内容説明
凄絶ホラーな寄生虫、ミズスマシだけにつく幻のカビ、地球史を語る透明な甲虫、冬に碧く輝く超希少ゴミムシ、井戸の底に潜む新種らしきプラナリア……。たとえヤツらが1ミリたりとも人類の役に立たなくても、異常な執念で徹底的に追いかけるのだ。「裏山の奇人」の異名をとるコマツ博士の、暴走する「昆虫愛」エッセイ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けんとまん1007
65
小松さんの熱量に脱帽。ここまで熱中できて、行動できて、思いが迸るものをもつ強さ。そこに、少し脱線気味というか、先走り気味な味わいがあるので、親近感を覚える。人間も自然の一部であることに立脚する・・・が、そこだけでも難しいことも。冷静でクレバーなように描かれている奥様のキャラクターがいい。そのおかげで、立ち止まって考えることもできるのだ。2022/09/23
つちのこ
35
たかがムシの話というなかれ…これほどまでに昆虫の世界を掘り下げて、超マニアックかつ魅力的に語った作品はないのでは。少年の頃、胸をときめかせて読んだファーブル昆虫記を思い出してしまった。著者は研究者以上に虫屋なので、新種の発見にかける情熱もマニアなら思いっきり共感ができる。地下水にいる特殊な種を探して、井戸ポンプを連日くみ上げるその労力は常人には理解しがたいが、その苦労が報われるあとがきを読むと、彼らのような研究者がいたからこそ、謎が解き明かされ世界が広がると思わずにいられない。軽快な文章にも惹き込まれた。2022/07/22
tom
25
著者には「裏山の奇人」を読んだときから注目している。かなりのトンデモの人だと思う。虫さん偏愛が頂点に達していて、分類学者を名乗りながら、虫を愛で続けている。その彼にいつの間にか配偶者がいて、子どもまで現れていた。ちゃんと役割分担しながら、楽しそうに暮らしてた。彼と暮らす人がいるのか?と驚いたのですけど、でも他人事ながら良かったなあと、しみじみ思ったのでした(こんなこと書いてごめんなさいです)。彼は希少種のごく小さい虫に執着する人。アオヘリアオゴミムシを発見したいきさつには、私まで喜んでしまったのでした。2022/09/25
鯖
23
陰キャ拗らせた小松先生のコロナ禍の日々。政権批判からコロナ対応批判から世間様への恨みつらみまで、…よくこのまんま新潮社だしたね???懐が深すぎる。嫌いじゃないむしろだいすき。でもご結婚なされて、息子ちゃん生まれてて、ホントにおめでとうございます。スズメバチ駆除と共に駆除される虫たちへの痛切な哀歌。古井戸のポンプ漕ぎ一日千回によって発見されたプラナリアの一種。…これが新種であることをお祈りしております。名を残せ。2023/01/11
to boy
23
子どもの頃から虫が好きで昆虫学者になってしまった著者。大学とか研究所の職員でないため決まった収入がなく妻に助けられながら昆虫探しに夢中になっているっ姿はまさしく学者そのもの。つい最近までどこでも見られた昆虫が今や希少生物であることを嘆いておられます。きれいな蝶やかっこいいクワガタみたいな虫ではなく地味な昆虫の世界にどっぷりと浸かった幸せな人なんだなって思います。2022/08/19