内容説明
北野天満宮や湯島天神など、全国で学問の神として祀られる菅原道真。累代の儒者の家に生まれた彼は、なぜ政治の世界で異例の出世を遂げたのか。また、なぜある日突然、大宰府に左遷されることになったのか。三善清行との確執や阿衡(あこう)事件で果たした役割、遣唐使廃止に至る真相など、さまざまな側面から等身大の道真像を描き、“神”の真の姿に迫る。
目次
土師氏の願い―プロローグ/父祖たちの足跡(土師氏の歴史〈伝承の時代/氏人の活動/負名氏としての土師氏/土師氏と喪葬儀礼/氏人の多彩な活躍/菅原の地との関係〉以下細目略/曽祖父から父まで)/道真の立身(対策及第まで/文章博士として/讃岐守時代/阿衡事件)/政治への参加(寛平の治/寛平度遣唐使計画/宇多朝から醍醐朝へ)/左遷と死、そして天神様へ(昌泰の変/道真の死と怨霊から天神へ)/その後の菅原氏―エピローグ/関係人物略系図/菅原道真略年譜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Koichiro Minematsu
59
天皇家と縁のある菅原家と藤原家。右大臣、中年の星・菅原道真は宇多天皇に重用されるが、左大臣、若手イケメン・藤原時平は醍醐天皇に気に入られる。その天皇家の内情と藤原家との関係で翻弄される。太宰府左遷は醍醐天皇の過剰反応としか思えない。道真死後、怨霊は雷神となり、災で倍返し。御霊を納めるため天人様として太宰府に眠る。何より文章博士として家庭より学問に熱中。毎年受験生が合格祈願に訪れる訳です。2021/01/28
ようはん
20
学者政治家としてはイメージ通りの清廉な人という印象。地方官として讃岐国に赴任しているが、酷吏や私腹を肥やすような事とは程遠いながらも善政で評判を挙げたというまではいかず、仕事に悩む姿は人間臭さがある。2022/05/14
紫草
8
「〜の正体」という書名はトンデモ本ぽいけど、とても丁寧でまじめな本です。一般向けの本ですが、私のような本当の素人にはちょっと難しめ。多分あまりにも基本的なことを私が知らないためです。「学問の神様」として有名で偉い人な感じがする菅原道真ですが、もしかしてそんなでもなかった?いや、勉強は確かにすごくできたようですが。怨霊になってからの祟り方が凄まじく(祟られた人たち、よっぽど身に覚えがあったんでしょうか。)その後の持ち上げられ方がすごくて、実際はそんなすごい功績があったわけでもないのかな?2020/10/24
Tom
2
2020年刊。道真に関する記事は先日読んだ 今正秀『摂関政治と菅原道真』とほぼ同じ内容(大きく違ったらそれはそれで困るので問題ない)。とりあえず道真のことを知りたかったらこちらで間に合う。菅原氏の前身である土師氏や祖父・清公、父・是善に費やしている紙幅が若干多く詳しい。『摂関政治』と同様、太宰府左遷の真相については留保している。一応の著者の見解としては、譲位したのに主導権を握ろうとする宇多に対抗する醍醐天皇の過剰反応によるとばっちりではないかとしている。→2023/10/18
宇宙人
2
一般向けではあるが資料の引用も多い本格的なレベル(だと思う)。 特に新説を開陳したり明確なテーマがあるわけでもないので、ワクワクするような本ではない。 しかし生涯を資料に基づいて学ぶことはできる。2020/10/11