内容説明
明治時代の女子大三人娘が美味しい食べ歩き。
料亭の名は「鈴川」、江戸時代から続いている結構な老舗だ。
鈴川八重はその、麻布に立つ料亭の一人娘。
店主の父・勇児は明治の末生まれで頑固者だけれど、料理以外は進歩的。母の海子はキリリとした顔立ちで、まるで芸者のように気風がよい。
そんな両親と楽しく暮らす八重は、今日も目白の椿山女子大学まで自転車で通っては、同級生で男装の華族令嬢・桜木虎姫、そして美貌の資産家令嬢・桃澤雫と、鯛焼きやかき氷、お汁粉などなど、おいしいあれこれを食べ歩き。
店に帰れば、料理には厳しい歳上の板前・洋一郎とふたりで新しいメニューづくり。馬鈴薯トーストにストロベリーカレーに……夫婦丼!?
おいしい食べ物、あまい恋愛に目がない、明治時代の女学生三人娘のスイートな日常を描くグルメロマンス。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シナモン
126
タイトルに惹かれて購入。明治も40年経った頃の東京。江戸時代から続く老舗料亭鈴川の一人娘、八重とその同級生たちの日常を描くグルメロマンスストーリー。洋食を受け入れつつも、日本らしさも忘れない。その極意は醤油の使い方にあったんだな。醤油がこんなに大切だったとは。出てくる料理はどれも美味しそうだし、丁寧に作ってるんだなぁと感じられるものばかりで興味深かったです。ご令嬢たちのちょっと窮屈そうだけど、華麗な日常も疑似体験できて楽しい一冊でした。2022/05/16
ぶんこ
48
「醤油と洋食」という題名にしたのがよくわかるレシピの数々でした。ただバターを多用するのが洋食と思っていたのかなと気になりました。老舗料亭の一人娘の八重さんが洋食屋さんをやりたいとの夢があり、色々とチャレンジしているのが微笑ましい。お嬢様学校の友の男爵家令嬢の虎姫のツンデレぶりが可愛い。実業家の令嬢雫さんは父親に溺愛されていて、唯一好きな人がいない。八重さんは板前の洋一郎さんのことを考えると赤くなってしまう。明治後期の女学生の窮屈なようでいて、周囲を上手に味方につけてのびのびと楽しむ様子が素敵でした。2022/07/24
BLANCA
29
「明治時代の女子大三人娘が美味しい食べ歩き」。老舗料亭の一人娘・八重、男装の華族令嬢・虎姫、美貌の資産家令嬢・雫は椿山女子大学の同級生。八重は料亭を継いで洋食の店にしたいと思い、料亭の板前・無表情な洋一郎にアドバイスを受けながら日々料理を考えている…。勝手な恋愛も許されない中、自分の気持ちに正直に生きる彼女たち。洋一郎のことをストロベリーと呼んで、八重をからかう友人達の会話が面白い。クールを装う虎姫の恋愛が引き金に、八重も自分の気持ちに気がつく…。文明開化の恋と味を求めた話。2022/08/09
藤瀬こうたろー
27
老舗料亭の娘、八重が同じ椿山女子大に通う男爵令嬢の虎姫と実業家令嬢の雫とともに、自らも時々料亭で新メニューに挑戦しつつ、鯛焼やお寿司等、自転車に乗ってまだ食べたことのない食べ物を食べ歩く。ひと頃の大正浪漫ならぬ明治浪漫な少女マンガ風のお話。肩の力を抜いて読める本だけど、まだまだお堅い時代なだけに「いや、さすがにそこまで自由じゃないんじゃあ・・・」とツッコミを入れたくなるシーンも。細かいことは気にせず、元気な女の子たち3人組の話ととらえると面白いかも。2023/09/02
しぇん
23
KindleUnlimitedで。明治時代の文明開花後の世界感をうまく使っているお話でした。女性の自由がまだ少ない時代ながらそれなりに裕福な家庭で女学生を楽しませてもらいながら、洋食に憧れつつも、臨機応変に振る舞うなど中々面白かったです。手を繋ぐと記憶が飛ぶような恋愛描写も時代だな、と2023/08/11