わたし』が『女性』に還元されないように、『わたし』は『国民』に還元されない。そのカテゴリーの相対化をこそ意図している。」(p199)2016/07/07
元気!
3
慰安婦問題をフェミニズムとナショナリズムから徹底的に分析していてとても良かった。文体も平易で読みやすい。2021/12/09