内容説明
今、「自己」は大きな岐路に立たされている。「自己」が最も輝いていた近代(モダン)は終焉し、危険を孕みつつ必要とされた青年期もその役割を終えた。「自己」はこの先、どこへ向かうのだろうか。心や意識の起源に遡り、言語や神話の意味を読み解きながら、メランコリー、スキゾフレニアなど臨床での知見を踏まえ、深い思考を紡いで到達したポストモダンの精神病理学。
目次
はじめに
第一章 〇・五秒の闇──いかにして意識は立ち上がるのか
ベンジャミン・リベットの実験
意志は脳を動かせるか
自由意志は可能なのか
「純粋な意志」というパラドックス
意識は立ち遅れている
意識は切れ目から立ち上がる
遅れを取り戻す
反復が経験可能性を与える
回収される切断
自由の中の狂気
第二章 世界が割れ、自己が生まれる──まなざしの到来
心とは創発されたものである
因果律は心の側にある
心は脳につまずく
「もの」としての脳
モリヌークス問題について
〈見える〉世界
向こう側に滑り落ちるもの
自己の触覚系原基
鏡像段階の穴
モリヌークス氏への回答
〈見る〉を可能にする見えないもの
ナルキッソスの悲劇
眼球とまなざし
第三章 言語のみる夢──他者の呼びかけ
体験の楔
言語は脳をフォーマット化する
語りえぬもの
私、今、ここ
叫び
「僕はお腹がすいていたんだ」
聞き届けられること
呼びかけられること
声とまなざし
言葉が語りかけてくる時
現前からの離陸
そして意味を固有化する
神は無から創造し、人間は「無」を創造した
第四章 ピュシスとノモス──はじめに何が廃棄されたのか?
哀しみのニオベ
エディプスを読み返す
父の罪
フロイトの選択
片眼をつぶられたし
トーテムとタブー
三つの父
出来事と語り
引き受けようのないものを引き受けること
フロイトの隠蔽したもの
母を迂回せよ
ピュシスとしての母
第五章 モダンとは何か──個の系譜学
一神教の発明
キリストの特権性
科学革命
パンドラの箱を開けたニュートン
カントの奔走
中心の空虚
個と普遍
二つの神の死
第三の神の死
不可視のまなざし
リアルなものの噴出
近代的狂気の二つの水脈
第六章 メランコリー──死せる母
精神医学略史
メランコリーの系譜──森から都市へ
メラニー・クラインを書き換える
対象はすでに失われている
奪のトラウマ
抑うつポジションの彼岸
死せる母──なかったことにするということ
根源的メランコリー
「お前が壊したのだろう」
強制された選択
「悪いようにはしない」
マニー(躁)について
第七章 スキゾフレニア──最後に起源が目覚める時
大いなる取り込み
狂気の中のコギト
ノモスの二つの顔
青年期と不条理なるノモス
発病前夜
個と遠近法
自律のノモス
起源の創設、起源の封印
ノモスに召喚される時
ノモスの正体
掟の門前
系譜の要請
妄想があるとき、狂気はすでに古い
カタトニア(緊張病)──自由の極北
第八章 さまよえる自己
明るみに出たトラウマ
トラウマと語り
逆行する病理
大きな物語の終焉
残された罪悪感
き出しの生
神的暴力について
自己は一つでなければならぬのか?
ノモスが地に落ちる時
ツールと化したノモス
リアルなものの二様態
幼生化する自己
応答しないノモス
根拠の喪失
歴史の終わりを生き延びる
おわりに
参考文献
感想・レビュー
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ポカホンタス
釈聴音
抹茶ケーキ
やっちゃ
さ◯てんだぁ ver.NEET