筑摩選書<br> さまよえる自己 ──ポストモダンの精神病理

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筑摩選書
さまよえる自己 ──ポストモダンの精神病理

  • 著者名:内海健【著者】
  • 価格 ¥1,540(本体¥1,400)
  • 筑摩書房(2022/04発売)
  • ポイント 14pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480015440

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内容説明

今、「自己」は大きな岐路に立たされている。「自己」が最も輝いていた近代(モダン)は終焉し、危険を孕みつつ必要とされた青年期もその役割を終えた。「自己」はこの先、どこへ向かうのだろうか。心や意識の起源に遡り、言語や神話の意味を読み解きながら、メランコリー、スキゾフレニアなど臨床での知見を踏まえ、深い思考を紡いで到達したポストモダンの精神病理学。

目次

はじめに
第一章 〇・五秒の闇──いかにして意識は立ち上がるのか
ベンジャミン・リベットの実験
意志は脳を動かせるか
自由意志は可能なのか
「純粋な意志」というパラドックス
意識は立ち遅れている
意識は切れ目から立ち上がる
遅れを取り戻す
反復が経験可能性を与える
回収される切断
自由の中の狂気
第二章 世界が割れ、自己が生まれる──まなざしの到来
心とは創発されたものである
因果律は心の側にある
心は脳につまずく
「もの」としての脳
モリヌークス問題について
〈見える〉世界
向こう側に滑り落ちるもの
自己の触覚系原基
鏡像段階の穴
モリヌークス氏への回答
〈見る〉を可能にする見えないもの
ナルキッソスの悲劇
眼球とまなざし
第三章 言語のみる夢──他者の呼びかけ
体験の楔
言語は脳をフォーマット化する
語りえぬもの
私、今、ここ
叫び
「僕はお腹がすいていたんだ」
聞き届けられること
呼びかけられること
声とまなざし
言葉が語りかけてくる時
現前からの離陸
そして意味を固有化する
神は無から創造し、人間は「無」を創造した
第四章 ピュシスとノモス──はじめに何が廃棄されたのか?
哀しみのニオベ
エディプスを読み返す
父の罪
フロイトの選択
片眼をつぶられたし
トーテムとタブー
三つの父
出来事と語り
引き受けようのないものを引き受けること
フロイトの隠蔽したもの
母を迂回せよ
ピュシスとしての母
第五章 モダンとは何か──個の系譜学
一神教の発明
キリストの特権性
科学革命
パンドラの箱を開けたニュートン
カントの奔走
中心の空虚
個と普遍
二つの神の死
第三の神の死
不可視のまなざし
リアルなものの噴出
近代的狂気の二つの水脈
第六章 メランコリー──死せる母
精神医学略史
メランコリーの系譜──森から都市へ
メラニー・クラインを書き換える
対象はすでに失われている
 奪のトラウマ
抑うつポジションの彼岸
死せる母──なかったことにするということ
根源的メランコリー
「お前が壊したのだろう」
強制された選択
「悪いようにはしない」
マニー(躁)について
第七章 スキゾフレニア──最後に起源が目覚める時
大いなる取り込み
狂気の中のコギト
ノモスの二つの顔
青年期と不条理なるノモス
発病前夜
個と遠近法
自律のノモス
起源の創設、起源の封印
ノモスに召喚される時
ノモスの正体
掟の門前
系譜の要請
妄想があるとき、狂気はすでに古い
カタトニア(緊張病)──自由の極北
第八章 さまよえる自己
明るみに出たトラウマ
トラウマと語り
逆行する病理
大きな物語の終焉
残された罪悪感
 き出しの生
神的暴力について
自己は一つでなければならぬのか?
ノモスが地に落ちる時
ツールと化したノモス
リアルなものの二様態
幼生化する自己
応答しないノモス
根拠の喪失
歴史の終わりを生き延びる
おわりに
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ポカホンタス

5
私は年来の内海ファンであり、この本も楽しみにしていたが、いざ読みはじめるとどうも面白くない。読む前から結論がだいたい見えてしまう。多方面への参照がありそれはそれで興味を惹くが、それでも大筋が見えてしまうことには変わらない。内海先生の論文にいつもみられる、スリリングな跳躍がないのである。これは一重に、<選書>という制約ゆえであろう。内海先生の文章は、選書や新書には似合わない気がする。2012/06/17

釈聴音

3
逆説的に言えば、「何故私は狂っていないのか?」という問いが必要な時代が現代(モダン)ということなのであろうか。2012/05/29

抹茶ケーキ

2
ポストモダンにおいて自己はどうなるか。前々世紀を特徴づける精神病はメランコリー、前世紀はスキゾフレニー、現代はトラウマであり、現代という時代は「神の死」の喪の作業の最中とのこと。いかにも精神分析っぽい行論で、ジジェクの『厄介なる主体』とかを思い出した。生きる意味がない「から」、人を殺す(自殺するなど)になって、なぜ「にもかかわらず」につながっていかないのかって話が最後に出てきたけど、そこが一番面白かった。2016/06/05

やっちゃ

2
某大学の入試問題にあり気になったので。「普通ならば人は状況に応答して意思を持つ」とカントの「自由」の説明後に記述があった。しかしそもそもカントの「自由」が特殊ではないのかと考える自分にとってはこの記述は違和感を感じた。なぜ急に引き合いに出したのか??飛ばし読みだったのでキチンと読めなかった。勿体無いことをした。2016/02/03

さ◯てんだぁ ver.NEET

1
興味深く読めて面白かった。モダン(あえてこの用語を使う)における自己の在り方を、精神科医である著者の知見を用いて論じた一冊。現代におい不安定化し、存立根拠を揺るがせにされた自己の概念を、決して個人的な問題として矮小化せずに論じている。ガチガチの専門書ではないが、読み通すのにはある程度の哲学や神話の知識が必要2013/08/27

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