内容説明
「赤い死」が蔓延するなか、千人の友達と僧院に避難したプロスペロ公は壮麗な仮装舞踏会を催した。そこへ現れたひとりの仮装した人物が、人々の間に狼狽と恐怖と嫌悪を呼び起こす――死に至る疫病に怯えおののく人々を描いた表題作のほか、処女作「メッツェンガアシュタイン」など短篇小説十篇と、蔵書の行間に書き込んだ思考の断片「覚書(マルジナリア)」を収録。
巻末に解説「ポォの作品について」を所収。
吉田健一の名訳が愛好した作品が名訳で甦る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sin
58
秀逸な表題作と一部を除いて湾曲された迂遠な言い回しで雰囲気を高め、ある認識に導いていく、ただそこに別の場所・別の時代のエッセンスは感じるがその神秘の創造に共感はない。そのうえ最近は明快だが安易な文章に親しんでいるせいか、この読書は脳の襞を埋めて眠りを誘う。さて、文庫本の後ろ半分を占めるのはポーの覚書である。彼の蔵書の余白に書き込まれた思いつきの抜粋…思考は人が存在する証だと感じる。そうした意味でポーの「我思う、故に我あり」の、その瞬間が覚書に込められている様に思えて大変興味深い。2023/08/06
Gotoran
50
吉田健一(訳者)が選んだポォ著作10編とポー自身が蔵書の行間に書き込んだ思考の断片(覚書(マルジナリア)」を収録。唯一「アッシャア家の没落」は既読、他は初読だった。赤死病が蔓延する中、ある公爵が自身の館に千人を集めて仮装舞踏会を催し、ひとりの仮装した人物が狼狽と恐怖と嫌悪を呼び起こす表題作『赤い死の舞踏会』、ポォの思考を垣間見ることができる『覚書(マルジナリア)』が読み応えがあった。さらに、訳者解説の巻末「ポォの作品について」も興味深かった。2023/02/01
星落秋風五丈原
18
吉田健一さんの訳。「アッシャー家の崩壊」入ってます。2021/05/23
ロア
14
「アモンティラドの樽」…最後のワンフレーズが最恐!!「シンガム・ボッブ氏の文学と生涯」…次から次へと怒涛のごとく押し寄せるバカバカしさ!これは笑っちゃう(´艸`*)2021/07/31
ハルト
12
読了:◎ 吉田健一訳というのが心憎い。訳は、今読んでも古さを感じさせない訳文だった。覚書がポォの思考を辿る上で興味深かった。短編十編の、崩壊感がたまらない。2021/06/15