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内容説明
ナチスに翻弄されたフルトヴェングラーとカラヤン。ムッソリーニに抵抗したトスカニーニ。スターリン圧政下を生き抜いたショスタコーヴィチとムラヴィンスキー。愛するが故に母国ポーランドを離れた名ピアニストたち――戦争と革命の時代、世界的名声を得た作曲家や演奏家は「音楽の力」を信じて権力者と対峙した。激突、妥協、沈黙、亡命、偽りの服従……極限状態での生きざまを描く、音楽家たちから見た戦争と革命の現代史。
目次
はじめに
第I章 独裁者に愛された音楽
第II章 ファシズムと闘った指揮者
第III章 沈黙したチェロ奏者
第IV章 占領下の音楽家たち
第V章 大粛清をくぐり抜けた作曲家と指揮者
第VI章 亡命ピアニストの系譜
第VII章 プラハの春
第VIII章 アメリカ大統領が最も恐れた男
終 章 禁じられた音楽
あとがき
CD一覧
略年表
参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
110
十年前の本の文庫化。政治に翻弄された音楽家の姿が赤裸々に語られ、流石に面白い。ファシズムに迎合した指揮者たちと、果敢に信念を貫いたトスカニーニ氏やカザルス氏などとの対比がある。極限状態の戦時中の行動を安易に批判すべきではなく、案外「(カラヤン氏は)ナチの思想に共鳴したのではなく、ただ勝ち馬に乗っただけ」という著者の擁護が当たっているのかもしれない。ソ連政府の下でのショスタコーヴィチ氏、プラハの春とチェコの音楽家たちなど話題も豊富で、「音楽家から見た現代史」という著者の目論見が見事に成功したいい本だと思う。2023/03/14
breguet4194q
103
「芸術は戦争の前に無力なのか、それとも、芸術こそが対話と協調をもたらすのか」との命題を探る一冊。他の著作にも言えますが、膨大な資料を前に、著者の鋭い史観は本当に素晴らしいと思います。推敲の際に日本人も列挙されていたそうですが割愛されたのが残念でしたが、多くの偉大な音楽家が、政治に翻弄されながらも、信念を貫いていた事がわかりました。戦中戦後の音楽史を学ぶにはいい本だと思います。巻末に年表(関連ページ)とCD一覧が掲載されてて、読み直しの事まで考えてある事が素晴らしいですね。2024/08/07
Book & Travel
39
革命・独裁の近現代史の中で国家権力に対峙した音楽家を描いた一冊。ナチスとフルトヴェングラー・カラヤン、フランコ政権とカザルス、ソ連とショスタコーヴィチ、ケネディとバーンスタイン等、権力に立ち向かった人物もいれば妥協、屈服した人物もいる。時代が前後して読み難い所はあるが内容は充実。以前から興味があった謎多きショスタコーヴィチ、国自体が歴史に翻弄されてきたポーランドとチェコの音楽家(ショパンやスメタナ)等、特に興味深く読んだ。体制に抵抗し続けた人物も立派だが、音楽の為に迎合した音楽家も責められない様に思えた。2024/04/30
バイクやろうpart2
37
中川右介さん作品一作目です。タイトルに惹かれ手にしました。誰もが知る指揮者、作曲家、演奏家が独裁者に対し、極限状態の環境で対峙する姿が淡々と描かれてます。『音楽の力』とは、よく耳にするフレーズですが、この本を読んで、あらためて感じる機会になりました。そして、膨大な参考文献に驚きます。その時代を紐解くには、ここまでしないと真実に迫れない!作家さんの強い姿勢を感じます。加藤登紀子さんの解説も沁みます。いい本に出会えました。2022/08/14
どら猫さとっち
10
音楽家は時として、時代や国家と対峙せざるを得ない局面に立たされることがある。本書に登場する作曲家や指揮者、演奏家は、どのようにして戦時下を生き抜き闘ってきたかが描かれている。服従と反発、祖国愛を抱きながらの亡命、そして音楽を通して訴えるメッセージ。彼らがたどり着いたところは、地獄か楽園か。それよりは、人間らしい生き方や社会を望み奏でる彼らの姿に、胸が熱くなる。音楽の在り方を思い知らされる名著。2022/03/26