内容説明
川端康成、中原中也、尹東柱――京都と縁のある文学を題材に、不思議な出会いに翻弄される人々を描く。不良少年の東柱、彼の名前の由来は戦時中独立運動の疑いで投獄された尹東柱だった……。(「東柱と東柱」) 大学生の秀文は、曾祖父と笑顔で写真に写る謎の女性の姪孫を訪ねた……。(「『土曜日』のフランソア喫茶室」) 第8回京都本大賞受賞の著者が紡ぐ、新たな京都ミステリ4編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シナモン
108
とても良かったです。過去と現在をつなぐどこか謎めいたストーリー展開。京都の雰囲気も存分に感じられました。2023/07/07
いたろう
74
京都を舞台に、文学をテーマにした4編の短編集。有名どころでは、川端康成「雪国」、中原中也。中也が一時住んだ、「スペイン風の窓」と呼んだ窓がある大正時代の家が、今でも京都に残っているらしい。その昔、京都で学生時代を過ごしたが、当時、その家のことは、全然知らなかった。そして、戦時中に同志社大学で学んだという韓国人の詩人、尹東柱(ユンドンジュ)、文学ではないが、戦前の京都で発行されていたという反ファシズム紙「土曜日」のことは、今回初めて知った。昭和初期からあるというフランソワ喫茶室には、今度、是非行ってみたい。2022/04/29
えも
29
京都の文学作品を題材にした、風情のある短編集▼わが故郷は日の光 蝉の小河にうはぬるみ、…かなたへ 君といざかへらまし▼かつて暮らしたみやこへの、そんな望郷の念に駆られる作品でした。2022/08/21
Y.yamabuki
18
京都に関わりのある作品をモチーフにした短編集。ミステリーというより人間ドラマと言った方が良さそう。新しいストーリーが、元の作品と京都の町に程よく溶け込み、雰囲気を壊さない静かで優しい物語。一話目の「東柱と東柱」過去と現在が交差する見事な一編。東柱の詩が二編、初めて読んだ。静かで儚げで美しい詩。切ないけれど素敵なお話。ラストは明るい兆しも見えて一安心。好きな小説「古都」をモチーフにした現代の姉妹の話も面白かった。堅苦しくなく、文章は読み易い。元の作品を知る切っ掛けにも。期待以上でした。2022/06/20
鯖
14
川端や中也等の文学作品をモチーフに、古都を舞台にした4つの短編集。韓国の国民的詩人でハングルで詩を書いたことで逮捕され獄死した尹東柱。千代ちゃんは東柱を救うことはできなかったけど、もう一人の東柱は救って逝けたんだなあ。泣いちゃった。すべての話にわずかであっても救いが遺されているのがよかった。近現代の闇がなければ生まれることのなかった短編集。いい本でした。2025/06/13
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