内容説明
「オール讀物」新人賞受賞作「姉といもうと」を含む傑作短篇集。
幸田文の『流れる』に憧れる家政婦の姉と、指がないが活動的でラブホテル受付をする妹。
つぶれたスナックの女性店員たちが開いた競馬場での同窓会。
職人気質のクリーニング店主と常識外れの若い女性客。
駐車場の猫に餌をあげている布団屋の妻と、“役者のような美男子”の夫……。
おもわずほほえんでしまうユーモア。人間観察からあふれでる、生きることへの“姿勢の良さ”がにじみ出る。
解説・森絵都「どんな個性も大らかなユーモアをもって包みこむことで、マイナスをもプラスに転化させる。これぞ嶋津マジックだろう」
何気ないやりとりから生れる違和感がクセになる、オリジナリティ溢れる全7篇。
※この電子書籍は2019年9月に文藝春秋より刊行された単行本『スナック墓場』の文庫版を底本としています。
文庫化にあたり、改題しました。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
mae.dat
260
表題作含む7篇の短篇。どの話もね、小ぢんまりとした毎日と言うか、内輪話って感じなのね。特に劇的なドラマも無い、何処にでもありそうな日常を過ごしています。しかしながら、どれ一つとして同じものは無いって事なのですかね。至極当たり前過ぎる事ですが。ちょっと変わってはいるかも知れないけれど、何処かには居そうな登場人物の皆さん。また、日々は移ろいながら過ぎますね。だもんですから、話が終わった後の余韻もあり、この後どうなるのかな。こういう風になったら良いのにな等々、色々妄想してしまいますね。愉しいですね( ¨̮ )。2023/08/24
昼寝ねこ
146
直木賞を受賞した嶋津輝さんの不思議な味わいのある初期短編集。登場人物がみんな少し変わっていて、しかも本人たちはそれが変だとは微塵も思っていない。物語もごく普通の生活の一場面を切り取ったようで、もちろん人生ドラマは多々あるのだが、その発端も結末も曖昧で伏線回収すらされない。それなのにきちんと物語になっていて読み応えがある。考えてみれば私たちの生活だって小説みたいにキレイな結末なんてほとんど訪れず、日々曖昧なままで流されていく。それをそのままの形で小説にしてしまう嶋津さんはなんとも凄い作家だと思った。2026/05/26
いつでも母さん
130
嶋津さんの『スナック墓場』の改題文庫版をやっと読んだ。作者曰く普通の人とか生活を描いた短編7話。そこにある普通の人のなにげない日常、じんわりと言うかスーッとその空気に馴染んで読めてしまう。何気ないと言うのは、誰かのフィルターを通すと決して何気ない訳ではないんだなぁ。何かあるはず・・ページを捲る私を軽くいなして、それが心地良く、どれもが勝手に映像化され脳内に残る余韻が堪らない。各話の登場人物がそれぞれ愛しかった。勿論、猫のケロとツキもだ(笑)森 絵都さんの解説も良かった。2026/05/15
タックン
126
(カフェーの帰り道)で直木賞を受賞した嶋津輝さんの初期短編集。昭和を思い出させるようなどこにでもあった商店街とかの普通の日常生活を切り取ったような物語の数々。そこにはミステリーみたいなシナリオも伏線の回収もなくそのままフェードアウトしていく感じが心地いい。表題作の(駐車場の猫)がまさに典型だが、単行本の表題作(スナック墓場)がよかった。一見流行らなそうな場末のスナックがなぜか流行ったり、ハラちゃんの競馬の予想が凄い。(姉といもうと)も面白く読んだ。出てくる人はみんなどこか変なキャラばかり。 2026/05/26
ちょろこ
122
夕暮れのような一冊。主に女性たちの人生時間を切り取った7篇。イメージは陽の光さんさんと降り注ぐ日中ではなく、夜へと向かう夕暮れのよう。でもその中にちらほらとした笑い、微笑ましさが溶け込んでいるからか暗さはさほど感じない。その匙加減が巧い。スタートの「ラインのふたり」から思いもよらぬ展開に温もり一つ。表題作「駐車場のねこ」は特に主人公のざわめき感に読み手も思わずシンクロする描き方が絶妙。不安な心にポッと暖色系の灯りを灯される、そんな味わいが良かった。嶋津さんの現代ものもいい。やっぱり読み心地のいい作家さん。2026/05/03




