内容説明
コロナ禍で命を落とした不世出の外交官は、秘録と呼ぶべき経験と日本の課題、そして真の脅威についてつぶさに書き遺していた。世界を巻き込んだ湾岸戦争、イラク戦争における外交の舞台裏。幻の普天間基地移設プラン――外務官僚の枠を超え、難題の真っ只中に自ら飛び込み続けた「特命外交官」による圧巻のノンフィクション。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
115
日本の外交、特に安全保障に関する貴重な記録である。湾岸危機における日本の拙劣な意思決定、その反省を踏まえたイラク戦争での対応、沖縄の米軍基地に対する認識など、当事者ならではの臨場感あふれた証言と、著者の確乎とした国家観・安保観が相まって、非常に示唆に富む記録となっている。「安全保障では右、歴史問題では左だ」という岡本さんの中国・韓国・沖縄に対する眼差しの温かさに心打たれる。「岡本さんはリアリストだが、同時に弱者に対する熱い思いを持った人道主義者で熱血漢だった」という北岡伸一先生の言葉がそれを象徴している。2022/11/13
横浜中華街2024
19
著者は非常にバランス感覚に富んだ外務官僚・政府要職として長きにわたり様々なアメリカに関わる日本政府の外交政策活動に従事してきており、この自伝を通読するだけで表に出てこなかった(特にに日米同盟に関する)様々な事柄が理解できる。著者のような優れた政治・外交能力を持った人物は貴重であり、急逝したことが悔やまれる。特に政治家や外務官僚などにとっては、湾岸戦争から現在に至る日米協力関係の詳細を理解する上でもこの自伝は必読書とも言えるのではなかろうか。2023/06/16
inuwanwan
5
本書の本質は単に激動期の外交に、ひた向きに対峙してきた本人の自叙伝に留まらない。戦前から日本が背負う重い十字架と、決してそれから目を逸らしたり逃げることなく、国際社会の一員としてどの様に歴史を捉え、成熟した国家として不安定なアジア地区に向き合うべきかを、明確に、かつ説得力と温かい優しさをもって示している。極めて有能な人材をコロナで失ったことを無念に感じる一方で、本書に出会った以上、著者の期待に応えられる「次の世代」でありたいと思った。2023/05/10
参謀
5
外交官、橋本龍太郎内閣補佐官、小泉純一郎内閣補佐官を務めた著者の自伝。めちゃくちゃよかった!これまで日本が歩んできた外交の真実が語られている。これは日本人は一読すべき1冊であり、学校の図書館には必ず入荷すべき!序章は太平洋戦争、731部隊、沖縄の惨劇から始まるのだが、その内容がすんなり自分に入ってきて、かなり衝撃的だった…日米同盟、湾岸戦争対応の失敗、普天間移設、イラク戦争の裏で著者がかなり活発に動いていて、相当骨が折れたんだろうな、失敗に終わって悔しかったんだろうなとその思いも伝わってきた。2023/02/20
都人
5
この本の事は、この本にも登場する外交評論家の宮家邦彦氏(外務省OB)が新聞に書評(死亡した著者に対する思いの丈の方が多かったが)を載せられたので知った。著者のファミリー・ヒストリーには興味が無かったので、第一章は読んでいない。自叙伝だから仕方がないが、外務省時代の話は、どうしても自慢話に聞こえる。面白く感じたのは第五章以降だ。沖縄、マレー半島、中国、韓国、台湾、それに日本人の政治に対する考え方等、外務省時代の経験を生かした話で、納得の出来ることが多かった。2022/10/14